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焼肉

作者: 斉藤てん

煙と肉を焼く匂いが充満する店内・・・

その店内の奥まったテーブルを囲む3人の男たちからは物々しい雰囲気がただよってきていた

延々と肉を焼き続け、会話もなくひたすら肉を焼いては食う・・・その繰り返しだった

ふと3人のうちの一人《眼鏡》が不意に口を開く


「さてどうしたらいいのやら・・・」


「どうするもこうするもないだろうが。この現状を打破するための策は今の俺たちにはない、ということは確認済みだろう?」


独り言ともとれる一言に苛立ちの混じった声でもう一人デブが答える


「とはいえこのままでは限界がくるというのはわかりきっているんだ。なんとかしないと」


小さい、しかしはっきりとした声でノッポは呟く


「だからその策がないといってるんだ!なにかあるならとっくに試している!」


「わかっているよ!だから今本当になにもないのか考えているんだちょっと待ってくれよ。」


(二人の言ってることに間違いはない・・・現状打破の手段のなさは散々話し合った・・・必要なのはその先だ・・・くそうこんなことなら家でアニメみてるんだった・・・)


デブとノッポの言い争いを聞きながら眼鏡は思案する・・・否半分以上が現実逃避なのだが・・・

このまま言い争っていても、現状は変わらぬまま時間だけがすぎていく・・・時間がたてばたつほど悪くはなれども良くはならない・・・


(だが、このまま居続けていればいずれ不審に思った店員が動きだすかもしれん。そうなれば出ていかなければならないだろう・・・それはだめだ・・・)


一番奥まった席なので多少騒いだところで周囲の喧騒にかき消されるのが唯一の救いだが、それもいつまでもは続かないだろうということは明白だった。込み合い始めた店内、長時間滞在する客は疎まれこそすれ喜ばれはしないだろうから・・・


「もう一度現状を確認するぞ」


現実逃避から帰ってきた眼鏡が口を開く。


「何も変わらないがとりあえずまとめていこうかね」

「わかった」


二人は声を潜めて答えれる。


「よし、まずは一番の問題点からだ『全員見事なまでに財布を忘れた』間違いないな?」

「そうだね、その通りだぜ」

「おう、間違いないなぁ」


そうこの三人組全員が財布を忘れていた。食事を終え会計だ、と思った際に気がついた。

まさに間抜けそのものの3人組だ。しかし今更そこについて言い合っても何にもならないことはこの30分ほどで身にしみている(散々言い争ったからだが・・・)


「ここから一番家が近いのはおデブだが走って取りにはいけないか?」

眼鏡がたずねるが、デブは首を横に振る。

「確かにこの中でなら一番近いけど閉店に間に合わないなぁ。それに財布のなかには精々自分の分しか入ってないな」

3人は落胆する・・・もう一人ノッポがふと思いついたように聞いてみる

「おいそっち《眼鏡》は財布の中身はどうなんだよ?もしいけるんなら二人で時間を稼ぐから取りに行ってはこれんか?」

「うーん、無理だな。往復で2時間はかかるし、ここの会計分となると恐らく足りんな。年末でATMも動いていない時間だしな。」

再び落胆する間抜け《三人組》だった。


「どうすりゃいいんだろうなぁ・・・正直に店員に話しして後日払いに来ることで決着つけれないかな?」

「んーおデブにしちゃあマシな意見だな。それしかなさそうだしな」

眼鏡が笑いながら賛成の意思を示す。

「オレにしちゃあってのが余計だが賛成してくれるんならありがたい。土下座ぐらいならする用意はいつでもあるぜ」

「しかしなぁ・・・キレられるだけならまだいいが警察呼ばれたら面倒だよなぁ」

「まぁやってることは無銭飲食だから仕方ないぜ」


覚悟を決め眼鏡メガネが立ち上がり店員を探してみるとなにやらレジでもめているようだ。

とりあえず近くに行って待っていると話が聞こえてきた

「すいませんお金足りなくって・・・後日払いに来ますんで今日はどうにかならないっすか?」

「困りますねぇ、本来そういったことは出来ないんですがね」


ふむ、なにやら似たような人がいるようだ。・・・ちとまずい雰囲気だ・・・

「いやぁでもどうしようもないんすよー、ATMも動いてないし?何も払わないってわけじゃあないんですよ。今日は持ち合わせがなかっただけなんですよー、ホント頼んます!」

客は軽い感じのため申し訳なさはあまり感じられないが、困っているのは確かである。このあとの店員の返答しだいでは俺たちの未来が決まってしまいそうだ。

「じゃあとりあえず名前とか確認できるものコピーとらしてね、あと連絡先をこの紙に書いてください。」

とりあえず妥協点があったか、なんとかなりそうだな。と胸をなでおろしたその時・・・

「えー、そこまですんの?今度払いに来るからさー今日は勘弁してよー」

「すいませんけどそれじゃあいつ誰が来るかもわからないんで、それくらいはさせてもらわないと。」

店員がんばれ!落としどころさえあればのっかれるから!頼む!心の底から祈る眼鏡メガネ

しかし客が逆ギレを始めると雲行きがどんどん怪しくなる

「いやだからさぁ、今度くるっつってんじゃん?なんでだめなんよ?」

来るって決めてるならはよコピーとらせて連絡先書けって、こいつ馬鹿か?!店員妥協してくれてんだから言うこと聞いとけよ!

「コジンジョーホーだぜコジンジョーホーだからこんなことで晒したくないのよ、わかる?」

てめぇが状況わかれよボケナスが・・・

店員が諦めたようにため息を吐きながら

「わかりました」

「お、わかってくれた?ありがとー!」

と客が席にもどろうとすると。

「少し待っててくださいね。警察に連絡しますんで」

ソウナルヨネーソウデスヨネー、と眼鏡メガネが頭を抱えていると客はあわてて振り向く

「ちょ、ちょっと待ってよ!今度払いに来るっていってるじゃん!なんで呼ぶのさ!」

「まぁもう呼んだんで間もなくきますけどね」

対応早いなー優秀だー、ってかやべぇ現状身分証持ってねぇ俺らなんかリーチかかってるじゃねーか・・・

と、頭を抱えているうちに警察が到着しとりあえず交番までドアホウは連れて行かれたのでした

「お客様どうかされましたか?」

「・・・ライスとワカメスープ1つづつください」

「はーい、少々お待ちください」


・・・ふぅ・・・一息ついて席にもどる・・・

「・・・水がうめぇ・・・」

「あほか!注文増やしてどうする!」

「チキンめ!」

「どうしろってのさ!空気と間が悪いにもほどがあるわ!!!!」


そして、しばらくぎゃあぎゃあと言い争ってるところに注文の品を持ってきた店員に内容を聞かれ3人揃って土下座したのでした・・・

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