農作業を楽しむ吸血鬼とおつかい少女
陽光眩しく、雲一つ無い天気の中男はせっせと作物に水をやる。
手拭いを首に掛け、本を片手に。
「今日の仕事は終わったなぁ…」
男はそう呟きながら家に戻って行くのであった。男の家には本が沢山ある。
その量は本棚に収まりきらず、床にあちこち散乱している。壁には刀剣、槍、斧と様々な物が飾られており、中でも特に目立つのは大きな鎌であろう。
まるで死神が持つような鎌。これを振るえる物がいれば誰もが死神と間違えるようなそんな特徴的な鎌だった。
私、マリア=サンライトには夢がある!!
このラハスという村をいつか出て、世界中を見て回りたいのだ。そのためには資金がいるのだぁ!!
だからあたしは毎日お母さんの手伝いをして、
その資金を貯めているのだ。
きっとそう遠く無い未来には旅立てるに違いない!!
「お母さん行ってきまーす!!」
そう言って"おつかい"という指令を受けたあたしは野望への第一歩へと踏み出すのであった…
今日のおつかいは隣町のミルクとパンを買って来てとの事だ。
迷いの森を抜けて直ぐの町だ!さぁ早く行って早く帰って剣技の特訓だ!!
迷いの森。
それはラハスの村の住民が作りあげた対侵入者用防御システムである。
入り口と出口に魔力による結界を作り出し、正しい進み方をしない者に対して、森の結界が感知し、強制的に森の入り口に戻すというシステムである。
出口側にあるのがラハスであり、ラハスの村人達はラハスから出る時わざと違う進み方をする。
すると入り口に直ぐ行けるという移動手段にも使える。
マリアは迷いの森を歩く。ラハスの村人のように道を踏み外すのでは無く、正しい道を歩く。
森の景観を楽しみながらおつかいに行きたいのだろう。
鼻歌混じりに歩く姿はどこから見ても可愛らしくとても幼い。
しかし、マリアはふとしたことに気付く。
「あれ?結界がここにもある?」それは良く目を凝らさないと分からないような物だった。
結界があるという事はこの道はどこかに繋がっているという事だ。
そう確信してマリアが手を伸ばすとそこには
広い農園があった。