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限りなく人っぽい何かと銀と金  作者: 美羽
金色の後悔
58/178

5-9*

残酷な表現があります。ご注意下さい。

8 years ago

Side:Seilute




どこから向かってくるか分からない魔力の束。

それをどうにか直前で避けながら、俺はどうしたものかと対応を考えあぐねていた。


「強気発言をしていたわりに、避けるばかりですね」


「うっさいな、ちょっと考え中なんだよ!」


相手がこうも饒舌な魔物だとどうも調子が狂う。

今まで手合せしてきた城の騎士や魔術師は基本的に真剣に向かってくるから無駄口を叩いたりしなかったし。

あ、でも月さんはこんな風に戦いの最中でもまるでそれを感じさせないように楽しそうにお喋りしてたっけ。

―――なんか、月さんと被るとかすごく不愉快。


「でも考え事をしていると危ないですよ、ホラ」


「あ、ヤベッ」


不快感に顔をしかめていたら見事に魔物の魔術が俺に命中――する前に透明な壁に弾かれて消える。


「なんてことすんだよ、あーもう、一回分使っちゃったし」


月さんがピンに込めた魔力がどれくらいのものなのかは知らないけど、長持ちさせるためには彼女の魔術が発動する前に俺が攻撃に対処しないといけない。

これまで壊れちゃうとか絶対に嫌だし、出来ることなら全部避けるなり相殺するなりしたかったのに。

苛立ち紛れに突っ立ったままの団長を蹴って転ばせてその場から素早く後退する。

え、別に嫌がらせじゃないよ?

ただああやって立たれてると邪魔でしょうがないし、こっちも攻撃を当てないように気を遣わないといけなくなるし。

それに、室内ってやりにくいんだよね。

俺の力は大きいから、室内での戦闘だと建物を壊す恐れがある。

だから出来るなら外でやりたい。


「一回分、ということはその守りは回数に限りがあるようですね。

それは有り難いな。貴方の体を手に入れるのに、宵闇の魔術だけが不安要素だったわけですから。

――にしても、俺から逃げられると思ってるんですか?」


俺の動きをどう勘違いしたのか分からないけど、魔物は不敵に笑いながら追撃の手をゆるめない。

別に逃げたりはしないっつーの。広いフィールドに移動するだけだ。

剣の一振りで壁を一気にぶち抜き(後で城に請求書を出してもらおう…)外に出る。

クソ寒い。なんか雪も降りだしてるし、月さん風に言わせてもらえば雪なんて最悪だ、だ。

そして外に出たからといってここだと製造所を巻き込むし、この村のワインは貴重な財源だし……うん、もっと離れた方がいい。


「こっち来いよ!俺の事、捕まえられるかな?」


追ってくる魔物をそれらしい言葉で誘導しつつ走り出す。

ついでだ、今のうちに城に連絡入れておこう。


王族は緊急用の連絡ツールとしてやっぱり特別な魔術(実際はただの念話だけど)がかかった道具を持たされている。

それを強く、魔術発動の意志を持って握りしめれば勝手に道具に込められた魔術が発動する仕組みだ。

魔術に用いられる魔力は使用者本人じゃなくて道具の中にあらかじめ入れられたものが使われるから、魔力が殆どない俺でもちゃんと使うことができる優れもの。

まあ月さんならもっとすごい機能とかつけられるんだろうけど。


「―――“王国”第二王子セイルートだけど、聞こえてる?」


『――セイル様?何かございましたか?』


念話は侍従長に繋がっているらしい。今知った。

視察に出ている俺が突然緊急連絡をしてきたからか、彼の声は珍しく普段よりも低い真剣なものだった。

そういう空気出されるとこっちまで真剣になっちゃうじゃん。


「いや、ちょっとね。実は視察先の村に魔物がいてさ。

団長と護衛はもう使えなくなっちゃって、今俺が交戦中なんだけど…」


『なっ!?分かりました、すぐに兵を――』


「あー、平気平気。俺勝てるし」


『何をおっしゃられるのですか、危険です!!』


「大丈夫だよ。まあともかく現状報告はしておこうと思って連絡したんだ」


何でそんな焦るんだか。

俺の力は皆分かってるはずなのに。


『……ともかく場所をお伝えください。セイル様、村とは何と言う場所の――


侍従長の言葉は途中で途切れた。

握っていた道具が砕け散ったからだ。

どうしてって、魔物のせいで。


「……ちょっと、邪魔しないでよ」


「それはこっちの台詞ですよ。

城の方々を呼ばれるのは困ります。

流石に大勢で押しかけられたら俺、負けちゃいますから」


にっこり笑った魔物はこちらへ向けていた手をおろし(たぶんそこから魔術を放ったんだと思う)肩を竦めた。

話している間(逃げている間とも言う)に最初の製造所から結構移動して、村の広場のような場所についている。

円形に何もない場所が広がっていて、その周囲を家々が囲む素朴でよくある造りの場所だ。


「別に、応援を呼ぶつもりはなかったよ。

俺一人で何とかなるし」


「自信満々ですね。むしろ俺としては助かります」


そんな顔をしていられるのも今のうちだ。

一度強く踏み込んで、室内では出せなかった全速力で魔物に向かう。


「――っ!」


どうにか直前に魔術を発動させて剣先をそらしたらしいけど、それでも力の差によってすべてそらしきることが出来なかった剣撃は魔物の首筋を僅かに裂きそこから赤い血が垂れる。


それに少し違和感を感じて、俺は小さく眉を寄せた。


「……驚きました。第二王子は学問だけではなくて武術も天才的でしたか」


「―――そうだよ。俺の事、ただの10歳だと思ってたら痛い目みるから」


違和感を振り払って魔物に応える。

別に不思議な事なんて何もないし、戸惑うことも無い。動揺するようなことも。


「でもじゃあ、俺も変に気にしてられませんね。

後々体に入る時傷物は嫌なんでなるべく怪我をさせないようにしてましたけど、もう止めます」


瞬間迫りくる魔術。

確かにさっきよりも威力が上がっている気がするし、遠慮がなくなっている。

―――でも、師長に比べれば断然遅いし威力も低い、弱いものだ。


「こんなもんなの?俺が負ける訳ないじゃん」


魔術を斬り捨ててそのまま魔物に向かう。

俺の剣は特別製で、魔術だって斬ることが出来る。

あぁ、そう言えば月さんに剣を打ってもらう約束をしたんだっけ。


「……ぐっ」


大きく振りかぶってその身体を袈裟懸けに切り裂く。

苦悶の声と共に周囲に血が飛び散って、それが嫌で俺はすぐに距離をとった。


「………?」


なんだろ。頭がくらくらする。魔物の魔術?

――いや、それは月さんの魔術が防いでくれている。

その他のものだって俺の体に害があると判断すれば未然に遮断されるはずなのに。

魔物も追撃してこない俺をしばらく不思議そうに眺め―――次いで、可笑しそうに笑い出した。


「……は、はははっ!あははははっ!!

何だ、もしかして第二王子、まだ何も殺したことがないんですか?」


「……?何言って……」


訝しげな顔をする俺に構わず、魔物は無防備に両腕をさげ傷口をあらわにした。

何だ?何考えてんの、こいつ。


「ほら、やってみて下さい」


「は……?」


「俺の事、殺してみて下さいよ。

その刃をここに突き立てるだけですよ、ほら、簡単でしょ?」


殺してみろとこちらを誘う姿はまさに魔物という何相応しく常軌を逸していると言えた。

それに言い知れない寒気を覚えて、体が勝手に後ずさる。


何だよ、絶好のチャンスなんじゃないの?

いいや、でも、もしかしたら罠かも。

罠だったとしてそれをすり抜ければいい。

俺にはそれが出来る。だってチートなんだから。

だけど、もし何かあったら。

言い訳のように頭の中で言葉を重ねて、でも同時にやれと命じる声もある。

もう訳が分からない。何コレ、何だよ、一体。

どうして俺はこんなに怖がってるんだ?

だって相手は悪い奴で、俺は狙われてて、つまり正当防衛で、そもそも俺はチートで、強くて、前世の記憶があって、だから神サマに選ばれた人間で。


だから、きっと、へいきなはずなのに。

なんでこんなに、おそろしいの?


「っ、………違う!!」


俺は選ばれた人間。

ここは異世界。


だから、大丈夫なんだ。

それだけを呪文のように心で唱えて魔物へ向かって走り出す。

魔物はそれでも動くことなく、ただ面白そうにその瞳をきらめかせて俺の一挙一動を見守っていた。


「―――――っ!!!」


強く力を込めた腕。

突き立てた刃。

それが肉を抉る感触。

全てをつぶさに感じ取る、やけに冷静な思考。

悲鳴じみた声を上げたのは、何故か致命傷を与えられた魔物ではなく与えた側であるはずの俺だった。


手を濡らす液体。これはなんだ?

ぐちゅりと音のなる物体。これはなんだ?

全てがリアルに伝わるこの感じ。

おかしいな、だって、ここは異世界で。俺は選ばれた人間で。

なのになんで、どうしてこんなに心が押し潰されそうなの?


力が抜けかけた俺の手を強く握り、剣をより深く強く肉体へと押し込んだのは他でもない魔物の方だった。

魔物はその瞳を愉悦に歪め、口の端から血を流しながらもそれを勢いよく開いて見せる。


「どうです、人殺しの感想は」


なに、言って。だってこれは魔物だ。人じゃない。


「あはは、確かに俺は魔物ですけど、この体は紛れもなく人間の、エシドのものですよ?

だから今貴方が刺したのは魔物ではなくエシドです。

分かりますか?貴方は人殺しをしたんです」


違う。違う違う違う違う違う。


「残念でしょうね、無念でしょうね、エシドは。

こんな若い身空で殺されて、やりたいこともたくさんあったでしょうに」


「違う、だって、体をのっとられて、だから」


「でもそれでも生きていたんですよ?

それを殺したのは貴方だ、第二王子殿下。

それにエシドの体を殺したって、魔物は死ぬことがありません」


そう言った途端、ガクリと力を失う身体。

子供の俺の力では支えることも出来ずに、肉体から剣が外れそのまま死体は雪原へと倒れ込む。

真っ白な雪を赤黒い血が汚して、あぁ、汚いなと思った。


「私は他人の体をのっとることが出来ると言ったでしょう?

この村の人間、全員の体はもう私のものです。

だから何人殺されても平気ですよ。まあ流石に全員を殺されては困ってしまいますけど」


そして立ち尽くす俺の背後からかかる若い女の声。

けれど聞きなれた口調と、感じる恐怖。

ゆっくりと振り返った先には、見知らぬ若い女性が優しそうに微笑んで立っていた。


「さて第二王子、この人も殺しますか?」


――その瞬間、分かってしまった。


そっか。そういうことだったんだね。

貴女はこれを、ずっと俺に気づかれないようにしていてくれたんだね。

ねぇ、気づいちゃったんだ。

どうしてかな、悲しいのに、辛いのに、苦しいのに、涙が出てこない。

ただ心が空っぽになるような、そんな感覚しかしなかった。


魔物は俺の感じる恐怖を勘違いしている。

俺は別に、ハジメテのヒトゴロシが怖かったんじゃない。

ね、月さんはこのこと、分かってた?

分かってたからああして俺の、実戦を経験したいっていう言葉に知らないふりをしていたの?


ねぇ、月さん。俺、ヒトゴロシをしたよ。

怖いよ。頭がおかしくなりそう。

この恐怖を分かってくれるのは、世界で貴女だけだ。


だってここは異世界で、俺はセイルートなんだから。

今までは必死で知らないふりをして、違う意味に捉えて自分を誤魔化していたけれど、もうできなくなっちゃった。

ごめんね。貴女はあんなに、頑張ってくれていたのに。

あんなに俺の事を、俺に気づかせずに守っていてくれたのに。


突きつけられた真実が痛くて痛くて、俺はまるで縋るようにただひとりの人の名を、小さく呟いた。





















「―――い、セイ、誠、……誠司っ!」


まるで霞がかったような思考と視界。

そこに澄んだ声が響いて、それらは一気に取り払われた。

瞬間、目の前に靡く黒髪とそれに向かう俺の剣先。


「―――ッ!?」


傷つける。俺が、他でもない貴女を。

止めなきゃ。そう思っても勢いのついた右手は留まることなく真っ直ぐ彼女に向かう。

一瞬で脳裡を過った最悪の想像に目をつぶった俺を包んだのはやわらかな温もりと、安堵のため息だった。


「………よかった、誠。君が壊れていなくて、本当に」


―――嗚呼、月さんだ。

なら、もう大丈夫なんだ。俺は独りじゃないんだ。


いつの間にか持っていたはずの剣はその姿を消していて、俺の手は彼女を傷つけることはなくて。

けれど抱き締められたその肩越し、目の前に広がる真っ赤な景色と立ち尽くす騎士団長や魔術師長、侍従長、“王国”国王の姿に、俺の記憶はすぐにフラッシュバックした。


そうだ、全部俺が殺したんだ。

村の広場の至るところに投げ出された無惨な傷の残る体。

もうそのすべてが冷たいことは分かっている。

だって俺が全部確認して、それでも恐ろしくて何度も何度も何度も何度も剣で刺し貫いたんだから。






あれから魔物が入る体を代える度にそれをズタズタに引き裂いて傷つけてもう動けなくなるようにして、あぁ心臓を壊せば良いんだと気づいたのは最後の一人を殺したとき。

魔物は乗っとれる体が全て死ぬとその姿を現すらしく、赤く染まった雪の上にポトリと死体から落ちたのは黒い小さな蛇のような体のイキモノだった。

それを絶対にもう動かないように小間切れにして、でもそれでも足りなくてもしかしたらそれも罠かもしれないと思ったから村人一人一人の体を確認して改めてその心臓部分を強く深く剣で抉った。

それでも安心できなくて動くものすべてを消すために剣をもう自分では離せなくなるくらい強く握って。

だってこの世界の人間は全部俺にとって敵だから。

誰一人信用することなんて出来やしないんだ。

誰一人信用できないなら皆殺すしかない。

そうすれば俺はこの世界の人間に傷つけられることは無くて、これ以上気づきたくなかった真実に気が付く事だって絶対無いはずで、だから。

みんなみんな敵。だから近づいてほしくない。

触れないで。この世界の人間が、俺に、触れるな。


触れて欲しいのは、月さんだけ。

俺を傷つけないのは、彼女だけだから。


拒絶の心だけでどうにか散り散りになる思考を集めて、同時に月さんを心の底から求めて。

そのうちに段々と頭がボンヤリしてきて、何もわからなくなってただ本能だけで数時間とも数分ともつかない時間を過ごしていた。


「る、な……月さん、俺、おれ、は……」


カタカタと歯が鳴る。

体の震えを少しでもおさえてくれようとする様に更に強くなった抱擁は俺の冷えきった体を温めた。


「…今はまだ、話さないで。皆が見ている」


「ね、知ってたの…?月さんは、この事、ずっと…」


「誠………」


腕を優しくほどかれることが恐ろしくて堪らない。

それをわかっているように彼女の手は俺の頬をすべり、紫の瞳は痛みと哀しみを湛えてじっと俺を見つめた。


「―――ルナ!お前、どういうつもりだ!」


彼女が再び口を開きかけた瞬間、その場に怒号が響く。

それにピクリと肩だけを動かした月さんは振り返りもせずに声に応えた。


「……氷雨」


中性的な容貌の美しい男が腕をくみこちらを――いいや、彼女を見下ろしている。


「なに考えてんだよ、あの場を放置して転移なんて。らしくねぇぞ」


「放置はしてない。対処しただろう」


「あの場の全員の時を止めるなんて魔術、対処でも何でもねぇだろ。

どんだけの負荷と魔力消費がかかると思ってんだよ。

いくらお前でも一時間も続ければぶっ倒れるぞ」


「一時間なんてまだ経ってない」


「物の喩えだ、喩え。

しかもまた第二王子関連……やり過ぎれば総代が動くって、今日言ったばっかだろうが」


「………わかってる。

総代と事を構えるつもりはないよ。

特に今はセイがこんな状態だ。

――手を出したら、分かっているんだろうね?」


途端に冷えた声に氷雨は大袈裟に肩をびくつかせた。

そしてため息を吐いて頭をかく。


「分かってるっつーの。だからさっさと戻るぞ。

それで魔術を解除しろ。いい加減キツいだろ、それ。

んっとに化け物並みつーか、俺だったら十秒ももたねぇのに…」


「ぶつぶつ煩い。先に行っててよ。ちゃんと戻るから」


そう彼女が言った途端、氷雨の姿がこの場から掻き消えた。

同時に例えようのない不安感が俺を襲う。

だって月さんが、いってしまう。


「月、さん……」


「………ごめん。私はいつも、本当に必要なときに君のそばにいられない」


どこか泣きそうなくらい歪められた瞳。

普段の俺なら止まった。

でも、すべてを知ってしまった俺にはそれが出来ない。

だって、月さんだけだ。俺にはもう月さんだけなんだ。


「お願い、すぐに君のもとへ行くから。

それまで消えないで。待っていて。

君を独りになんてしないから、お願いだよ、誠」


「…………酷いよ、貴女は」


「ごめん。ごめんね、誠…」


でもそんな顔をされたら黙るしかないじゃないか。

それに今日俺が知ってしまった事を、貴女はずっと前から知っていたんだろう?

そしてそれでも笑って立っていたんだろう?

なら、俺もそうしないといけないんだって分かってしまったから。


「いいよ。でも………月さん、いってらっしゃい」


無理にでも微笑んでみせる。

貴女が今までそうしてきたんだって、もう分かってるから。

でも言葉がほしい。ちゃんと俺のところに来てくれるっていう約束が。


「……いってくるよ」


月さんは俺をもう一度抱き締めたりはしなかった。

ただ泣きそうに顔を歪めて、そう答えて消えていった。




言い知れない不安に包まれたままの感情を振りきるようにギュッと手を握る。

それでも恐れは消えずに、私は瞳を伏せた。

魔術を解いた現場は再び先程までのように争いが始まって、人間の汚ならしさをまざまざと私に伝えてくる。

ああそうだ、これが現実。


誠、君だけはそれを知らないでいて欲しかったのに。



「おいルナ、さっさと始めるぞ」


「………珍しいね、君がそんなにやる気だなんて」


「誰かさんが心配事のせいで無茶すっからだろうが。

時の魔術にどんだけ魔力食われたんだよ?

俺以下しか無いぞ、お前の今の魔力」


「別に平気さ。

私は魔術が使えなくてもそれほど問題にはならないし」



これは真実であり偽りでもあった。

魔術が使えなくてもどうということはないけれど、魔力がなくなってしまえばそうも言っていられない。

ある意味私の命と魔力は直結しているようなものだから。

でも例えそうだったとして、魔力が枯渇してしまってもそれでセイが壊れないで済んだのならどうでもよかった。


――壊れないで済んだと言っても、現時点では、というだけの話だけれど。

こうして無為に時間を過ごしている今も、彼という存在がこの世界から消えてしまう可能性は十二分にあった。

だから卑怯だけど私は、彼に一つだけ細工をした。


彼を唯一の安寧から離すための魔術を、その身に。



「さて、それじゃあいこうか。

私は早くこれを済ませて、セイのもとへいかなければいけないから。

他でもない、私自身のために」



私が彼に触れるのも笑いかけるのも、彼を守るのも傷つけるのも、すべては私のためにしていること。

ごめんね、誠。許してなんて言えない。

でもどうか、私を独りにしないでいて。

君のあまりに儚い命の灯火が消えてしまうまで、どうか。




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