5-5*
8 years ago
Side:Seilute
「王子、申し訳ありません!
少々よろしいでしょうか!?」
扉の向こう側から声がして、俺は目を擦った。
ねむ……もう朝か。
のろのろと起き上がって扉の方向を見つめる。
「入ってきて構わないよ。何?」
使用人は随分慌てているらしい。
何かあったかな。
にしても今日はいつもより温かい。
“王国”は冬国だから、この季節は結構寒いんだけど。
……って、あぁ、そういうことね。
上半身を起こして自分の周囲を見回し納得したところで扉が開く。
やって来たのは見ない顔のメイドさんだ。
「大変申し訳ございません。
実は今朝から宵闇様のお姿が見当たらず…」
「あぁ、ルナさんに今回ついた人?いつもの人は?」
いつもは年配の落ち着いた女の人がついてるはずだけど、目の前で焦って混乱を露にしている彼女は見たことがない顔だ。
「それがいつもの者が体調を崩しまして急遽代役に」
「そっか。ルナさんのことは平気だよ。ここにいるから」
「え、こちらに…?」
キョトンとした顔に苦笑しながら、座ったままのキングサイズのベッドに流れる長い黒髪の一房を手にとって見せてやる。
そうすれば使用人は目に見えてホッとした顔をした。
「そうでしたか……お邪魔してしまい申し訳ございません」
「いや、平気だよ。ルナさんはよくこういうことがあるから、初めて担当したなら慌てるのも無理はないし。
彼女が起きて何か用があるみたいならまた呼ぶから、今はこのまま寝かせておいてくれる?」
「かしこまりました」
頭を下げて退室する使用人を見送って視線を落とす。
もう体全部くるまってるんじゃないかっていうくらい深く布団を被っている彼女。
ぺろりと少しそれを捲れば、小さく唸って俺にもっと近づいてきた。
「月さん」
その肩を軽く叩いて呼びかければ簡単に開く目蓋。
「………せい、」
すぐに俺を認識してふにゃりと微笑んだ彼女はとても寝覚めがいい。
たまに笑えるくらい酷いときもあるけど。
「また勝手にこっち来て。メイドが慌ててたよ?」
「……そっか、そう言えば別の部屋があったんだっけ。
でも寒いし、折角君のところに来ているのに、意味がないし…」
ボソボソと呟いて俺を抱き締めベッドに逆戻りする月さん。
あれ?もしかして今日ってすごく寝覚めが悪い日?
「ちょ、起きようよ月さん」
「うん。あと一時間したら」
「いやいやいやいや。
朝飯食いっぱぐれるじゃん」
「じゃああと五分」
「急に短っ!」
……いけない、つい突っ込んじゃった。
自分で自分に呆れている間にもう月さんは夢のなか。
あーもー、本当に仕方ないんだから。
「……あと十分したら絶対起こすからね」
そして俺はもっと仕方ない。
でもこういう風に甘えられると、どうしてもね。
お互いぬくもりが欲しくて駄目なんだ。
特に月さんはそれが顕著。
部屋を別に用意しても絶対に俺の横で寝る。
違いは朝早くに起きて自分の部屋に戻るか、今日みたいに使用人に部屋にいないことがバレるかだ。
「でも俺、知ってるんだよ」
すやすやと眠る彼女の頬をつつく。
それにも反応がないなんて、つまんないの。
月さんは俺以外ともこういう風に同じベッドで寝る。
ギルドの依頼を一緒に片付けることになった相手とか、望みを叶えてあげる相手とか、下手をしたらその日会ったばかりの他人とも。
勿論そこに性的なものは一切ない。
だって月さんも自分で言ってたし。
こっちの世界の人間とそういうことするの、本当に気持ち悪いんだって。
過去に一度、そういう行為を望まれた事があったらしい。
月さんはいまいちそういう貞操観念が薄くて、それを初めは叶えてあげようとしたんだって。
でも出来なかった。
皮膚同士の接触ならまだ平気だった。
それこそ触れるだけのキスとかね。
でも粘液を介したそれだとか、明らかに性的な触れ合いを彼女の精神が拒んだ。
結局望んできた相手には魔術をかけてその場から立ち去ったらしいけど、その後一週間は慢性的な頭痛と吐き気が止まなかったらしい。
俺はその話を聞いてホッとしたけど、苛ついた。
だってこの世界の人間がそんな風に彼女に触れるなんて、烏滸がましい。
なのに僅かでも、例え皮膚が触れあう程度の口づけだとして月さんに誰かがそんな事を望み、叶えられようとしたなんて。
今も考えるだけで苛々する。
たぶん自分の聖域を汚されたような、そんな気持ちなんだろうな。
俺にとって月さんはもう帰ることの出来ない故郷そのものだから、それにこの世界の人間が強く深く触れるのが嫌なんだと思う。
それに彼女がそのせいで辛い思いをしたっていうのも気に食わないから。
「………俺だけになら、よかったのに」
触れることを許すのも、何もかも。
月さんが他の奴に抱きついて眠るのを想像すると、とても気分が悪くなる。
だから本当はやめて欲しいけど、流石にそんなことまで彼女に要求する権利なんて俺にはないから口にはしない。
それに月さんがこの世界の人間に触れられる事は容認しても、絶対に心を許してないの知ってるし。
「………やっぱ駄目だ。月さん、起きて。構ってよ」
十分って言ったのは取り消す。
そもそもまだ五分も経ってないけど、それくらい許してよ。
何か色々考えてたら我慢できなくなってきたんだ。
「五分って言った…」
「もう経ったの。だから起きて」
「嘘だ……」
なんで分かるんだろ。不思議。
そう思いつつ彼女の肩を揺すり続ける。
流石にしつこくて諦めたのか、月さんは渋々布団から起き上がった。
あ、でも駄目だって。
「そのままでいいよ。ただ起きててね」
腕は離さないで。まだまだ触れていてよ。
「布団にいるのに寝れないなんて、拷問みたいだ……」
月さんはもの悲しそうにそう呟いた。
ベッドに座りながら抱き込んだ俺へと体重をかけてくる。
「ウジウジしない。明日はいっぱい寝かせてあげるから」
「明日は朝早く起きて視察じゃないか…」
残念、バレちゃった。
でも会話をたくさんしたお陰で月さんの口調はハッキリしてきたし、目も覚めてきたみたいだ。
まだ眩しそうに紫の瞳を細めて俺を見つめているけれど。
「誠、どうしたの?」
「ん?我儘言いたくなったんだよ」
「変なの…」
不思議そうにして月さんはもっと腕に力を込める。
「あったかい?」
「うん。子供体温」
「……そんなこと言うなら離れるよ?」
口先だけで、そんなことしないけど。
でもこんな時まで子供扱い、酷いよね?
「だって事実じゃないか…
でもそれだけじゃ、ないよ?
君がこの世界で一番あたたかくて安心できる。
だから私、君とこうするのがとても好きだ」
「……そんなんで誤魔化されたりしないからね」
「もう………まぁ、いいよ。
本当のことだし、誤魔化そうとも思ってないし」
うっ………駄目だ、負けるな俺の反抗心!
「……俺なんかより、同じSSの煌炎とかいう奴のが体温高いんじゃない?
夏は夏で氷雨ってのがいるらしいし、俺が一番って訳じゃないでしょ」
知ってるんだからね、そういうのも。
そんな意味を含めて放った言葉は彼女を一ミリも動揺させることが出来なかった。
ぱちぱちと長い睫を揺らしながら瞬いて、月さんは首を傾げる。
「誠、なんだか怒っている?」
「怒ってませーん」
そう、怒ってなんかない。
ただちょっと気に入らないなと思うだけで。
「………?
まぁ、いいけど………煌炎と氷雨のこと、よく知ってるね。
話したことあったっけ?」
「…結構有名なんだからね?
一部の業界ではどっちかと月さんが結婚するかもとか、色々噂だってたってるくらい。
いっそ両方と結婚するかも、なんて話まであるんだよ」
そんなものがごく少数の間とは言え広まるなんて、月さんは親しくしすぎだ。
「私が?彼らと?……ふふっ、そんなのあり得ないよ」
「どうだか」
「本当だって。まずギルドが許さないだろうし、私も興味ないし、彼らも興味ないからね」
未だ小さく笑い続けながら彼女はそう言うけど、わかんないよ。
そんな思いが顔に出ていたらしく、首を捻られたけど。
「どうして君がそう思うのか、むしろ私はそれが不思議だ。
私はこの世界の誰のことだって嫌っているのに。勿論君は別だけど」
「でも気に入ってるんでしょ?二人のこと」
「ふふ、それも噂なの?」
その通りだ。
と言うか、俺が集めた情報だけど。
「確かにその辺の人間よりは気に入ってるな。
二人とも結構思考がイッちゃってて、何より私のことを本気で恐れて、でもその強さに惹かれてる。
そういうとこ、何だか可愛らしいんだ」
「………ふぅん」
この無自覚。
ちょっと気に入らなくて月さんに背を向ければ彼女はくつくつと喉の奥で笑う。
「そして確かに、体温だけで考えれば彼らを抱き枕にした方が快適だろう。
でも感じ方が違うんだよ」
「…………感じ方って?」
「私が召喚された当時は冬だった。
それはそれは寒くてね。
凍えてしまうかと思ったよ」
話の内容に嫌でも体が反応した。
だって、初めてだ。月さんから召喚当時のことを聞くの。
「ずっと、永遠に共に過ごすのが当たり前だと信じていた大切な人達と引き離されて、私は孤独だった。
そのせいなのかな、私の中で孤独と寒さは直結してしまっているんだ」
寒いととても寂しくなる。
そう告げる声音が耳を打って、俺は振り向いて彼女を見つめた。
月さんは俺を見ていなくて、どこか遠い――たぶんもう戻れない日本の、大切な人達を想っていたけれど。
そしてその瞳がちらりと憎悪に翳り、けれど俺の視線にすぐに気づいて隠される。
隠さなくていいのに。
いっそその胸に抱く思いのすべてを見せてほしい。
そう思うのは、やっぱり高望みなのかな。
「だからどれだけ体温が温かかったとして、私の感じる寒さは消えないんだよ。
それは魔術を使っても同じ。
この孤独と寒さを無くすことが出来るのは、あちらの皆か君しかいない。
だから実際のところ君以外の他人とどんなにくっついていたとして無意味なんだ」
「……俺とくっついてたらあったかいの?」
「そうだね。この世界の誰よりも」
「………」
「もしかして、喜んでくれている?」
バレた。
必死に顔がゆるまないようにしてたのに、こちらを覗き込んだ月さんは簡単に言い当ててしまう。
色々と俺のことを理解してくれるのは嬉しいけど、こういうのもわかっちゃうっていうのは問題だ。……恥ずかしいし。
「……俺だって月さんとくっついてるのが一番安心する。
癒される、っていうのかな」
「本当?それは嬉しいな」
字面だけ追えばまるでどうということもなく放たれた言葉だけど、月さんのふんわり和らいだ表情を目に映しながらだと堪らない。
胸が締め付けられて、切ないような嬉しいような、そんな心境。
「にしても両方と、なんていうものまで出ているなんて。
まあ煌炎は“帝国”出身だから不自然ではないけれど」
「その口ぶり、もしかしてどっちかとの結婚話は知ってたの?」
「うん。実際言われたこともあるしね。
どちらが恋人ですかって」
へぇぇえ?どっちが、ねぇ?
「その時はつい爆笑してしまったよ。
三人であんなに腹を抱えたのなんて初めてだったな。
質問をしてきた依頼主は目を白黒させていたけど」
「SSが全員で取りかかる依頼って、そんなに多いの?」
思い出してまた可笑しくなったのかくすくす笑う月さんに問いかける。
だって絶対そんなにいらないと思う。
SSって、要はギルドで最強なんでしょ?
なら一人でやれよって思う俺は間違ってない、はず。
「うーん、どうだろうね。
実際のところSS依頼は年によってバラツキもあるけど、大抵三回から十回といったところかな。
そしてその場合は大体二人か三人で片付けているんだけど」
つまり殆ど一人ではやってないってことじゃん。
「まぁSS依頼は結構危険だから。
新種の魔物なんかが出ると問答無用で三人全員駆り出されるし」
出来るだけギルドの益になるようにデータ収集を任されるらしい。
特に煌炎なんかは魔術が使えないから、データが十分な魔物でもない限り大抵月さんか氷雨と組んで依頼なんだとか。
「ただ私達は魔物の殲滅が主のランクS依頼を回される方が多い。
ランクSはついこの間二人組の若い人達が入ったばかりでそれ以外にはいないし、万年人員不足なんだ」
「そういうのは一人で行くの?」
「そうだね。余程の事がない限り一人だ」
「なんか、ギルドも考えてないようで色々考えてるんだね」
安全面とか情報面とか、色々。
でもこんなことまで俺にペラペラと話しちゃっていいのかな。
気になって聞けばにっこりと笑みが返ってきた。
「まあ、駄目だね。本来なら処罰ものだ」
「駄目なんじゃん……」
しかも処罰とか。
そのわりに全然平気そうだし。
「心配はいらないよ。私はSSの中でも一番強い。
だからその分自由気ままな事はギルドの最高権力者――総代と呼ばれる老人もよく分かってる。
あったとして面倒な依頼を山のように押し付けられるとか、それくらいさ。
そもそも君が黙っていてくれれば問題ないことだしね」
あれ、案外軽い。ここに来るのに五月蝿いのもその総代じゃなくて、他の有権者って事なのかな。
「ただ総代はギルドをかなり大切にしているらしいから、それに牙を向こうとすれば問答無用で私を消そうとしてくるだろうけど。
彼とは一度も戦ったことがないからその辺りは凄く興味があるんだよねぇ」
「うわぁ、戦闘狂…」
ちょっとあからさまに引いてみたら月さんは拗ねたように唇を尖らせた。
「酷くないかい、それ。
ただちょっと刺激が欲しいだけだよ。
それに実行はしないさ。君の身が危なくなりそうだし」
「俺?」
「そう。申し訳ないけれど、君は私が唯一気にかけている人だから。
その辺りのことは総代にも伝わってしまってるんだ。
だからいざとなった時の人質候補として目をつけているみたい」
「俺、チートなんだけど」
「まだ体が追い付いていないじゃないか」
喉の奥で笑って彼女は俺と手のひらを合わせた。
まだ彼女の方が大きなそれ。
指の第一関節くらいの差だけど、なんだかそれが酷く大きく感じられる。
「成長したら違うのだろうけど、今の君は煌炎や氷雨に負けてしまう。
だから興味はあってもギルドに逆らったりはしないよ」
「……俺、貴女の足手まといになってる?」
「いいや、ちっとも。
君は私を弱くするけれど、私はそれが心地いいから」
それってどうなの。
結局のところ彼女の弱味になってしまっているのは事実だ。
それ、俺が月さんの邪魔してるってことじゃん。
「そんな顔をしないで。私としては今が最良なんだ。
流石のチートでもずっと気を張って過ごせる訳じゃない。
たまの息抜きが必要だろう?」
「俺は休憩所扱いなの?」
「その通りだね。それくらい必要不可欠なものだ」
………俺がこの人に口でも力でも勝てるときってあるのかな。
でも口はともかく力では勝ちたい。
と言うか負けたくない。
俺は月さんと同じ位置にいたいから。
女のひとに守られるとか、カッコ悪いし。
「……さて、さすがにそろそろ起きようか。
もう朝食をとる時間だ。
あまり遅くなるとメイドさん達に迷惑がかかってしまうからね」
「よく言うよ。部屋にいないって焦らせた癖に」
「仕方がないだろう?
君の傍は落ち着くから、つい熟睡してしまうんだ」
「………」
ぎゅっと抱き締められながらそんなこと言われて、俺にどうしろって言うのさ。
でもそんな俺の気持ちも知らないで、月さんは早々に腕を離しベッドから抜け出してしまう。
………いや、別にいいんだけど。
ただもうちょっと、さぁ。
あんな事言っときながら簡単に俺の事離して、さっさとご飯に行っちゃうとか、なんか気に喰わないんですけど。
「月さんの悪女……」
「えぇ?急に何の事?」
若しくは天然小悪魔でも可だ。
この人全然分かってない。
分かってないくせに簡単にそうやって俺のこと動揺させる。
「月さんはね、もう少し慎みを持つべきだよ!」
「だから急に何なのさ……」
心底よく分からないものを見るような目で見ないでよ。
絶対に正しいのは俺だと思う。
そんなんだから他の男との結婚の噂とか広まるんだって、絶対。
月さんはチートだし警戒する必要もないって思ってるの分かってるしそれは実際に事実だけど、でもやっぱり警戒心持ってよ。
俺はいいけど、他のやつは違う。
月さんに触れられてああいう優しい男心も女心もくすぐっちゃうような言葉を投げかけられて、だから彼女の周りはたくさん人が集まるんだ。
「いい?俺が何も知らないと思ったら大間違いだからね?
月さんのギルドとか依頼とかでのあんなことやこんなこと、ある事ない事これでも色々知ってるんだよ」
懇意にしているオルド支部のギルマスと受付とか、さっきから話に出てる煌炎と氷雨とか。
それに最近ランクSになった二人は揃って両刀だって聞くし。
大体月さんは自分の顔と体と権力と名声の影響を分かってない。
なのに性格も表向きはいいし。
……いや、性格悪いとか、そういう事じゃなくて。
性格だって勿論いいよ?優しいし、大体いつでも落ち着いてるし。
表向きっていうのはこの世界のことが嫌いな事を周りに気づかせずにいるっていうこと。
そういうのを悟らせないように丁寧にこの世界の人間に接してて、そういうのがまた、さぁ。
……つまり何が言いたいかって言うと、月さんはもうちょっと他の人間に冷たくしてもいいと思う。
俺にはこのままがいいんだけどさ、変わらないようなものが他の人間にも向けられてるって思うとなんか…
勿論月さんが同郷の俺の事、この世界にいる誰よりも特別扱いしてるの分かってるよ?
実際俺だって彼女に同じようにしてるし。
でも他の人間にまで優しくし過ぎなのは何だかなって思うんだ。
「私が言うのもアレだけど、それはどうなの…?」
だけど月さんに冷静に返されれば確かにと詰まってしまうのも事実。
……やっぱ月さんに口で勝つのは無理だ。
それに一応自覚はある。
俺が口に出してない本心とか、結構勝手な意見だっていうの分かってるんだよ、これでも。
「それに悪女というなら君だろう。男だけど」
「俺?どこが?こんな素直なイイコいないよ?」
それは流石に冗談だったけど、月さんはきっぱり首を振った。酷い。
「君は毒みたいな人だからね。
私はいつもそれが私にとっての致死量になってしまわないか心配なんだ」
「何それ。俺、別に月さんの事傷つけたりしてないじゃん」
「確かにその通りだ。でもそう思うんだよ。
女の勘、というやつかな?」
苦笑した彼女は今度こそ本当に背を向けて歩き出す。
たぶん着替えるんだろう。まだお互いパジャマ代わりの身軽な服だし。
俺も着替えないとね。腹減ってきた。
にしても女の勘とか。
俺は絶対月さんの事傷つけたりしないのに、本当にもう、酷い人。
本当は勘なんかじゃなく、理解してる。
君は私にとって毒だ。
それは既に私の身体を満たして致死量に達している。
君にとってはどうだろうか。
私は君の毒たり得るのか。




