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限りなく人っぽい何かと銀と金  作者: 美羽
金色の後悔
51/178

5-2*

8 years ago

Side:Seilute




結局その日、俺はいつになく早く仕事を終わらせ(月さんが来たときはいつもだけど)迎えに行った彼女とずっと話して過ごした。

ジークは将来的に俺の側近になるよう教育されているから、普段は午後に城にやって来てそのまま父である侍従長が仕事を終える夜までいる。

だけど月さんが来ているときだけは侍従長が気を利かせてくれるのか早く帰るのだ。

お陰で俺は彼女と二人だけの時間を満喫。

お互いにあんまり言えない愚痴だとか会わない数ヵ月の間に起こったことだとか昔(この場合はあっちの世界の話だ)のことだとか、話のネタには事欠かない。

寝たのは日が昇る直前で、起きたのは昼という有り様だ。

まあ今日は仕事休みにさせてもらってるからいいんだけどね。

って言うか普通十歳の子供が政務をこなしたりしないし。


この世界で獣人は獣の姿、所謂獣型で生まれてきて、すぐに目も開くし立ち上がることができる。

亜人の場合は種族によってまちまちで、成長の早い種と遅い種がある。

竜族はなんと卵なんだとか(嘘。ちゃんと胎生だ)。

そしてこの世界の人族は、俺達の世界の人間より少しだけ成長が早い。

魔力の存在がそうさせるのか、それともあちらより危険なもの(魔物とか)の多い世界がそうさせるのか、生後一年くらいである程度は話せたりするんだよね。

それに俺の場合元々の誠司としての自我と知識があったから、普通の子供よりも更に自立が早かった。

その結果が三歳での農地改革だ。

まあそれはそれでやっぱり異常なんだけど。

以来城の政務を少しずつ回されるようになってきて、最初は小さな、それこそお困り相談並の案件だったものが十歳の今では地方都市レベル。自分もちょっと驚き。


政務はやりたくてしてる事だし(なにせ歴史オタクなんで)やりがいもあるからいいっちゃいいけど、やっぱり月さんが来ているなら彼女との時間を優先したくて仕事は休みがち。

だからってサボってる訳じゃなく。


周りが逆に煩いんだよね。

まだ子供なんだから遊んだりしろって。

俺達じゃ外見での年齢差的にそうは見えないけど、ともかく仕事をしなければそれでいいらしい。

でも実際のところは机作業をしていないだけだ。


「さぁ誠、着いたよ。

君の注文通り、“帝国”の帝都上空だ」


月さんは転移の魔術で俺を色んな所に連れていってくれる。

だからこうやってたくさん世界を観察中。

明後日なんかは地方への視察の足になってくれるって言ってくれたしね。


「うーん、やっぱチャイナ感満載だね」


上から見ただけでも分かるってものだ。

あれだよね、龍飛んでそう。

ドラゴン的なのじゃなくて空飛ぶ蛇的な形態のやつ。


「ふふ、私もいつもそう思うよ。

建物とかの景観だけを見るなら時代的には漢とかかな?」


「そうだね。服なんかは月さんが着てるチャイナ服とか他の国のとかも混じってかなり進んでるけど」


ふよふよ浮かびながらこんな話するなんてすごい平和。

今日の予定としてはこの後少し“帝国”の見学して三時のおやつに“王国”の俺オススメの店行って、その後は首都ブラブラしたりする感じだ。

ただ昼に起きてすぐこっちに来たからまだ朝飯(この場合昼飯?)食べてないんだよね。


「ねぇ月さん、腹減んない?」


「ん?あぁそっか、食べてなかったんだっけ。

それじゃあどこかの店で軽いものでも……」


言いかけた彼女がある一点を見下ろす。

何かあったのかな?


「おや、見つかってしまった」


「どういうこと?

え、逃げたりした方がいいの?」


別に入国制限とかパスポートとかが必要な訳ではないはずだけど。

あ、でも帝都だけは関所があるんだっけ。

全然緩い感じのやつでただ入るときに名前を書くだけのものだけど。

一応皇帝のお膝元ってことでそれらしさを装うためにやっているらしいって聞いたな。

そうなるとやっぱ逃げるが勝ち?


「どうしようか……いやでも、彼に任せれば関所のこともどうでもいいし、間違いなくいいものが食べられるんだよね。

たぶん君も顔を合わせておいて損はないと思うし、行ってみる?

それにさっきからこっちに向かって叫んでいてさ、今も騒がしくて敵わない」


あれは公害だね、と暢気に言う月さんだけど、いや、だからまず誰なの。


「んー、月さんがそう言うなら別にいいんだけど、その人って――」


「じゃあ下りようか。つかまっていて」


「ちょ、だから月さ――うわっ」


この人聞いてないし。

月さんって案外人の話聞いてないんだよね。

まあこういう地味にせっかちなとこも嫌いじゃない。

だって全部完璧だったらなんか嫌だもん。

俺が勝てるとこないし、ちょっととっつきにくい感じするよね。


「はい、着地」


俺を抱き締めて途中で振り落とさないようにしつつ軽やかな着地を決めた月さんは上機嫌だけど…


「着地、じゃなくて、説明足りてないから」


「うん?」


不思議そうに小首傾げちゃって。

わざとでもなんでもなく、素でやってんだからほんと憎めない。

結局諦めのため息を吐いた俺は、少し離れた位置から外見に似合わないかなりの速度でこちらへ駆け寄ってくる老人を見つめた。

………うん、なーんか、見たことある顔だよね。


「ルナ、来るならそう言え!

俺が今日はいい天気だなと空を見上げなかったら気づかなかったところだぞ」


「気づかれないようにの上空飛行だったんだけど…まあいいや。

ガイオス、お腹減ってるから白米とおかずと緑茶を奢ってくれない?

私と、彼の分も」


「彼?そういやこいつ……」


「皇帝じゃん……」


ガイオスって名前でピンときた。

俺は会ったの初めてだけど、国王の親父とは親交があるはずだ。

そもそも竜族は長命だからこの人の治世は既に五百年くらい続いてる筈だし。

あっちも何となく俺のことを察したのかじっとり上から下まで見られてる。

え、何この目線。


「金髪にこのルナの好きそうな黒い目……例の“王国”の第二王子か!」


「どうも。“王国”第二王子、セイルートです」


一応軽くお辞儀しつつ自己紹介すれば、向こうも簡単に名前を返してくれた。敬語もいいって。

やっぱ軽い。月さんが自分から(仕方なしにだけど)会いに行くとか珍しいし、あんま付き合ってて苦にならない性格なんだろうと思ったらその通りだ。

うちの親父と違って仰々しさがないし、元小市民としては落ち着くわー。


「ちょっと何だいそのルナの好きそうなってやつ。

まあ合ってるけど」


「ルナさん見透かされてんじゃん。

そんな開けっ広げに黒好きだって言って回ってんの?」


正直俺だけが知ってんのかと思ってたのに。


「いや、自分の黒髪を大事にしてることはまあまあ有名だが、黒そのものが好きってことは広まってないな。

俺の場合は“王国”にやってる間諜から数ヵ月に一度第二王子のところに通っていると聞いたからそうなんだろうと」


「堂々と間諜の存在明らかにしてどうするのさ。

それにセイのこと気に入ってるのは瞳が黒いからだけじゃないよ」


……嬉しいこと、聞けたかも。

でもそれは言わない。恥ずかしいし。

だからとりあえずもう一個の方に反応しておこう。


「あー、最近やけに視線感じると思ったら」


月さん関連か。

そう思いつつ見つめれば私のせいじゃないだろうと眉を上げられた。

まあ実際間諜とばしてるの目の前の皇帝だけどね。


「まあ気にするな。それで昼飯だったか?」


「うん。実は食べていなくてね。

この後首都のどこかの店に行こうと思っていたら君に見つかって、まあセイも王族だし顔合わせを兼ねようかと思って」


「よし、ならいつもの離宮でいいか?」


「お願いするよ。話もしやすいしね」


月さんと皇帝はポンポン話を進めていく。

まあ俺としてもそれで構わないけど、いつもの、って。

そんなにここの皇帝と親しくしてるなんて初めて聞いたけど。

なんて思ってたら顔に出ていたのか知らないけど、彼女が不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。


「セイ?どうかした?」


「ん?あぁいや、ルナさんが偉い人と親しいの、意外だなーって思って」


月さんは偉い人が嫌いみたいな印象を俺は持ってる。

親父にも俺が生まれるまでは本当に強制的に依頼として呼び出されない限り会わなかったらしいし、パーティーとか華やかな場所には今も必要な時(やっぱり依頼とか)以外絶対に出ないし。

表舞台に立つのが嫌い、っていうのもあるのかもしれないけど。

前に聞いたら大勢の他人の目に晒されるのが嫌いなんだって。

まあ確かにこの顔だし、見られるのに辟易してるのかもとは思う。


「まあガイオスは私のことある程度わかってくれているからね。

茶飲み友達のようなものなんだ」


「ルナはいつも米か茶が欲しくて俺のとこ来るよな……地味に落ち込むんだぞ…」


それには少し同情した。

心なしか前を歩く皇帝が本気でしょんぼりしてるように見える。

でも少しだけだ。


「あはは、やだなぁ、それ以外でも普通に話をしに来たりもするじゃないか。

他にも君がどうしてもと言うから手合わせを何度かしたことだってあるし、やっぱり強くせがむから剣だって打ってあげたし」


ほらやっぱり。

ある程度私のことを分かってるっていう台詞で大体予測は出来てた。

ちょっと融通をきかせてあげてるんだろうなって。


「まあ、そう、だな……」


ムカッ。……って一瞬した。

何だろ、親友が知らないうちに別のとこに友達作っててそれを急に知らされて紹介されて、何俺以外とそんな親しくしてんの、みたいな感じかな。

うん、たぶんそんな感じだよね。


「ねぇルナさん、今度俺にも剣打って」


「え?君に?」


「そうだよ。だって皇帝だけとか狡くない?

俺と皇帝、どっちが親しいの?」


「おぉう、本人のいる前でそんなこと聞くのか第二王子よ」


吃驚したみたいに皇帝がこっちを見たけど、別にいいじゃん。

それに答えが分かってるから聞いてるわけだし。


「それはまあセイだねぇ」


ほら。俺って言ってくれるって、分かってた。

つい皇帝の方を見て鼻で笑っちゃうのも仕方ないと思うんだ。

だって分かったでしょ?

俺の方が全然親しいし全然月さんの事分かってる。


「……性格悪い奴だな」


「あはは、確かにセイは少し性格が悪いかもしれないね。

答えの分かっている問いをわざわざ口に出して確認するんだから」


「………そして今のルナの言葉が何だかんだ一番刺さったぞ」


「え?」


うん、結局トドメをさしたのは月さんだ。
















流石は皇帝の食べるものってことで、“帝国”の離宮で出された食事はかなり旨かった。

個々としては中国料理みたいな味付けだし見た目なんだけど、そこに白米と緑茶あわせるからすごく馴染みがある感じの味になるんだよね。

自然と箸を持つ手も進んで―――そう、箸なんだよね、カトラリーじゃなくて。そこもポイント高い。

ともかくすごく満足した。確かにあれはたまに来たくなるかも。

でも俺は月さんの作ってくれる日本料理が一番好きだなぁ。

彼女に言わせれば日本料理っぽいもの、になるんだろうけど。


「結局長居してしまったからもう三時近いね」


一緒に王都を歩く月さんが周囲を見回して言う。

ここは広場みたいな場所だから時計があって、それを見た上での言葉だ。

予定としてはそろそろおやつを食べる時間だけど、ついさっきまで皇帝のもてなしを受けてたばっかりだから流石にまだ入りそうにない。


「んー、どうしよっか。月さんもまだ全然満腹だよね」


「そうなんだ。いくら別腹と言ってもね」


「じゃあ腹ごなしがてらちょっと歩こうよ。

最近は王都も歩けてないから直接見てみたいし」


「うん、構わないよ」


ならやっぱりこうしないとね。

横で揺れる月さんの手を捕獲してそのまま繋ぐ。

彼女は一度瞬いて穏やかに微笑んだ。

王都とか、人混みの凄いところを歩く時には大抵こうするのが俺達の暗黙のルールだ。

周囲全ての人間が異世界人で、この場所に俺達は二人しかいない。

一人で歩くより、二人でただ横を歩くより。

手を繋ぐというこの行為はとっても大きな安心感を俺達にくれる。


「それにしても君はとても城の外を見たがるよね。

今もそうだし、私ともよくプチ旅に出かけるし、明後日も視察に行くし…」


空いている手で指折り数えながら月さんが小首を傾げる。

にしてもすごく今更な疑問じゃないかな、それ。


「だって一人で見るより月さんと色んな物見たいじゃん。

月さんと見た方が楽しいし、すごく魅力的に見えるんだよね。

何て言うか……同じものでも俺が食べてる方より月さんが食べてる方のが美味しそうに見える、みたいな?」


「……私が言うのも何だけど、その喩はどうかと思うよ」


「酷っ」


本気でそう思ってる顔してるし、普通そういう事言う?

嬉しいよって言ってくれるとか、照れるとか、もっと色々あっていいと思うんだけど。

なーんて思ってたら。


「……でも、そう見えるんだ」


月さんは嬉しいような切ないような、形容しがたい表情を浮かべた。


「…月さんはどう?

俺と一緒にいて、そういうの思ってくれたりする?」


「うーん、微妙」


「………地味に結構傷ついたんですけど」


「あはは、ごめんね」


ちっともそう思ってなさそうな謝罪。

本当に酷いんだから。

お世辞でも輝いて見えるよ、とか言ってくれればいいのに。

まあこういうとこが月さんらしいって言うか、だから憎めないんだけど。


「でも、仕方がないだろう?

私はこの世界が嫌いなんだ。

だから君といてそれが少し緩和されるなんて、意地でも認めたくないんだよ」


「……それって、半分答えてるようなものじゃない?」


「言わないで。これが私の精一杯なんだ」


内緒話のように人差し指を立て唇に持って行った月さんの色っぽさったらない。

それにこんな嬉しい言葉までもらえてさ。


「……ゴホン。てか、俺が外見るの好き、って話だったよね」


「ふふ、照れているの?」


「全然照れてなんかないし」


「意地っ張り。いいけれどね。

それで、他にも理由があるのかい?」


勿論ちゃんとありますとも。

まあ大部分はさっき言ったやつなんだけど。


「だって現状把握って大事でしょ?

今この世界の標準的な生活レベルとか、そういうの知りたいじゃん。

そういうの知っとくと前の世界で行われていたいろんな世界の改革とか政策とかから、どういうのが今試せるのかちゃんと分かるしね」


要はシミュレーションゲームと同じだ。

俺はいくつかの選択肢を持っていて、でもそれを無闇矢鱈とやればいいってもんじゃない。

それじゃあ国のレベルや評価は上がらないで、ただ(プレイヤー)のポイントだけが下がっていってしまう。

きちんと状態を見極めて、その上で考えて行動しないとレベルアップなんて望めないのだ。

そう話した俺に、月さんは考えるように目を細めた。

じっと、紫の瞳が何かを探るように俺を見つめる。


「………」


「……何?そんな見られると戸惑うんですけど」


どうしてか焦る。

そんな風に見るのを止めて欲しくて、俺は少し強引に彼女の手を引いた。


「ほら、月さん。あの店気に入ってたよね?

ちょっと入って色々見てみようよ。新作出てるかもだし」


「……そうだね」


月さんはそれを正確に察したんだろう。

すぐに表情を微笑みに変え、抗うことなく俺について来てくれる。

――――何でだろう。すごく、今、ホッとしたんだ。

そんな風に感じるような事、何もないのに。

俺はただ思ったままを正直に話して、月さんはそんな俺をただ見つめていただけだ。

なのにこんなに何かに追われているみたいな、不安な気持ちになるなんて。

そしてそれは勿論月さんに感じたんじゃなく、本当にどうしてか分からないけど、月さんでも俺でもなく、何がそんなに不安だったのかも分からない。

ほんと、何なんだろ。


「…誠」


「……なに?」


呼びかけに彼女を見ると、月さんは申し訳なさそうに眉を寄せていた。

その表情のまま繋ぐ手の力が強められ、触れる面積が大きくなる。


「ごめんね。何か不安にさせてしまった?」


「いや、そんな事ないよ。俺もよく分かんないし…」


そう。俺すらよく分かってないんだから、月さんが分かるはずない。

なのに彼女はすべて分かっているような顔で苦笑して俺を見つめるんだ。

どうして月さんはいつもそんな風に、俺の事を知っていてくれるんだろう。


「分からないならそれでいいんだ。

いつか分かるのかもしれないし、分からないままかもしれない。

それは君次第だけど、それをそんな風に不安に思うことは無いと思う。

これは私の主観だから、もしかしたら間違っているのかもしれないけれど――私から言わせれば、普通の事だよ」


「……ちょっと説明が分かりにくい」


「そうかもね。わざとボカして言っているから」


「そういうとこ意地悪だよね、月さんって」


簡単には答えを教えてくれない。

でもそれはたぶん、月さんがその方が俺の為になるって、そう考えた上での行動なんだろう。

そういう人だって、ちゃんと分かってる。

もう七年の付き合いだしね。


「意地悪と言われても構わないさ。自覚はあるし。

私はそう思うんだ。できたら覚えておいて。

私は君がいつかそれを知ってしまっても、ずっと分からないままでも君の味方だ」


「……その口ぶりからすると、知ったら悪いことなの?」


だって知ってしまっても、って言い方。

それってそういうことだよね?

指摘すると月さんはおや、と片眉を器用に上げて少しの迷いを見せた。


「どうだろうね。私には分からないな。

だって君の心や物事の感じ方、捉え方は君だけのものだ」


「うわ、その逃げは酷くない?」


「ふふっ、仕方がないじゃないか」


「うーん、じゃあもしも月さんだったらどう感じるの?

それを知ったら嫌?それとも嫌じゃない?」


俺の問いに、彼女は少しの間考え、答えを一つ返した。


「少し、絶望するかも」


「え」


「なんてね」


………もう、本当に酷い。

俺案外真剣に聞いてたのに、そんな風に茶化したりする?

自分でもじっとりした恨みがましげな感じになっていると自覚できる目で見つめても、月さんの笑顔は崩れない。

月さんって本当、笑顔で誤魔化すこと多いよね。


「……ったく、諦めればいいんでしょ、諦めれば」


「察してくれて何よりだな。

流石はセイ、一番親しいだけあるよね」


「コラ、これ見よがしにお世辞言わない」


バレてしまった?と笑う彼女にバレバレ、と返す。

おかげで真剣さが一気に抜け落ちちゃったよ。


「でもいつだって君の味方なのは本当。

忘れないでね、誠。セイルートも」


「………俺だって、そうだし。

月さんとルナさんの、俺はずっと味方だよ」


「それなら全然問題ないね」


月さんはこそばゆそうに笑った。





君だけはこの絶望を知らないでいて。



ううん、知ってしまえばいい。

そして私のように壊れてしまえばいい。



でも、やっぱり駄目。

なにも知らずに笑っていて。



自分でも本心がわからない。

だから私は、君が気づいてしまったとして気づかず死んでしまったとして。

どちらでも、構わないから。




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