4-8
Side:Luna
「おいルナ、煌炎が動けねぇってよ」
「ん……」
頭上から聞こえる声で目が覚める。うーん、美声。
ただし外見はくたびれた美形中年だ。なんて残念なんだろう。
そんな至極どうでもいいことを考えながら目をこすり、ついでにくっついていた体を離した。
寒い。やっぱり離れるんじゃなかった。
くっついていた部分が特に温度差で寒く感じて、本当にもう嫌になるね。
「……寝起きはいいのに、どうして自分の寝台ではなく俺の所に入ってくるんですか」
疲れたように私がくっついていたもの――つまり煌炎はため息を吐いた。
迷惑そうな顔。傷つくなぁ。
「だって寒いじゃないか。氷雨は人魚の亜人だから絶対にくっつきたくないし、対して君は炎を操るからか温かい」
ただ気になるのは恒温動物であるトカゲなのに冬のこの時期は平気なのかということだな。
まあ竜をトカゲの仲間として見る私が間違っているのかもしれないけど。
私の発言に氷雨が笑う。
「ひでぇな相変わらず。これで夏の時期になると上機嫌で俺のとこ来るくせに」
「だって君は冷たいからね」
人魚の亜人だから、彼の体温は普通の人間よりも低い。
体温計なんてこの世界にはないから分からないけれど、たぶん25°くらいなんじゃないかな。
私達はなんだかんだ同じSSとして一緒に依頼をこなすことがあったり、今回のようなお互いの見張りとして活動することもあってこのくらいの私の行動に動揺することは無い。
うんうん、本当に楽でいいね。
「だからと言って何もこのタイミングでなくともいいでしょう。
この後明星がどんな顔をするか……彼は獣人で鼻がいいんですよ?」
「それがどうかしたの?」
「……宵闇は、そうでしょうね」
「諦めろ煌炎。ルナはこういう奴だ」
朝だと言うのにがっくりと疲労感いっぱいに肩を落とす煌炎を氷雨が慰めている。
どういう状況だ。というか何故そんな反応をされるのか全く分からない。
「冬はいつもの事じゃないか」
「夏は俺だしなー」
「こんな風に寒い時と暑い時、両方の係がいてくれて助かるよ。
ありがとうね、センパイ方」
二人は一気に嫌な顔をした。
私はお礼を言ったんだけどなぁ。
「その呼び方ヤメロ。嫌な思い出しかねぇ」
「昨日から言っていることでしょうに、本当に貴女は嫌がらせが好きですね」
「ちょっと特に煌炎の後半の言葉はどういうことだい」
そんなに嫌なのかなぁ、センパイ呼び。
私としては精一杯の後輩らしさを出すことが出来るシロモノなのに。
まあそんなに嫌がるなら少しは控えるけど。
そう言えば二人はあからさまに表情をゆるめた。そんなにか。
「では宵闇、貴女は明星のところに行って髪を結ってもらってきて下さい。
それで彼の機嫌も少しはよくなるでしょう」
「何で髪をしばることでシルヴァの機嫌がよくなるんだい?
それに今日は馬には乗らないし必要ないじゃないか」
もう雪はかなり積もっていて、ここから先を馬で進むのは難しい。
だから移動手段は主に徒歩だ。
そしてそうなると髪を縛るという過程は全く必要なくなる。
それに縛ると首が寒いし。
「いいえ、必須です。いいから行ってきてください。
それと焔火には私が呼んでいると言って下さい」
「まぁそこまで言うなら行くけどさ…」
まったく彼はよく分からないところに拘ると言うか。
いや、それとも必要な事なのかな。
私はどうにも他者の気持ちを推し量るという事にあまり重きを置いていないから、彼に見えるものが見えていないという事ももしかしたらあるのかもしれない。
―――まあ、だからと言ってそれを見たいとは思わないけど。
「ルナ頑張れよー」
「頑張る……?何をだい?」
「ん?まあ俺からの応援だって。気にしなくていいぜ。
ただああいう手合いは執着心が半端じゃねぇからな……」
ブルリと震えた氷雨は嫌な思い出でもあるのだろうか。
心底恐ろしい、とでも言いたげに青くなっている。
でもその心配は不要だと思うな。
一応お礼は言っておくけどさ。
「はいはい、ご忠告ありがとう」
「おい、本気にしてねぇな?」
「あははは。まあともかく行ってくるよ。
あまりゆっくりし過ぎても朝食に間に合わなくなってしまう」
そりゃあね。
だって私に執着する人間なんて、セイを除けばもうこの世界にはいない。
きちんと全員、私が殺したんだから。
簡単にノックをして入った部屋は、なんとも言えない刺々しい空気が漂っていて私は即行で帰りたくなった。
けれどシルヴァが嬉しそうに尻尾を振って(比喩ではない)近づいてくるのでそれもできない。
うーん、犬を飼ったり弟がいたらこんな感じなのかな。って、失礼か。
「やあ二人とも。共に過ごした初めての夜はどうだったかな?」
「おはようルナ。昨日は最悪だった」
「それは俺の台詞だ。何で俺がこんな狼風情と同じ場所で寝なきゃならねぇ。
もう絶対に御免だぞ」
うーん、どうやら二人の仲が深まっただとかは全くなかったらしい。
少しは仲良くなったかと期待したんだけど、するだけ無駄か。
「君達は相変わらずだね。
ところで焔火、煌炎が呼んでいたよ。
部屋に来いってさ」
「あいつが……?
ふん、どうせ下らねぇ理由だろうが、仕方ねぇ。
これ以上お前らと同じ空間にいたくもねぇからな」
酷いなぁ、そんな発言。傷つくったらないね。
肩を竦めて立ち去る彼を見送り、完全にその姿が見えなくなるとシルヴァはぎゅうと私の腰に手を回し抱きついてくる。
うーん、この子も相変わらず甘えただ。
「シルヴァ、動けないのだけど」
「竜族くさい」
くさいって。
仮にも年頃と言えなくもない……もうそんな年でもないか。まあともかく、女性に対してくさいと言うのはマナー違反じゃないだろうか。
「氷雨のものはしない…煌炎のにおいだけ」
首筋に顔を埋めるシルヴァはまるで警察犬か何かのようだ。
「氷雨は体温が低いから、冬はくっつきたくないんだ。
でも逆に煌炎は温かいからね。
寒いより温かい方がいいだろう?」
「………もしかして、同じベッドで寝た?」
「そう言っているじゃないか」
腕の力が強まった。何故。
「それ、初めてじゃない?」
そして突然の問い。
それ、というのがよくわからず首を傾げれば、問い詰めるような響きと共に言葉が重ねられる。
「同じベッドで寝ること。
昨日が初めてじゃ、ない?」
「あぁうん、その通りだよ。
私達は同じランクだからたまに一緒に組んで依頼を片付けることがあるんだ。
あの二人なら足手まといにならないし、私の事を少しは理解してくれているから気を遣わなくていい。
だからまあその流れでつい、ね。
夏は氷雨と寝るととても涼しくていいんだ。
何と言えば伝わるかな……うーん、冷感マット…いやいや。そう、何だかひんやりして、ともかく暑い夜でも寝苦しくないんだよ」
「………だから、嫌なんだ」
「うん?何が?」
ぼそりと呟く弟子についもう一度首を傾げた。
一体何が嫌なんだろう。
とてつもなくおどろおどろしい低い声だったなぁ。
「……何でもない。
ルナ、俺と煌炎はどっちがくっついていて温かい?」
「君と煌炎?うーん、難しい質問だね。
……でもまあ、どちらかと言えば君かな。
だって君は自分からもくっついて来てくれるから。
隙間がなくなって、より温かい気がするんだ」
煌炎はちょっと嫌そうに避けるんだよね。
本当に酷い仕打ちだと思う。
別に寝相が悪いわけでもないのに。
「……!なら、いい。
じゃあ今夜はまた、くっついて寝よう?」
「ふふっ、大歓迎だよ」
よし、これで今晩も暖がとれる。
それにもう少ししたらセイのところに行けるし、そうしたらその一日はきっと、とてもあたたかい。
すごくすごく、泣きたいくらいあたたかな温もりに包まれて眠ることが出来るんだろう。
まだもう少しだけ先の事だけれど、それでも私のやる気を引き出すには十分な動機。
それに心を弾ませながら未だ抱きついたままのシルヴァの服の裾を引く。
いつまでもこうしていたら時間の無駄だしね。
「ところでシルヴァ、髪を結んでもらってもいいかな?」
そしてその後何故か上機嫌になったシルヴァに首許が寒くならない髪型に結ってもらい、ここ数日で既に慣れてしまったギスギスした空気の中での食事を終えた私達は宿を出発した。
もちろん手段は徒歩。
本当はこの街から後数キロは馬でも進めるけれど、どうせ途中で降りるのなら最初から無い方がいいだろうと昨日私達SSチームで話し合って決めたのだ。
よって厩に既に馬はおらず、さっさとそちらへ向かったレンは驚くことになる。
昨日の夜のうちに私が“帝国”の宮殿まで転移させちゃったんだよね。
だってお金を払うからといって宿に置いておいて世話させるのも悪いし、何より折角魔術師がいるんだから使わない手はないっていう煌炎の意見だ。
彼はオフでは結構お金を使うけれど(腐っても王族だし)、こういう依頼の現場では結構な節約家だから。
その分私達が無償で働かせられるんだけどね。
「……叔父上、これはどういうことですか」
すっかり空になった厩から出てきたレンがすごい顔で煌炎に問う。
あーぁ、まあまあの美人が台無しだね。
「どうもこうも、見た通りですよ。
馬は首都に返しました。今日からは徒歩で進みます」
「……そんな話、私は聞いていませんが」
「そりゃあ昨日の夜、私達三人で決めたことだからね」
すっかりお馴染みになった二人の口論に口を挟むこの方式は案外楽しい。
レンはとても馬鹿な人間だ(竜族だけど)。
こうしてこちらを睨むその姿はまるで子ネズミが必死になって敵を窺っているようで可愛らしいと思う。
「また、貴女か…!」
その声には答えることはせずに視線は氷雨へ。
だって一々付き合ってられないし。
「さて、君の出番だよ氷雨。ちゃちゃっとやってくれ」
「ほんっと人使いが荒いっつうか。
ルナといい煌炎といい、どうして俺の周りはこんな奴らばっかなんだ」
そう言うけど、いじられキャラなんだから仕方がない。
それにこの仕事に参加するならきちんと役立ってもらわないとね。
文句を垂れる(形だけだけど。もう昨夜のうちに彼も納得したことだ)氷雨をせっつきつつ私も魔力を流す。
流石に彼だけに全てをやらせようとするほど私も鬼畜じゃないさ。
ただまあ私が担当するのは半分程だけどね。
こちらの魔力の流れをきちんと感じたのだろう、氷雨も一度こちらに視線をやって本格的に術の行使へと移行した。
「【水よ集え、氷よ集え。我に道を。我等に導を。
望むその場所へのきざはしをこの空に】」
氷雨のような人魚の亜人は魔術を行使する際に歌うように詠唱を行うことが多い。
それは戦いでは隙になりやすいけれど、逆にこのような術の正確性と強度を必要とする場面ではかなり役立つ能力だ。
それに彼は歌わなくても普通の省略詠唱で魔術を使えるしね。
それくらいできないとSSなんてやってられない。
で、まあこの時の声が無駄に美声なんだよねぇ…
やっぱり腐っても人魚だし、氷雨は歌が上手い。
あんなに苛々してたレンもボーっと聞き惚れるくらい。
うん、これであっちは気にしなくてよくなったな。
それに氷雨の詠唱に合わせてきちんと空には私達の移動の手段が形成されている。
まあ私の術の効果でもあるんだけどね(ここ重要)。
「さて、今日からはこの氷雨の作った氷の道を通って目的地である北要塞まで歩きます。
空中を通りますから魔物との遭遇は極力抑えられますし、徒歩でも早く到着できるでしょう。
少し狭いですから二列になって進みます。
俺と焔火で先頭を、その後ろにレンと明星。そして最後尾を宵闇と氷雨です。
二人にはこの道の処理という役目がありますからね」
出来上がった空にかかる虹――ではなく、私と氷雨の魔術で作られた氷の橋(厩の出入り口から今日の目的地である次の街の壁付近までかかっているかなり長いものだ)を一瞥して、煌炎はとてもイイ笑顔を浮かべた。
嫌そうに今にも文句を言おうと口を開きかけていたシルヴァが最後の一言でそれを閉じる。
うーん、彼を黙らせることが出来るなんてなかなかやるな。
私以外のいうことをなかなか聞いてくれないんだよね、シルヴァって。
協調性のなさは問題だから最低限他人には愛想よくしろと教えているのだけど。
子育てというのは難しいなぁ(違う)。
「なあルナ、これはあれなのか?
この依頼遂行の中では当然の事なのか?」
それから暫く無意味なレンとの問答を経て、ようやく氷の橋を進み始めたところにまだこの相性の悪すぎるメンバーに入って一日目の氷雨がこそりと耳許で質問してくる。
勿論まかり間違ってもレンには聞こえないよう、結界で音漏れを防いだ上でだ。
「まあそんな感じ。
彼女はまあ、まだまだ思春期で中二病真っ盛りの時期なんだよ」
「中二…?」
「あぁごめん。
簡単に言えばヒロインぶりたい感じかな。
これで意図は通じる?」
「なんとなくな。
あとお前の弟子との関係は?」
シルヴァとの関係か。
また面白いことを聞いてくる。
敢えてこれに名前をつけるとしたら“恋の一方通行(笑)”って感じだけど、主旨は伝わってくれるのかな?
そう思いつつともかく告げてみれば、氷雨は隣で噴き出した。あ、通じた。
「い、一方通行……くくっ。
なんも分かってねぇルナの癖に、ふっ、言い得て妙っつうか、ははっ」
うーん、そんなにツボにハマったのかなぁ、私の言葉。
にしても流石に声が大きすぎて他の四人が振り返ってしまったじゃないか。
それを笑顔を浮かべつつ誤魔化す。
煌炎は呆れたような顔をして、焔火は興味無さげに鼻を鳴らし、レンは苛々した様子で眉間にしわを寄せて、それぞれすぐにまた前を向いた。
ただ一人シルヴァだけは少しの間私と氷雨を交互に見つめていたけれど。
「いやぁ、やっぱルナの弟子恐いわ」
シルヴァがきちんと前を向いたことを確認してから氷雨がボソリとこぼす。
「なんだい急に」
「んー、まあ気にすんな。
それよりルナ、お前いつになったらまたソロに戻るんだ?」
「……それはそれで急な話だね」
本当に急で驚いてしまったじゃないか。
氷雨の言うソロとはギルドでの活動のことだろう。
私は今シルヴァを弟子として育てているから、ソロではなく彼と二人でのパーティーを組んでいる事になる。
勿論パーティーを組んでいても個別に活動できない訳じゃないけど、それでもパーティーを組んでいる人間は大抵そのメンバーで依頼を受けるのが普通だ。
「どうしたんだい、藪から棒に」
「いや、最近お前も煌炎も弟子構ってばっかで俺一人での依頼多いし?
やっぱSS依頼はSS全員でやってこそじゃないか?」
「つまりは君が楽をしたいだけと言うことか」
「なんでバレた」
「バレバレだよ」
氷雨は面倒臭がりだ。
そしてあまりやる気がない。
まあ魔物を倒してその肉を食べるときにはかなりのやる気を見せるけど、それ以外は本当に休日のオッサンかと言いたくなるくらい腰が重いのだ。
前まではなんだかんだと私を巻き込んだり煌炎を巻き込んだりしていたけれど、互いに弟子を持ったことでそれが難しくなったのだろう。
「まあ単純に気になったってのもあるがな。
お前が誰か一人と長く一緒にいるの珍しいし。
いつまでそれが続くのか、とか」
「またそういう話か……」
思わずうんざりする。
どうして誰も彼も私がシルヴァを特別扱いしているという風に見たがるのだろう。
そんなこと、あるはずもないのに。
「お?なんだなんだ」
「私の周囲は揃って私がシルヴァを大切に思っていると言う。
どうしてなのかサッパリ分からない」
「そりゃお前、やっぱ五年も一緒にいることだろ」
「別に年月なんか無意味なものじゃないか」
一緒にいるほど絆が強まって思いが深まるなんて嘘だ。
離れれば離れるほど恋しくなって苦しくなって、死にたいくらいの想いの重さに押し潰されるんだから。
だから一瞬も永遠も変わらない。
「機嫌悪いな。何か気に障ったか?」
「……いいや、何でも。
君と煌炎は最近、気配を読むのが上手くなったね。
私としてはやり易いようなやり難いような、微妙な心境だ」
それだけ実力が上がってきたということなのだろう。
けれどちらりと心に憎悪が浮かんだ一瞬まで察知されてしまうのは如何なものなのか。
最近の私は感情の統制が上手くいっていないのかな。
「それで、ソロの話だったか。
まだ確固とした予定はないね。
何しろ今はシルヴァの望みを叶えている最中だ」
「あぁ、強くなりたいってやつか?」
「あれ、話したんだっけ?まあその通りだよ。
それに彼の故郷探しの真っ最中だからさ。
故郷で特別な儀式を受ければ潜在能力が飛躍的にアップするんだって言うから、試してみたくてね」
「じゃあソロは少なくともその後ってことか。
煌炎は煌炎で使い勝手のいい弟子を中々手放さないだろうし、あーくそ、俺も誰か拾うか?」
氷雨に師匠役は向かないと思う。
顔に出ていたのか、彼はむすりと唇を尖らせた。
うわ、かわいこぶるオッサンに引く。
「氷雨、自分の年と外見を自覚した方がいい」
「相変わらずひでぇ物言いだな。
見てろよ?お前がソロに戻ったらうんざりするほどの仕事回してやる」
「最低だな。君のその似合わない髭を剃ってやろうか」
「それは止めろ本気で止めろほんと勘弁してください」
割りと本気でそちらに手を伸ばしたところ、かなりの力で手首を握られ拒否された。
チッ、残念。
氷雨は似合わない無精髭を生やしている。
昔、煌炎と彼が一緒に挑んできた時に面白半分嫌がらせ半分で剃ってやったんだよね。
そうすれば完璧な中性的美人の完成だ。
しかも呪い的な感じで半年は髭が生えないという付加魔術もしておいたから彼は大変だったらしい。
え?何が大変かって?
ふふ、男に迫られて大変なんだってさ。
彼が似合わない髭を伸ばしているのもそれが原因らしい。
昔から同性に異様に好かれたんだとか。
ただ彼にそっちの気はないので、そのたび死ぬ気で抵抗したらしい。
氷雨の冒険者としての力は殆どがその迫ってくる男対策によって築き上げられたとかそうじゃないとか。
話を聞いた時には思わず腹が痛くなるほど爆笑したね。
本当にいい思い出だ。
私の聞いた面白い話ランキングでも上位を変わらずキープし続けている。
「ふふ、どうだろうね?
あ、そう言えば私がソロになる可能性はあと二つあった」
「二つ?何だそれ」
「一つは私がシルヴァの望みを叶えるのに飽きたとき」
「飽きたらポイかよ」
……人聞きが悪くないだろうか。
だがまあ間違いでもないので文句を言うことも出来ない。
さて、そろそろかな?
チラリと前の二人を確認する。
実は私が二つの可能性を思い出したのは偶然ではない。
目の前でちらちらとシルヴァの方を気にしつつ些か不自然に歩くレンに気がついたからだ。
「そしてもう一つは」
何となく彼女のやるだろうことは分かる。
随分とまぁ古典的な手だと思いはするけれど、まあそれによってシルヴァがどうするのかに興味があるから楽しみなのだ。――きた。
「シルヴァに恋人が出来た時だ」
「あっ、」
レンが足場である氷で滑った――ふりをして、シルヴァの方へ倒れる。
っふふ、あは、やば、思わず噴き出しそう。
このままいくとシルヴァに真横から抱きつく形で転倒は防げるかな。
まあ抱きつくことが目的なんだろうけど。
さて、我が弟子はどうするのかな?
「……触るな」
と思って見ていたのだけど、何だこれ。
同じく何かするつもりだということは察知できていたのだろう、シルヴァは無駄のない動きで一歩下がって衝突(抱きつき攻撃とでも言うべきか)を避け、けれど一応の護衛対象が橋から落下しないようにその服の襟を掴んで救出(と言えるのかな、これ)した。
結果的にレンは襟首を掴まれ何とも言えない体勢で支えられていることになったわけで、まあ、一言で言えばとても間抜けな状態だ。
うーん、シルヴァが小さかった頃、私があんな風に彼を持っていたことが原因だろうか。
でも皆に注意されまくったからすぐ止めたんだけどな。
「しっかり歩け。邪魔」
「………!………!!」
やはり襟首の一点で持ち上げレンをしっかり立たせると、シルヴァはすたすたと再び歩き出す。
まあこれのせいで遅れたしね。
最前列の二人はなんとなく予想できていたのか、ちらりと振り返っただけですぐに進み始めていたし。
レンはと言えば同じく歩きながらも顔を真っ赤にして声にならない声を上げていた。
まあ、屈辱的だろうねぇ。狙ってやったのなら尚更。
そしてきちんと(?)立ち止まって二人が歩き出すのを待つ、という名目で今までの出来事を観察していた私達はと言えば、お互い噴き出しそうなのを必死で堪え、ただ一言呟く。
「………彼女は、なかなか出来なさそうだな」
「……私もそう思ったよ」
さて、そんな騒動からかなり経ってその日の夜。
日中は他に大したことは無かったから割愛だ。
まあ普段通りだったかな。
レンがたまに私に嫌味を言ってきて、それにシルヴァが声もなく怒ってそれを私が宥め、そして煌炎が苦労する横で焔火は興味なさそうに歩くっていう。
ただ今日は氷雨がいたから彼のやる気のない言葉でレンの私への怒りが逸れるということも何度かあった。
こういう所では役に立つ奴なんだよね、氷雨って。
そして魔物との遭遇はゼロ。
これは氷雨と私の術で地上を歩かなかったおかげもあるんだけど、たぶん討伐予定の魔物の群れのせいだろう。
この辺りに縄張りをおく魔物がそろって怯え隠れるか、その群れに入って恩恵にあずかろうとしているんだろうな。
だからこそ魔物の出没が少なくなったんだと私達三人は読んでいる。
まあそんな感じで特筆すべきことも無い道のりだったんだけど、今は違う。
何と言っても明日の予定についてSSだけでなくシルヴァや焔火、そしてレンも加えての話し合いだからね。
「――そういう訳で、俺達三人は明日討伐依頼が入りましたので貴方達三人の方は北要塞で大人しくしていて下さい。
北要塞に暮らす民にも明日の午後には要塞を囲う壁の外に出ることを如何なる事情があったとしても禁止していますから、貴方達は彼等の相手でもしているといいでしょう。
それに群れから離れた魔物が要塞を襲うとも限りませんし」
説明を終えて、テーブルの端――俗に言うお誕生日席に座る煌炎は手元のグラスに入ったワインを飲み干した。
彼の前に置かれた皿はもう空だ。
そこに私が斜め隣の位置から亜空間に仕舞い込んでいた食料をのせてやる。
しかしそれもすぐに彼の体内に消えたため再び動作を繰り返し――これ、何十回目だ。
うーん、やさぐれてるなぁ。
どうせ三人がこの説明で納得しないことを彼も分かっているんだろう。
だからって暴飲暴食はどうかと思うけれどね。
私達SSが受ける依頼は機密性が高いから、例え同じパーティーメンバーだとしても内容を打ち明けることは少ない。
だから今回の説明でもSSランクの魔物の群れの討伐依頼が来たとしかシルヴァ達には告げていなかったりする。
群れのリーダーが神喰らいなんて、最重要機密もいいとこだよね。
これが外に漏れたら世界中が大混乱だ。
ただまあもしもの事態に備えて“王国”、“帝国”、“教国”という三国の上層部には通達済み。
“聖国”は鎖国状態だから通達できないんだけどね。
あ、後でセイに連絡を入れておいた方がいいかな。
私が討伐に参加するというのも同じく通達で知らされるはずだから、心配しているかもしれないし。
――おっと、話がそれてしまった。
まあそういう訳で本当ならこれ、討伐依頼があることもおいそれと話して良い事じゃないんだけど……そこは総代に許可をもらっている。
少しでも話さないと説明できないし、既にある程度バレてたようなものだから仕方ない。
ただ三人以外には絶対に知られることがないようにというお達しなので今日の夕食は個室を用意してもらって食事を出させたら宿の者も退室させ、更に部屋全体に結界を張った上でのものだ。
「は?納得できるかよ。煌炎、俺も参加させろ」
そしてやっぱり抗議の声が上がった。
まずは焔火らしい。
あーぁ、昨日の事で少しは懲りたかと思ったのに。
私はつい正面に座る氷雨と目を見合わせて肩を竦めた。
お互い思うことは同じだ。
曰く、怖いもの知らずの若気の至り。
「却下です。邪魔ですから」
「……」
「何を黙っているんだ焔火。
叔父上、私も討伐に参加します。
人手はあった方がいいでしょうし、足手まといになどなりません」
次はレン。こっちもまぁ、昨日の煌炎の言葉を聞いていたのかな?
「人手は必要ありません。
俺と氷雨と、何より宵闇がいますから十分すぎる程です。
だからこそギルドも討伐に対しては俺達以外の人員を排し、北要塞の警護などに回したんです。
そしてレン、自分の実力がまだ分かっていないようですね。
貴女がこの中で最も邪魔で足手まといになる弱者なのだと、せめて自覚してくれれば俺としても楽なんですが」
「……っ!わ、たしが、そんなに弱いと言いたいのですか!?」
「そう言っているでしょう」
机に勢いよく手を置いて立ち上がった姪に対し、煌炎は不快そうに顔をしかめた。
わぉ、毒舌。というか慇懃無礼ってこういうことだろうか。
そして更に彼の皿に料理を、っと。
……別に、ふざけている訳ではないのだ。
竜族は魔力を持たない代わりに強靭な肉体と炎を操る能力を持つ。
そしてそれらの原動力となっているのが食事。
だからこういう大きな依頼の前に、煌炎は有り得ないくらい食べる必要がある。
そうなると店一軒では足りなくて、結果的に今のように私が亜空間から直接食べ物を彼にやることもしばしば。
おかげで私が大切に亜空間の中に仕舞い込んでおいた秘蔵の極上グルメ(亜空間の中は時が止まってるし真空設定してあるから腐ったりしないのだ)がこの夕食の時間だけですっかり無くなってしまいそうだ。
ちなみにエースが大食らいで、闇ギルド内でもつまみ食いの犯行をすることが多いのもこれが理由。
彼もハーフとは言え立派な竜族の端くれだし。
「大体、ただの人間であるこの女が私より強いなどあるはずがありません!」
お?私の話になってしまった。
「種族による差別はよくないですよ?
レンさん、貴女が仮にも王族ならね」
そう忠告してあげたのだけど、むしろ逆効果だったかな。
それに彼女の言葉には少し間違いがある。
私は人間ではなく限りなく人っぽい何かだ。
でも人間でも十分強い存在はたくさんいるし、まあいいよね。
「知ったような口を利かないでもらえないか」
「確かにまぁ、私は貴女の事など何一つ知りませんが……
王族というものはその一言に力が宿るのですよ。権力という名の力がね。
だからそのような差別的な発言は止めた方がいい。
要らぬ騒ぎに繋がるかもしれませんよ?」
実際私の知るまともな権力者は皆、発言にかなり気を遣っている。
些細な一言が争いに繋がって、その被害をこうむるのは自分であり支配される側の人間でもあるから。
だが彼女にはまだそこまでの事に思い至るだけの頭がないらしい。
ただまあ、この先それだけの知性を彼女が持てるのかどうかが既に怪しい所だけれど。
そんな彼女は小首を傾げて見せた私に対し柳眉を逆立て、周囲に熱気すら漂わせてこちらを睨んだ。
おやおや、実力行使にでも出るつもりだろうか。
だったらそうだな、その自分の強さに対するプライドとやらを粉々にしてやってもいいけれど。
それか明日、討伐が無事終わるまで身動きできない様にさせるとか。
「……やけにそう、王族王族と煩いのだな、貴女は。
そう言えば確か、貴女は“王国”の王太子と懇意にしているのだったか」
……何を、言うつもりだろうね、彼女は。
無言で僅かばかり眉を寄せた私に何を思ったか、彼女は更に言葉を続ける。
「神童と名高い王太子だ、さぞご立派なのだろうと思っていたが」
「……レン、止めなさい」
苛立った私の気配を察知して煌炎が静止をかける。
まあその判断は正しいんじゃないかな。
あんまり不躾な事を言われたら、つい怒ってしまいそう。
氷雨なんて既に微かに臨戦態勢をとっているし、薄情な男だ。
「叔父上は黙っていて下さいませんか?
今私は宵闇と話をしているのです」
「……そうだね。
煌炎、少し黙っていてよ。
レンさんが一体何を言いたいのか、私としても気になるところだから」
でもさ、やっぱり聞き捨てならないよね。
彼女は明らかにセイを貶めるような意図で話をしている。
「……っ、ですが」
反論しかけた彼も一度睨めば口を噤む。
うんうん、上位者には逆らわない、上位者を煩わせることはしない。
竜族って素晴らしいね。
「それで?レンさんは何が言いたいんでしょう?」
「貴女のような者と親しい仲などと、“王国”王太子もたかが知れていると言いたいのがまだ伝わっていないのだな。
本当に、こんな人間に立太子式の祝福を施された王太子には同情する」
―――殺すか。
「【縛れ、その全てを以って!】」
動かしかけた手は、氷の戒めによってテーブルから離れることは無かった。
………邪魔が入るとは思わなかったな。
「氷雨。いい度胸だね」
「……ははっ、だよなぁ。俺もびっくり。
でもんな怒んなよ。皆怯えてるぜ?」
「いいじゃないか。殺させてよ。
ソレ、セイを馬鹿にしたんだよね。
――あぁ、本部では言うのを忘れていたか。
直接的な手出しは勿論だけど、こういうのも私は許せないって」
ここの世界の人間がセイをそうして同情の目で見るなんて、本当に許しがたい事だ。
これは私の勝手な感情だけれど、私だからこそ持つことを許されるそれでもあるって、私はちゃんと分かってる。
それにここで私がコレを殺したとしてセイは怒らないだろうし、これで“帝国”と関係が悪くなるなら“帝国”ごと滅ぼす道を私は選ぶ。
そもそもガイオスは馬鹿じゃないから、私がどうするかきちんと先読みして“王国”に対して何か圧力をかけたりはしないだろう。
コレの死も、もみ消したりするんじゃないかな。
だったらやっぱり問題ないと思う。
「わかった、それも覚えとく。
でも今日の所はおさえようぜ?煌炎もそう思うだろ?」
「……そうして、いただけると」
「おさえる?許すという事?コレを?私が?」
「っは、はは…そうしてくれると、俺らとしても助かるんだけどな」
気に入らないな。どうして私が譲歩するんだ。
そのままにしていた氷の戒めを一睨みで粉砕し、髪を耳にかけ瞳を眇めた。
氷雨はギョッとしてすぐさま私から距離をとる。
「何、どうしたのかな?
それに君もさ、私より弱いなんてありえない、とか大口叩いていたじゃないか。
じゃあ何かしてみたら?ほら、ここで何もせずに見ていてあげるから、やってごらんよ」
椅子に座ったままガタガタ震えるのみのソレに改めて目を向ければ、小さく悲鳴が上がった。
なにそれ。急に怯えて、面白くもなんともないな。
そんなの存在する価値も無いって思うの、私だけじゃないと思うんだよね。
「……ルナ」
「……何?今度は君?」
再び伸ばしかけた手を止めたのは、話し合いの間私の隣でずっと沈黙を保っていたシルヴァだった。
震える手で私のそれを掴む彼の顔は白く、相当怯えているであろうことがわかる。
まあこれ、結構遠慮してないし当然か。
レンの隣に座っていた焔火などは既に椅子から立ち上がり、牙を覗かせ唸りながら最も私から離れた部屋の隅にまで移動している。
視線を向ければシルヴァはごくりと喉を鳴らしつつ、震える声で言った。
「もう、寝よう…?」
「………」
眉をひそめた私に周囲が息を呑むのが分かる。
「話し合いは、終わり。
この中で一番強いのはルナ。それはもう、皆分かってる。
だから皆ルナに従う。明日俺達は、討伐に参加したりしない。
……今日はたくさん歩いた。それに約束した。寝よう?」
彼の言う約束とは、今朝出発する前にした今晩はくっついて寝るというものだろう。
でもそれはレンを殺してからでも出来ることだ。
「確かに君とは約束したね。
でもそれは少し待ってくれる?一瞬で終わるから」
「嫌」
「……」
「血の匂いが体につく」
「つまり君も、私に怒りをおさめろって?」
「……最終的に、そうなると思う。
だって俺はルナに戦って欲しくないと望んでる。
討伐依頼は仕方ない。仕事だから。でも、これは違う。
……セイルートを馬鹿にされただけでルナがこれを殺したら、ルナはそれだけ心が狭いという評判がつく。
そしてそんなルナに守られているセイルートも、悪い評判が出回る。
俺はそれに対してどうとも思わないけど、セイルートの事でルナが嫌な思いをするのは嫌。
と言うか、そのせいでルナがセイルートのことばかり考えることになりそうな状況が嫌だ」
「……君はさ、こんなことをして私が君を捨てるとは思わないの?」
私の言葉にシルヴァは初めて不安と恐れに瞳を揺らした。
その薄墨に影が差し、じわりと涙の膜が張る。
「……少し怖いけど、でも、ルナはそんなことしないって俺が勝手に信じてる」
「ふーん。勝手に、ね……」
そういう、自覚はあるんだ。
変なの。分かってるなら止めるなんて馬鹿な真似、しなければいいのに。
それで捨てられる可能性を示唆されて泣きそうになるなんて、変な子供。
でも、その瞳が潤む様は見ていて気持ちのいいものでは決してなかった。
少なくとも過去の傷跡がじくりと痛むくらいには、私の心を波立たせた。
「………分かったよ、もう寝ようか」
「……!」
怒りと殺気を同時におさめてそう言えば、シルヴァだけでなく他の男三人も驚いたように私を見つめた。
レンは既に半分意識が無い状態だから反応は無い。
――あぁくそ。こういう風にシルヴァの持つ黒に流されるから、周囲が勘違いをするんだろう。
私がシルヴァを大切に思っているって、そんな風に錯覚するのだ。
本当に、どうにかしなければいけない。
「宵闇……よろしいのですか?」
「私は寝る。後の事は君達で勝手にしてよ。
我が弟子の言うことが正しいのなら私に皆従って、弱い三人は討伐についてきたりはしないんだろう?
じゃあもういい。セイをこんな価値のない屑に悪く言われただけで私が殺したら、セイが本当にその程度の人間だと思われてしまう。なら、私は何もしない」
「……たすかった…」
わざとらしくへなへなと椅子に座る氷雨は、どういう意味だ。
別に彼まで殺す気はなかった。
ただ少し痛めつけてやろうかなと思いはしたけれど。
煌炎も疲れたように息を吐いていて、焔火はまだ警戒しているのか怯えが抜けきらないのか警戒態勢のままだった。
そんな風に彼等を見つめていれば握られたままの手が軽く引かれる。
「ルナ、行こう?」
「……そう、だね」
シルヴァは満足そうな、それでいて盛大に不満そうな不思議な表情をしていた。
それに首を傾げていればすぐに膝裏を掬われ抱き上げられる。
「寝室まで運ぶ」
「別にいらないのだけど」
「俺がそうしたいから。それになんだかんだルナはこのままでいてくれるって、俺は知ってる」
「………ふーん」
本当によく分からない、変な人間。
オマケ:その後の会話
「………死んだかと思った」
「同感ですよ。焔火も、そろそろこちらに来たらどうです?耳と尾の毛が逆立っていますから、直した方がいいですよ」
「……くそ、化け物め」
「悪態つけるなら心配ないな。護衛対象は……あちゃー、気絶してるぜ」
「まあ予想はしていましたよ。自業自得なのでそのままでいいです」
「ひでぇ叔父上だな。ルナから庇ってもやらないで」
「それが竜族ですよ。あの力に怯えつつも惹かれ、服従してしまう。本能というやつは恐ろしいものですね。俺からすればむしろ貴方と明星の行動には呆れすら覚えます」
「ヒデェ。俺は姪の命の恩人だぜ?」
「それは貴方ではなく明星でしょう。……本当に、驚きですね」
「あぁ。まさかルナがあそこで怒りをおさめるなんてな。レンは殺されても仕方なかったし、それを止めた俺もシルヴァも、普通なら腕くらいもがれておかしくない状況だった」
「けれど宵闇はそうはせず、明星の制止で止まった。……俺としては、随分な特別扱いと思うんですが」
「でもそれ言うと怒るんだよな、ルナ。ヘタに突っつくと冗談じゃなく殺されそうだからそれもできねぇし」
「そうですね……それに彼女は黒に強い執着を持っていますから、明星が黒い瞳だということも少しは関係するのでしょう。“王国”の王太子も同じく黒の瞳だと聞きました」
「黒、ねぇ……まあそれだけでもなさそうだが、薮蛇だしな」
「俺達は静観するしかありませんね。ともかくこれ以上問題が起こらなければいいんですが…」
「今回は相手が相手だしな…」
「「はぁ……」」




