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限りなく人っぽい何かと銀と金  作者: 美羽
銀色の当惑
30/178

3-14

Side:Luna



どこか遠くから声が聞こえる。

少し困ったような、それでも私のためにどうにかしようと試行錯誤するようなそれ。

声は段々と近くなって、脳が言葉の意味を薄っすらと考え始めた。


「―――ナ、ルナ。起きて。一時間たった」


「……あ」


そうだ、今はゲームの最中なんだっけ。

そう認識すれば私の体はすぐに思った通りに目を開き外界の様子を感じ取ろうとし始めた。

本当に最悪な時を除いて、私の寝起きはいいのだ。


「起こしてくれたんだね。ありがとう」


「ルナの頼みごとなら、当然」


頭上で少し得意げにする可愛らしい弟子に礼を言って一撫でし、私はすぐに彼の膝から起き上がった。

時計を見れば丁度ゲームの開始から一時間。

ピッタリ言った通りの時間に起こしてくれたらしい。

そんな所もしっかりしていると言うか、無駄に細かいと言うか。

なんにしろありがたいので文句など言いはしないけれど。


「……さて、それじゃあジョーカーの所に行こうか。

あ、君は休めたりしたのかな?

彼女がここにいた方が君の調子も上がるなんてことを言っていたように思ったけれど」


「……ん。しっかり休めた。リラックスできた」


「そう。ならよかったね。それじゃあ行こう」


実際のところ私には他人に膝を貸している状態で休むことができて、かつリラックスができるという心理が全く分からないが、まあいいんだろう。

当の本人が言っていることなのだし。

そう脳内で納得しつつ、別室で相手方の様子を探っているはずのジョーカーの元へ向かう。

ここは私の魔術で作った空間だから、ある程度誰がどこにいるのか察知することができるのだ。

ただゲームの上ではズルになるためこの機能は敵に対して使わないことにしている。

それによると彼女はすぐ隣の部屋にいるらしい。


「ジョーカー、おはよう。皆の様子はどうだい?」


廊下に出て数秒後にノックと同時に部屋に入りそう言えば、驚いた様子もなく彼女がこちらに背を向けたまま答えてくれる。


「む、起きたか。あまり進んではおらぬ。

策を立てるのに時間がかかったようだな。

そなた達も見ると良い」


あれ、そうなの?

うーん、つい調子に乗って脅しすぎてしまっただろうか。

いや、でも楽しかったし仕方ない。

と言うかいい教訓になったはずだから問題ない。きっと。

ほんの少しの反省を即座に言い訳とも言えるポジティブシンキングで打ち消して、私は斜め後ろで不思議そうにするシルヴァを伴いジョーカーの傍へよった。

ついでに今彼女が行使している魔術について解説をしてあげよう。

うん、師匠っぽい。


「これは水鏡。君にも教えたことがあったよね?

水を張った台に魔力を流して、遠くの場所の映像を見られるんだよ」


「ん。教えてもらった。

便利だけど清浄な水が無いとできない魔術。

あと見たい場所の座標を知ってないと、ちゃんと映らない」


「正解だ。君は覚えたことを忘れないね。

強さもまあまあのものだけど、頭もいい」


流石我が弟子。

よく忘れそうになるけれど、彼もなかなかハイスペックだよね。

たぶん私自身とか私の知り合い(つまりセイ)とかの規格外さでそれが忘れられてしまうと言うか、いやまあ対外的には私よりもシルヴァの方が有名なんだけど、私と私を知る人間の中ではそうなってしまうと言うか。


「……ルナはほんに、弟子にはどこか甘いな」


うんうん頷いていたらジョーカーが呆れたように私達を見てきた。

そうかな?私はただ思ったことを素直に言っているだけだし、特に他意もないのだけど。


「まあよい。それでルナ、どうだ?」


「そうだねぇ。この様子だとここまで辿り着くのに数は半分かそれ以下になってしまいそうだ。

それにまだまだもう少し時間がかかりそうだね。

仕方がないから暇つぶしがてら、ここで見学するしかないんじゃないかい?」


妨害行為を行えばただでさえ手間取っているのが更に大変になってピーチじょ……この城での最終決戦が余計に味気ないものになってしまう。

かと言って逆に手助けするのも、こっちとむこう、両方の士気が下がりそうだ。

なら結果的に答えはひとつ、見学しかない。


「やはりそうなるか」


「君も一休みしてくるかい?」


「いや、問題なかろう。先程までもずっとあやつらの事を見ていたが、そなたの作った空間に戸惑う姿はなかなかに滑稽で愉快であったぞ」


まあこの世界にはないものだし、当然と言えば当然か。

私としても自分の作った似非ま◯男ワールドを皆がどんな風にクリアしていくのか興味津々だ(実は大乱闘スマッシュブ◯ザーズと迷ったけど、やっぱこれだよね)。


「じゃあ三人で愉快に観戦としようか。

……でもそうなるとこのままでは不便だね。

ジョーカー、少し術式をいじるよ」


今までは水盆に映されていた水鏡の魔術に少しだけ手を加えて、それを盆の上ではなく壁面へと移動させる。

あとすわり心地のいい椅子を三脚と、つまめるお菓子と飲み物各種。

気持ちとしては映画館だ。


「……水、急に増えた。

魔術で出した水は清浄とは言えないから水鏡には使えないのに」


「弟子よ、細かいことは気にしてはならぬ。

ルナはそういうものだ」


「それは、そうかもしれない…」


ちょっと、背後でかわされる会話は何なのかな。

いいじゃないか、居心地がよくなったんだから。

それに水は空気中の酸素と水素を合成すればいい。

手段としては魔術だけど、結果としてただの化学反応だからその水は水鏡に使用することができるのだ。

出来立ての水なんて、これ以上ない程清浄だろう?

まあこれを説明してもこの世界の人達には分からないだろうが。


「はい、文句や愚痴は聞かないよ。

色々準備したし、今は彼らの奮闘ぶりを応援しつつ楽しもうじゃないか」


何しろこちらがコントローラーを操作することなく進行していく赤い帽子がトレードマークの主人公のゲームなのだから、とってもレアだ。









***Side:Jack***




もうやだ、なにこれ帰りたい。


「た、たたた隊長!壁が、壁が迫ってきます!!」


「あのさ、僕の目は節穴じゃないんだからそんなもの見ればわかるって。

というかそんな馬鹿みたいな報告するならさっさと進みなよ。

言っとくけど僕、助ける気ないからね?」


「そんなぁー!


何故か迫ってくる壁から全速力に近い速度で走りつつ、所々で現れるカメだとかブロックだとか開いている穴をよけていく。

背後のハートに属する下っ端はすでに半泣きだ。

いいじゃないか、別に押しつぶされても死ぬことはないんだし。

それに比べて僕達幹部組はあんなこと言われちゃったんだから、城につくまでに脱落したらどうなることか。

考えただけでも異様な寒気と吐き気と胃の痛みを感じる。


ルナとジョーカー、ついでに弟子に対抗するための作戦をキングが考えるまでにかかった時間、約一時間。

これ、おかしいよね?冷静に考えて相手三人だよ?

それだけでこのゲームのクリアの困難さが如実に表れていると思う。

……うん、悲しくなるだけだしこれ以上はやめておこうかな。

ともかくキングは無事(?)作戦を立てられた。

現在それに基づいて僕達は下っ端を率いながら攻略を進めている。


まず、僕達は三つのグループに振り分けられた。

まとまって一つの道を進めば大きな罠や広範囲攻撃で共倒れになる恐れがあるから。

そのグループ分けは僕達幹部組のそれぞれの特性を活かしたもの。

僕らの中で一番の攻撃力、機動力を兼ね揃えるエースは各隊からそれぞれ十人ずつの実力者を率いる。

そして正真正銘真正面、つまりはルナとジョーカーが道として示したルートを直進する。

恐らくそれが一番の最短ルートで、かつ正式な道順だ。

そうすることで他の道から城へ向かう僕達が着く前に城の周りにあるかもしれない障害をあらかじめ取り払っておくこと、更に最短ルートということでエースを無駄に疲れさせないことができる。

それに対し魔術での攻撃、補助を得意とする後衛のクイーンは指揮官であるキング含め約半数の下っ端と共に右回りで城へ向かう進路をとった。

ジョーカーが空に描いた地図によると城とスタート地点との間には森があって、その中に入らずぐるっと迂回するには左回りより右回りの方が早いから。

自分の戦法で自在に動くことが出来るとは言え、一応キングは足が不自由な車椅子姿だからね。

そして残った余り物の左からの迂回は僕の担当。

一番長いし連れて行く下っ端の人数も少なくないけど、僕は単純な魔術攻撃以外に幻惑と空間の魔術で敵の目を眩ませ、戦わない(・・・・)戦い方ができる。

それを使ってできるだけ素早く城へ到着し、皆に追いつく予定だ。


………だけどまぁ、それもなかなか上手くいかないって言うか。


今僕達の右手には木々が生い茂る森が見えている。

ここを抜ければ目指す城はすぐ傍で、実際少し先の方では木が急に倒れたり黒い煙が上がったりと、たぶんエースのグループが戦っているんだろうなと察せられた。

それを見る限り少し僕達のグループは遅れをとっているみたいだ。

遠回りの道だし仕方ないけど、この位置に到達するまで僕の率いていた下っ端は三分の一が脱落してしまった。

キングの読みでは城に到達した時点でそれくらいの脱落者が出るということだったんだけど、甘かったみたいだ。

城はもう視界に映っているし、実際もう少しで着くんだろうけど……それまで何人残るかな、僕のグループ。

あんまり減らすと僕が怒られるんだよね、キングとクイーンに。


「ジャック隊長、前方にハテナボックスを発見しました!」


「……はい、今報告した君、行って」


「俺ですか!?」


だって僕関わりたくない。


ルナからのお説教(っていうのかな?)が終わってから静まり返ったその場をどうにかしようと、僕達幹部組はそこら辺の適当な奴にルナ曰くハテナボックスに攻撃しろと命令した。

だってあのままの空気で出発とか……士気まる下がりでしょ。

指名された奴は真っ青な顔で、まさに死刑宣告されたみたいな様子だったけど仕方ない。

皆のためだよね、皆のため。

それでまあそいつがボックスに短剣を投げたら…ボックスの色が変わった。

たぶんもう使えないっていう印か何かなんだと思う。

実際その後は何度攻撃しても何も変わらなかったし。

そしてボックスから出てきたのはキノコだった。赤いやつ。

それがボックスの上から落ちてきて攻撃した奴に触れた瞬間……そいつは有り得ないくらい巨大化してた。

いやもう、僕達としてはびっくりどころじゃないよね。

確かに大きな戦力になるかもしれないけどすごく目立つし、何よりそいつが身動ぎするだけで何人も踏みつぶされそうになるし。

ルナも使えるのか使えないのか分からないものを出すの、やめて欲しい。

ちなみに時間制限があるらしくて、そいつはしばらくしたら元の大きさに戻った。

それからグループごとに分かれてからも色々なものがハテナボックスから出て来たけど……正直どれも微妙。

緑のキノコは回復だからともかく、飛べるっていう羽は凄い距離の助走が必要で、更に特徴的な動きをし続けないと長く飛べずにすぐに地面に落ちる。

炎が出せるようになるという赤い花は確かにまあ出せると言えば出せるけど、すごく規則的に地面をバウンドする動きの炎じゃ避けるのも簡単だ。

狸は………かぶってるやつが哀れすぎて、もう僕何も言えない。


そして問題の、今見えているハテナボックスだけど……ん?迫ってきていたはずの壁がなくなってる。

敵はいないかと周囲を確認してその不自然さに気づく。

だって僕達が左回りの進路をとりはじめてからずっとあの壁はあったのに、こんな中途半端なところでなくなるなんて。

それにいつの間にか周りの景色が浜辺に変わっている。

周囲には呑気に横歩きする蟹がいくつも……え、冗談でしょ?


「っ、全員僕の周りに集合!」


もうこのゲームを始めて数時間が経過しているから、下っ端達もこの危険さを分かって来たみたいだった。

現に今も僕の急な指示に戸惑うことなくすぐさま必死の形相でこっちにやって来ている。

……うん、気持ちはわかるよ。


『ふふっ、なかなかいい指示じゃないか』


そして聞こえてきた、聞きなれたものよりも少し幼い声に僕の表情もすっと青ざめたと思う。

近くにいた下っ端がぎょっとしてるし。

振り返りたくない。あーもう下っ端おいて全速力で逃げたい……けど、それしたら怒られるから、できないし。

結局振り返るしかないんだよね、僕。


「……はは、奇遇だね。どうしたのこんなところで」


ルナの式神、だっけ。

彼女独自の術式で形作られた幼い彼女は、僕の返答に満足げに目を細めた。

うわ、なんか寒気。


『もうすぐ城に到着だからね。

ラスボスの前には中ボス戦、これは常識だよ』


「ごめん、言葉の意味がわかんないんだけど」


何、中ボスって。


『ああ、そうか。……それじゃあ君達に分かりやすく言ってあげよう。

式神(わたし)程度に勝てないのならこの先進む資格はないってことさ』


「……ちなみにちびルナは、本物に対してどれくらいの強さ?」


『そうだねぇ……三十分の一くらいだよ。

大丈夫、幹部である君が少し本気を出せば勝てるよ。

ただまあ君は第五位の位階だから、実際のところどうなんだろうな…』


その言葉に少しむっとする。

なにそれ、そんな風にみられるのは心外なんだけど。


『ふふっ、不満そうな顔をしている。

なら私を倒してルナに示してみればいいさ。

実際他の幹部も今まさにその最中だ』


「え、まさか全員に?」


『そうだよ。エースの所にはジョーカーを模した式神を、キングとクイーンにはルナとジョーカー二人分が。

……キング達の所はもうすぐ終わりそうかな。

彼等は連携が上手いから、二対二の戦いではこちらが思った以上の力を示してくれる』


やばい。だとしたら僕らも急がないと。

乗り遅れるし、そうすると既に下っ端を減らしすぎて怒られるのが確定なところに更に怒られるだろうし、最悪だ。

できれば僕と下っ端、全員でかかりたいけど……


『下っ端達は蟹の相手でもしておいで。

巻き込まれない様に注意しながらね』


だよねぇ。

ちびルナの周囲にわんさかいる赤、赤、赤。

百を超すような超大量の蟹。

目がチカチカしてくるんだけど。


「……おまえらは蟹の相手してて。

僕はちびルナやんないといけないから」


「が、頑張って下さい隊長!」


「大丈夫です、隊長はやればできる子!」


「いけます!たぶん!きっと!」


「お前らそれで応援してるの!?」


しかも子ども扱いするな!

文句を言いたいのを必死でこらえて(ここで反論するのが子供。…ここで反論するのが子供なんだ!!)下っ端達を散らせ、僕はちびルナに向き直った。

こうなったらササッと倒して、ルナを見返しつつあいつらにドヤ顔してやる。


『もういいかい?』


「待っててくれるなんて親切だね。

でも僕はそんな正々堂々としたことなんてしないから」


『勝つためなら何でもやるって?

……そうだね、私もだよ』


その瞬間、僕の周囲の砂が意志を持ちこちらへと襲い掛かってきた。

ちょ、待っててくれたんじゃなくてこの準備と油断させる作戦!?酷っ!!


『あっはははは』


「笑われるなんて屈辱。偽物のくせに」


そりゃまあ滑稽かもしれないけどさ!

そんな思いをわざとらしく浮かべた笑顔の裏に隠して応戦する。

砂なら当然、水でしょ。幸い腐るほどあるんだし、さ。

海水を風で巻き上げて体を包む。

ドーム状になった水は向かってくる砂の刃を辛うじて阻んだ。

ちょ、確かに急ごしらえだけど、それでもちょっと危ないってどういうこと。

三十分の一って言ってたよね!?


『少し海水が薄いところがあるよ?大丈夫かな?』


余裕そうな笑い声が響いて、補強が足りていない部分を確実に砂が攻めてくる。

しかも実際ドーム壊れそうだし。

自然界の法則まるっと無視してんじゃん。


『はい、破壊。……あれ?』


びちゃりと魔術が破壊されたことにより海水が乾いた砂に飛び散る。

でも残念、その中にもう僕はいないんだ。


『空間魔法を上手く使いこなしているようだね。

それに幻惑の魔法も使っているのかな?姿が見えない』


その通り。

水のドームが破壊される寸前、僕は空間魔法で亜空間に逃げ込んだ。

そこから別の入り口を開いてドームの外、ちびルナの死角に入り幻惑を発動、そうすれば彼女から僕の存在は完全に感じ取れなくなる。

……本物のルナだとたぶん、こんなあっさりいかないだろうけど。


「どうだ、ジャック隊長の得意技、補色!

ジャック隊長は魔術で自分の姿や気配を周囲に溶け込ませることができるんだぜ!」


「………」


『あ、そうなの?』


この馬鹿!!!!

すぐさまこちらへと向かってきた風の刃を寸前でかわし、仕方なく僕は擬態を解いた。

だってもうネタバレしたら使えないじゃん。ホントもうなんな訳?

ぎろりと発言した下っ端を睨めば、表情を輝かせていたやつは動揺したように僕とちびルナを見比べた。


「え?え??」


「それが分かったら居場所を突き止められるじゃんか!」


『あはは、ヒントをありがとう』


あの魔術はどんな手段で姿を消しているのか分からないから意味があるのだ。

敵を見失った相手がまず考えるのは、どこかに姿を潜めていること。

そして次に、自分の視覚に対して何らかの術を行使された可能性。

最後に今回僕がとった、敵自身の体に魔術で付加をかけた場合。

それらを考えどれが正解なのか戸惑う一瞬の隙をついて相手を攻撃するのがこの魔術の使い方なのに、なんでよりにもよって答えを暴露するんだよ!

正直これは子供だましだから魔力の残滓だとかを上手く辿ればすぐに僕の居場所はバレる。

チャンスは本当に一瞬なのだ。……台無しにされたけど。


「す、すんません…」


「まあいいけどさ……こんなの序の口だしね。

ちびルナには僕のもっと凄いとこ見せなきゃいけないもん」


『へぇ?一体何を見せてくれるんだい?』


少しカッコつけたのに、全然余裕とか。

確かに余裕なくしたルナとか想像できないけどさ。

ふん、まあいいや。今から見返してやるから。

今度は急ごしらえでも子供だましでもない、正真正銘僕のちょっとした本気を見せつけるために体内の魔力を練り込む。

そしてそれを魔術として放出しようとして―――


「た、たたたたいちょーう!どいて下さい!!」


「……え?」


何て言うか、虹色に輝きながらこっちに有り得ない速度で向かってくる下っ端その一に呆気にとられて、素直にその場をどいてしまった。

僕とちびルナはちょうど真正面に向かい合っていて、だから僕がどいたことで結果的にその一はちびルナの方に向かって行って、すぐに気づいた彼女は迎え撃とうとし――顔をひきつらせた。


『ちょ、スターって!』


「わあああああ!!」


そのまま下っ端その一は固まったちびルナと衝突し、ボフン、という音と白い煙とともに彼女の姿は消え去って空からひらひらと四角い紙が降ってくる。

確かあれ、ルナが式神を作る時に使ってた…………え、もしかして、倒した?

下っ端その一は相変わらず走り続けたままで、でもその足は確実に敵のいる方向へ向かっている。

……何なの、これ?

思わず先程のちびルナのように顔をひきつらせ事情をいかにも知っていそうな、微妙な顔をしている別の下っ端を見つめる。


「……あの、隊長…」


「あれはどういう状況?」


「………その、ハテナボックスから金の星が出てきまして…ああなりました」


ああ、そういうこと。

またあの役に立つんだか立たないんだか分からないボックスのせいなわけね。

どっと疲労感が襲ってくる。

いや、だってさ、僕、結構やる気出してたんだよ?

ちびルナ倒して自分もちゃんと幹部なんだってとこ見せつけようと思ってた訳で。

だって自分でもそれらしいとこルナに見せられた覚えないって分かってるし。

それを全部その辺の下っ端に持ってかれるとか、さぁ。


「……しんど」


凄く疲れた気分なんだけど、なにこれ。




***




「……っぷ、あはははは!

お、面白い……まさかここでスターが出てくるなんて、ふふっ、あの下っ端、もってるね…!」


まさか過ぎだろう。

しかもジャックがさりげにカッコつけて大技っぽいの出そうとしてたところなのに、それ台無しだし、終わってからの哀愁漂う姿がまたなんとも…


「……ルナよ、そう笑ってやるな」


「き、君こそ今にもふきだすの堪えてる顔でよく言うよ…ふふっ」


「…………二人とも、ちょっと酷い」


おっと、シルヴァにドン引きされてしまった。

いけないいけない。

ゲームってことで少し悪いやつよりの思考になってると言うか、いや、嘘だけど。

でも面白いんだから仕方がない。


「――まあ、これで全ての中ボスが撃破されたわけだから、もうすぐここに彼らがやってくるね」


うーん、ニヤニヤが止まらないなぁ。

ジョーカーも似たような顔をしている。

シルヴァはそんな私達への対応に困っているみたいだけど。

でも問題ない。そろそろ真剣モードになるしね。というわけで。


「私達もそろそろ作戦を立てようか」


健気に頑張る部下達を歓迎してやらないといけないからね。




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