1☆
仕事はある。
金もある。
趣味は大してない。
友だちはいる。
恋人は、いない──きっと、これからも。
欲しいような、いらないような。面倒くさいような、さみしいような。
最終的にはお金で解決だなあ。会いたいときだけ現れてくれる、都合のいい彼氏。お金払って雇えるもんなら雇うっての。
夜中のコンビニのATMでお金を下ろす。銀行に行くヒマもない。そういえば来週は同級生の結婚パーティーがある。少し多めに下ろしておこう。わたし、ちゃんと祝福できるかな。そんなことを考えながらも、帰り道には少し用心する。こんなときに「金を出せ」なんて言われたらこわいよね。けど、ほんとに必要なんだったら支援もやぶさかではないかなあ、なんて。
「おねえさん」
たとえばさ、それが若くてかわいい男子だったらメシのひとつもおごってやろうというもんだよね。
「おねえさんてば」
「…わたし?」
コンビニを出て少し歩いたところで、そんな声に呼び止められた。
「そう、おねえさん。悪いんだけどさ、金貸してくんない?」
街灯に浮かぶ顔は、だいぶ年下の男の子。わたしはなんであんな返事をしたんだろう。よっぽど疲れてたんだろうか。今週は毎日残業マックスだったし。
「いいよ、あげる。その代わり私の恋人になってくれない?」
いいや。理由はあとで考えよう。