年下の君との出会い
図書館は今日も静寂に包まれている。パラパラと本のページをめくる音、テスト勉強しにきている学生の筆音が僅かに聞こえてくる。
大学2年生の春からここ、明星図書館にアルバイトをして半年。仕事内容には慣れていた。
利用者の大半は明星図書館の近くに住んでいる人達で、常連の利用者などの顔はもう覚えた。
「秋風さん!本棚整理をしてきてくれないかしら?」
パートの中川さんはカウンター内の本を整理しながら指示を出してきた。
「はい、わかりました。今日は歴史側の整理ですよね?」
バイトの制服である、緑色のエプロンのシワを少し伸ばしながら聞いた。
「そうよ〜、秋風さんは覚えも早くてとても助かるわ」
そう言いながら中川さんはせかせかと手を動かしていた。
「わかりました、いやいやお世辞はやめてくださいよ〜」
中川さんは私のお母さんくらいの年齢で、優しく頼れる先輩だ。
「お世辞じゃないわよ、でもほら早く。もうすぐ閉館作業にも入るから」
時計をチラっと見るともうすぐ17時だった。閉館時間も迫ってきており、利用者以外はもう私と中川さんだけだった。
窓から見える空の色もだんだんと深くなり始める。
「そうですね」
3階にある歴史の分類の本棚を見て回る。本がでっぱってたり倒れていたりしたら直す。淡々とこれを繰り返す。
しばらくして、だいたい本棚の背表紙が綺麗に並べられた。
「よし……これでいいかな」
綺麗に並べた本をみて、時計をみる。利用者ももう少なくチッチッという時計の音だけが鳴っている。
カウンターに戻ると、中川さんが少し困って考え事をしている様子だった。
「中川さん、そんなに考えてどうしたんですか?」
「それがねぇ、あの子、揺すっても全然起きないのよ」
中川さんが指をさした机の方を見ると、高校の制服のまま突っ伏して寝ている男の子がいた。
名札には「山吹」と書かれており、制服もここら辺の学校のだった。
「私が起こしてきます」
中川さんは優しいから強く起こせず考えてたんだろう。
「起きてください〜」
机をトントントンとする。山吹くんは起きない。もう少し声量をだして起こす
「や〜ま〜ぶ〜き〜くん起きて」
トントンとまた机をたたく。手が痛くなってきた。するとゴーンゴーンと図書館にある時計が鳴り響いた。閉館のチャイムだ。
「……あともう少しだけ……」
「山吹くん?!」
「……ん……あ……えっ……ってもうこんな時間!?あと、あんた誰だよ!」
山吹くんは驚いて起き上がった。センター分けであっただろう、髪型に寝癖がついて爆発している。
しかも、変な髪型だというのにイケメンとわかる顔立ちで目がぱっちりしていた。
「もう、閉館のお時間ですよ」
私は淡々と答えた。
「はあ、すみませでした、たくっ、耳元で騒ぐなよ」
山吹くんは頭を掻きながら言う。
「私は起こしただけです」
顔にシワがよった。
「まあまあ、2人とも」
中川さんは鍵を持っていた。
「もう閉めるから、出よう」
中川さんに続いて私たち2人は、急いで外へ出た。カチッと鍵が閉まったのを確認して今日のバイトは終わりだ。
「山吹くんも急に起こしてごめんね」
中川さんは一息ついた。
「いいえ……別に」
ぷいっと私からそっぽ向く。
「逆に私に感謝してもいいくらいでしょ?」
山吹くんの目を真正面から見ながら反論した。
やはり、二重が綺麗で横顔も整っている。まじまじと見ていたが、ふと髪の毛の方に目をやった。
「……ってフッフアハハハハ」
「なんだよ……」
「か、髪の毛がフッ、爆発っフハハハ」
改めて山吹くんの態度と髪の毛を照らし合わせるとおかしくて仕方ない。
「わ、笑いすぎなんだよ……」
山吹くんは少し耳が赤くなっていた。空の色も暗くなり、風も少しでてきていた。
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