第90話:『聖騎士の悟り。 ―奥義:次元断ち(三枚おろし)―』
お母さんの妄想から生まれた騎士フェニックス。
彼は「お母さんの家事」という名の暴力的なまでの完璧さに打たれ、それを「騎士道」として解釈。
町内会に「聖なる家事」を広めてしまいますが、お母さんにとっては「黒歴史の公開処刑」でしかありません。
女神として崇められれば崇められるほど、お母さんの羞恥心による破壊係数は上昇していくのでした。
「……パパ。町内の掲示板に『聖騎士フェニックスによる、魂の洗濯&大根面取り講座』っていう、やたらフォントの尖ったポスターが貼られてるんだけど」
リィナが下校途中に目撃したのは、漆黒の甲冑の上から「ひよこ柄のエプロン」を装備したフェニックス君が、近所の奥様方に囲まれている異様な光景だった。
「いいですか、皆様。汚れとは、己の心の迷い……。この『重曹』を振りかけ、因果の汚れを焼き尽くすのです! これぞ奥義――(聖技:ブレイブ・クリーン)!」
フェニックス君が包丁を一閃させると、田中さんの持っていた大根がコンマ数秒で「完璧な面取り」を施され、空中で宝石のように輝いた。
『リィナ。……彼は気づいてしまったんだ。己が生まれた「お母さんの妄想」の根源にある、凄まじい「家事への執念」こそが、宇宙最強の魔力であることにね。……(印:家事スキルの神格化)×(印:カリスマ主夫の降臨)。……よし。これで、町内会の家事レベルは一気に「神話時代」に突入したよ』
パパが指を鳴らすと、近所の家々から「シャキンッ!」「オオォォ!」という、野菜を切る音とは思えない咆哮が響き始めた。
「ちょっと、フェニックス君! 私の黒歴史を撒き散らすのはやめてって言ったでしょ! 恥ずかしくて外歩けないじゃないの!!」
お母さんが、フライパンを盾にして現場に乗り込んできた。
「主よ……案ずるな。貴女がかつて綴った『滅びの呪文(ゴミ出しのルール)』は、今や町を救う福音となった。……(印:カリスマ伝道)×(属性:お母さんへの崇拝)×(投げ銭:町内会費の免除)!」
フェニックス君が跪くと、集まった奥様方も一斉に「九条様(師匠)!」とお母さんにひれ伏した。お母さんは、自分の「痛い過去」が「聖典」として崇められている状況に、顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。
「……あーあ。お母さん、ついに『家事の女神』として宗教画とかに描かれ始めちゃったね」
「もう嫌! 全員、晩ごはん抜きよ!!」
お母さんの絶叫と共に、町中に「絶対空腹の結界」が張られ、神話化した家事ブームは一瞬で「夕飯の支度」という現実へと引き戻されるのでした。
第90話、ありがとうございました!
「重曹をホーリーパウダーと呼ぶ」センス、まさに黒歴史の産物(笑)。
お母さんが「師匠」と呼ばれて怒る姿は、もはや九条家の伝統芸能ですね。




