第9話:『空の上の不法侵入者。 ―チート無効化の領域―』
高度5000メートルの要塞に、運営の「デバッガー」が直接殴り込み!
あらゆるチートを無効化する絶対的な領域に対し、リィナが見せたのは「相手の力を利用する」という、さらなる理不尽な掛け算でした。
いよいよ、リィナvs運営の知恵比べが加速していきます。
「……なんか、空気が重いわね」
高度5000メートルの静寂。リィナが自室でスマホの充電(魔導式)を確認していると、部屋の温度が急激に下がった。
スマホの画面に、見たこともない砂嵐が走る。
「主よ、お下がりを! 結界の内側に、直接『干渉』が発生しています!」
アルヴィスが鎌を構えて飛び込んでくる。
それと同時に、リィナの目の前の空間が「バグ」のように歪み、一人の少年が現れた。
銀色の髪に、運営のロゴが入ったパーカー。手には「デバッグ用」と書かれた巨大なハンマー。
「対象名、九条リィナ。……君、やりすぎだよ。空を飛ぶなんて仕様にない」
少年がハンマーを床に叩きつけると、リィナが描いた「印」の輝きが、一瞬で色褪せて消えていく。
「【領域展開:デバッグ・ルーム】。この中じゃ、君の『掛け算』も、その騎士の魔力も、全部『ゼロ』だ。……大人しく消去されてよ」
ゼノンがスマホを操作しようとするが、画面は真っ暗なまま。
「クソっ、全機能がロックされてやがる! ボス、こいつ、今までの連中とは格が違うぞ!」
少年がハンマーを振り上げる。リィナは無表情のまま、それを見つめていた。
「……ねえ。私の能力が『ゼロ』になるのが、この部屋のルールなんだ?」
「そうだよ。運営に逆らえる存在なんて、この世界にはいない」
「……ふーん。じゃあさ、『ゼロ』に『ゼロ』を掛けたら、何になると思う?」
リィナが、能力を封じられているはずの指先で、少年の胸元に直接「印」を描いた。
その瞬間、少年の顔から余裕が消える。
「な……!? バカな、システムは完全に沈黙しているはず……!」
「あんたが封じたのは『私の魔力』でしょ? でも、これ……(あんたの絶望)×(あんたの恐怖)っていう『負の感情』を掛け算しただけ。私の力じゃなくて、あんた自身の力で自爆しなさい」
リィナが指をパチンと鳴らす。
瞬間、少年を包んでいた「デバッグ・ルーム」が、内側から爆発するように崩壊した。
「グアアアアアアアア!! 覚えてろよ……次こそは、完全にパッチを当ててやる……!!」
少年はノイズと共に霧散し、消えていった。
リィナは乱れた前髪を直し、ため息をつく。
「……もう。夜中なんだから、静かにしてほしいわよね」
チートを封じられても「掛け算」の概念だけで勝ってしまうリィナ。もはや彼女自身がシステムのバグそのものですね。
しかし、少年の残した「パッチを当てる」という言葉。次なる運営の策とは……?




