第85話:『ダブル・ママ。 ―鏡合わせの主婦、雑巾がけの果てに―』
「自分こそが最強の主婦」と信じて疑わない二人のお母さん。
掃除の腕前で火花を散らしたものの、最終的には「特売情報の格差」を埋めるために手を組み、マルチバース規模の「買い物同盟」を締結しました。
お母さんが二人になれば、家事は二倍速く、食費は二分の一に。九条家の家計は、次元を超えて最強の黒字へと突入したのでした。
「……パパ、見て。カセットコンロの火力が『次元の壁』を焼き切っちゃったみたい。目の前に、うちの玄関がもう一個あるんだけど」
リィナが宇宙船(カセットコンロ仕様)の助手席で特売チラシを眺めていると、時空の歪みの先から、全く同じエプロンを締めた「もう一人のお母さん」が、全く同じ買い物カゴを持って現れた。
「あら、不法侵入かしら? うちの庭の芝生、今朝刈ったばかりなんだけど!」
「なんですって? こっちこそ、うちの玄関の前に勝手に宇宙船を停めないでちょうだい!」
二人のお母さんが、お互いの(神具:割烹着)×(属性:絶対防衛)×(印:主婦の意地)を火花散らして見つめ合った。
『リィナ。……カセットコンロの出力が「隣町」ではなく「隣の宇宙」にショートカットしてしまったようだね。……(印:存在の重複)×(印:家事スキルの同期)。……よし。これで、二人は互いの『掃除の磨き残し』が見えるようになったよ』
パパが指を鳴らした瞬間。二人のお母さんは、同時に相手のリビングの「テレビの裏側のホコリ」を指差した。
「……甘いわね! (お母さんの掃除術:極)×(印:静電気除去)×(強制:ピカピカ)!」
二人が取り出した雑巾から放たれた(衝撃波)×(属性:ハウスダスト消去)×(印:二度拭き)が激突。
衝撃で次元の壁が剥がれ落ち、宇宙中の汚れが浄化される「聖なる洗剤の雨」が降り注いだ。
「……あーあ。お母さんが二人になると、世界が清潔すぎて無菌室になっちゃう」
リィナが呆れていると、二人のお母さんはいつの間にか雑巾を置き、お互いの「特売チラシ」を見せ合い始めた。
「……あら、そっちの世界では卵がパック98円なの?」
「ええ、でもこっちは牛乳が150円よ。……どうかしら、今日だけ『買い出し提携』を結ばない?」
「いいわね、それ! (印:宇宙間・主婦連合)×(印:バーゲン情報の共有)×(投げ銭:異世界のポイントカード)!」
最強の敵(自分)と和解したお母さんたちは、次元の壁を跨いで「最も効率的な買い物ルート」を確立。宇宙船の燃料を分け合いながら、二つの世界を股にかけた大移動を開始した。
第85話、ありがとうございました!
「お母さん vs お母さん」という、銀河が滅びかねないカードを「ポイントカードの共有」で解決する平和的(?)な結末(笑)。
二人でチラシをチェックする姿は、ある意味でどの宇宙の脅威よりも恐ろしいですね。




