第84話:『火力の限界突破。 ―暗黒物質(ダークマター)は、弱火でコトコト―』
宇宙最強のエネルギー・暗黒物質をキッチンに持ち込んだバイト君たち。
しかし、お母さんにとっては「卵を蒸発させる欠陥品」でしかありませんでした。
宇宙船の動力源をカセットコンロ並みに弱体化させるという、物理学への冒涜的なお仕置き。
九条家のキッチンでは、今日も「宇宙の真理」よりも「理想的な半熟加減」が優先されるのです。
「……パパ、見て。キッチンから『事象の地平線』みたいな黒い渦が溢れ出してるんだけど。今日のお昼、穴子丼だっけ?」
リィナがリビングで宿題(※時空計算)をしていると、台所からキィィィンという高周波の音と共に、宇宙最強の皿洗いバイト(元・暴食卿)たちが誇らしげな声を上げた。
「九条様! 皿洗いの礼に、このコンロを改造しました! 銀河の心臓『暗黒物質』を直結した、出力:1000兆ギガワットの超次元コンロです! これで宇宙一速くお湯が沸きますぞ!」
「ちょっと! 何勝手なことしてるのよ! 麦茶を沸かすのにビッグバン級の熱量なんていらないわよッ!!」
お母さんが、煙を吐くキッチンに**(神具:鍋つかみ)×(属性:耐熱100%)×(印:火の用心)**を装備して突入した。
コンロの上では、目玉焼きを焼こうとしたフライパンが、あまりの高温に蒸発して「純粋な素粒子」に分解されていた。
「これじゃ卵が焦げるどころか、存在そのものが消滅しちゃうじゃない! (お母さんの節約)×(印:カセットコンロのぬくもり)×(強制:出力制限)! 宇宙船のエンジンだろうが何だろうが、うちでは『イワタニ(カセットコンロ)』の精神でやりなさい!!」
お母さんがハタキをコンロの基幹部品(銀河の核)に叩きつけた瞬間、暗黒物質の奔流は「シュゥゥ……」としぼみ、ただの「オレンジ色の優しい炎」へと去勢された。
『リィナ。……お母さんは宇宙船のメイン動力源を、無理やり「カセットボンベ1本分」の出力に書き換えてしまったね。……(印:物理法則のダウングレード)×(印:燃費の向上)。……よし。これで、銀河を滅ぼすエネルギーも、今夜の湯豆腐を温めるためだけに消費されるよ』
パパが指を鳴らすと、豪華な宇宙船のエンジンルームからは「カチッ、ボッ」という、聞き慣れた点火音が響き渡った。
「……あーあ。最新鋭の恒星間航行船が、一瞬で『キャンプ用コンロ』にされちゃった」
「いいのよ、火力なんて『中火』が一番使い勝手がいいんだから! ほら、バイト君たち! 卵がもったいないから、作り直しよ!」
お母さんは、肩を落とす宇宙人たちに新しい卵を渡し、平和な「カチカチ」という音の中で昼食の準備を再開するのでした。
第84話、ありがとうございました!
「1000兆ギガワット」のコンロをハタキ一つで鎮めるお母さん(笑)。
銀河を旅する宇宙船が、カセットボンベの「カチッ」という音で動くようになるシュールさはたまりません。




