第8話:『村、浮上。 ―空飛ぶ要塞都市レガシー―』
「来るのが面倒なら、行けない場所へ行けばいい」。
リィナの超理論により、村はついに大地を離れ、空飛ぶ要塞都市へと進化を遂げます。
地上から隔離された「0.1秒の世界」は、もはや誰にも手出しできない聖域となっていくのですが……。
「……よし。これで、うるさい隣人も来られないわね」
リィナは村の中央広場で、没収したばかりのバレンシア王国の国宝――巨大な「魔力結晶」を眺めていた。
彼女の指先が、流れるような動作で空中に巨大な幾何学模様を描き出す。
「ボス、何してんだ? まさか、その魔力でまたゲーム機増やすんじゃねーだろうな」
警備員のゼノンが、呆れたように尋ねる。
「違うわよ。……地面に置いておくと、いちいち王様とか魔王とかが来て面倒くさいでしょ? だから、物理的に距離を置くことにしたの」
「距離を置く? まさか……」
「(印:反重力推進)×(印:空間隔離)×(知識:超弩級浮遊要塞)。――いっけぇ」
リィナが地面を強く踏み抜いた。
ゴゴゴゴゴゴォォォォン!!
大地が悲鳴を上げ、村の境界線に沿って深い亀裂が走る。
次の瞬間、リィナの村は周囲の大地を切り離し、数千トンの土砂を伴って垂直に浮上を開始した。
「う、うわぁぁぁぁ!浮いてる! 村が空飛んでるぞ!!」
ゼノンが叫び、村人たちは窓から見える景色が遠ざかる様子に腰を抜かす。
「アルヴィス。高度5000メートルで固定。周囲に光学迷彩と自動迎撃システムを展開しといて」
「……御意。もはや『村』という規模ではありませんが……。主の平穏のため、完璧な要塞に仕上げましょう」
雲を突き抜け、太陽に最も近い場所へ。
地上には、ぽっかりと巨大なクレーターだけが残り、バレンシア王国の騎士たちは呆然と空を見上げるしかなかった。
「……ふぅ。これで静かになった。さて、ネットの続きでもしよっと」
リィナは、空に浮かぶ自分だけの「帝国」で、再びスマホを取り出した。
第8話、ありがとうございました!
ついには村ごと空を飛ばしてしまったリィナ。
高度5000メートルにWi-Fi完備の要塞……。もはやリゾート地ですね(笑)。
しかし、この「目立ちすぎる行動」が、運営のさらなる逆鱗に触れることになります。




