第77話:『超次元すべり台。 ―対象年齢:全宇宙、着地点:未定―』
赤ちゃんに戻されたタイムパトロールによる「粘土工作の反乱」。
町全体が銀河鉄道の夜のごとく空へ昇りかけましたが、お母さんの「お片付け」という最強のしつけにより、全ては無に帰しました。
どんなに高度な科学技術も、お母さんの「門限」と「片付け」のルールを破ることはできないのです。
「……パパ、町内の空に『巨大なウォータースライダー』みたいな虹が出てるんだけど。あれ、保育園の方向だよね?」
リィナが庭でドングリを数えていると、近所の「たんぽぽ保育園」の園庭から、物理法則を無視してうねり狂う黄金のレールが空へ伸びていた。
そこを滑っているのは、ランドセルを背負った小学生でも、散歩中の犬でもなく、町内会のゴミ収集車や電柱、さらには「道端の地蔵」たちだった。
『リィナ。……例のタイムパトロールの赤ちゃんたちが、お昼寝の時間に「工作用の粘土」を量子配列して、重力制御装置(滑り台)を作ってしまったようだね。……(印:慣性の消去)×(印:無限加速)×(投げ銭:保育士さんへの胃薬)。……よし。これで、町全体が「アトラクション」として宇宙に放り出されるまで、あと3分だよ』
「ちょっとパパ! 洗濯物を取り込もうとしたら、ハンガーごと空に吸い込まれたわよ! 誰があんな所に滑り台作ったのよ!!」
お母さんが、飛んでいくシーツを追いかけてベランダから飛び出してきた。
その手には、(神具:物干し竿)×(属性:絶対停止)×(印:お片付けの掟)が握られている。
「あんたたち! 遊びは、部屋の片付けが終わってからにしなさいッ!!」
お母さんが物干し竿を空に向かって一閃した瞬間。
(お母さんの雷)×(家庭のルール:門限遵守)×(強制:重力再起動)が炸裂。
空中に伸びていた「超次元すべり台」は、一瞬でおもちゃ箱サイズの「ただの粘土」に圧縮され、吸い込まれていた町内会の備品たちが、元の場所にパズルをはめるようにストンと着地した。
「……うぅ、バブー(物理学的にありえない)……」
保育園の砂場で、粘土を捏ねていた元・時空エリートたちは、お母さんの「主婦の眼光」に射すくめられ、泣きながら粘土を丸めてお片付けを始めた。
「よし! リィナ、パパ! 騒ぎが収まったから、今のうちに夕飯の買い出しよ! セールが終わっちゃうわ!」
お母さんは、町が宇宙に消えかけたことなど微塵も気にせず、特売チラシを手に走り出した。
第77話、ありがとうございました!
「おしゃぶりをくわえながら重力制御をする」という、エリートたちの意地(笑)。
結局、お母さんの物干し竿一本で全てが「元の場所」に戻る安定感、これぞ九条家です。




