第75話:『間取り別・時代格差。 ―リビングは白亜紀、トイレは超未来―』
プリン一つを救った代償は、家全体の「時空崩壊」でした。
リビングは恐竜の遊び場、トイレは銀河系の叡智が集結したハイテク空間。
しかし、お母さんにとっては「大根が早くおろせるかどうか」が、時代の正しさを決める基準なのです。
パパが設定した「時代別・間取り」は、意外にも家族それぞれのニーズに(偶然)合致してしまったのでした。
「……ちょっと、パパ。リビングにティラノサウルスが入り込んで、私のスリッパ食べてるんだけど」
リィナが学校から帰宅してリビングのドアを開けると、そこは鬱蒼としたシダ植物が茂る「白亜紀」のジャングルに変貌していた。巨大な肉食恐竜が、ソファを枕に昼寝をしている。
『リィナ。……昨日のプリン回収(過去改変)の揺り戻しだね。……家全体の「時間軸」がバラバラに千切れてしまった。……(印:各部屋の時空固定)×(印:内装の時代考証)。……よし。これで、部屋を移動するたびにタイムトラベルが楽しめるよ』
パパが指を鳴らすと、家の中はカオスな「地層」のような構造になった。
「パパ! 呑気なこと言ってる場合じゃないわよ! トイレに行こうとしたら、便器が浮遊してて『思考読み取り式・全自動洗浄モード』とか喋りだして、恥ずかしくて使えないじゃない!」
お母さんが、銀色に輝く「超未来」の廊下から、レーザー光線の手すりを掴んで滑り込んできた。
どうやら、お母さんの聖域であるキッチンは「江戸時代」に先祖返りしており、ガスコンロが「竈」に、冷蔵庫が「氷室」に書き換わっているらしい。
「リィナ、あんたの部屋はどうなってるの?」
「……私の部屋? 窓の外に『空飛ぶ車』が走ってるから、たぶん300年後くらいじゃない? おかげでWi-Fiが『量子通信』に進化して、ゲームのラグがゼロだわ」
リィナが自分の部屋のドアを開けると、そこにはホログラムのAIメイドが控え、ベッドは雲のような反重力素材で浮いていた。
「(印:時代統合)×(印:お母さんの竈に火入れ)×(投げ銭:ティラノサウルスへの特大ガム)」
リィナが指を鳴らすと、リビングの恐竜はおとなしく庭(石器時代)へと移動し、お母さんのキッチンには「未来の全自動調理器」と「江戸の火加減」が絶妙にブレンドされた、超ハイブリッドな調理環境が整えられた。
「……まあ、この『全自動・大根おろし器』は便利ね。許してあげるわ」
お母さんは、未来のテクノロジーで江戸の献立(サンマの塩焼き)を作り始め、九条家は「歴史の交差点」として、今日も騒がしく夕飯の時間を迎えるのでした。
第75話、ありがとうございました!
トイレが「思考読み取り式」になるという、究極のプライバシー侵害(笑)。
Wi-Fiのために未来に住むリィナの順応性の高さが光ります。




