第74話:『プリンの再構築(リカバリー)。 ―過去改変:賞味期限は永遠に―』
食べ物の恨みが生んだ、ゴミ箱国家によるタイムトラベル。
お母さんの胃袋から「食べた事実」だけを残して中身を盗むという、神をも恐れぬ過去改変。
リィナの機転(シュークリームの投げ銭)により、宇宙の消滅は免れ、九条家の「おやつタイム」は無事に守られたのでした。
「……あ、やっぱり。冷蔵庫に入れておいた私のプレミアムプリン、お母さんが食べたでしょ」
リィナが学校から帰るなり、空になったデザートケースを指差してジト目を向けた。
「あら、名前が書いてなかったじゃない。……美味しかったわよ、濃厚で。でも、もうお腹の中よ、諦めなさい」
お母さんが勝ち誇った顔で掃除機をかけていた、その時。
流し台の下の「ゴミ箱国家」から、虹色の光と共に小型の(神具:タイムマシン)×(属性:お取り寄せ)×(印:因果逆転)が浮上してきた。
『……観測。……リィナ様の落胆を検知。……住民たちが、お母様の胃袋に入る「直前」の過去へ飛び、プリンをサルベージすることに成功しました』
ゴミ箱から出てきたのは、昨日お母さんが食べたはずの、冷え冷えの「プレミアムプリン(実体)」だった。
「……パパ。これ、タイムパラドックスが起きてない?」
『リィナ。……彼ら、プリンの「美味いという記憶」だけはお母さんの脳に残しつつ、物理的な質量だけを過去から引き抜いたようだね。……(印:収束する因果)×(印:胃袋の虚無)×(投げ銭:過去の自分への飴玉)。……よし。これで、世界線が分岐して「プリンが存在する未来」に上書きされたよ』
「ちょっと待ちなさい! 私、食べたはずなのに急にお腹が空いてきたわ! さっきの満足感を返しなさいよ!」
お母さんが怒ってプリンを取り返そうとした瞬間、プリンの周囲に「事象の地平線」が展開。過去と現在が混ざり合い、リビングの時計が逆回転を始めた。
「……あーあ。プリン一個のために、宇宙がビッグバンまで巻き戻りそうなんだけど」
「(印:強制定着)×(印:おかわり禁止)×(投げ銭:全員分のシュークリーム)」
リィナが指を鳴らすと、暴走していた時間はピタリと止まり、テーブルの上には人数分のシュークリームが出現した。
「……ふん、まあいいわ。シュークリームがあるなら、プリンはリィナにあげるわよ」
お母さんが機嫌を直して紅茶を淹れ始めると、ゴミ箱の小人たちは「神(母)の空腹を満たした!」と、世紀の大発見であるタイムマシンを「ゴミ捨て場の残飯圧縮機」に改造して、さっさと日常に戻っていった。
第74話、ありがとうございました!
「食べた記憶だけ残して現物を回収する」という、一番賢くて一番残酷なタイムトラベル(笑)。
パパが冷静に「胃袋の虚無」を分析しているのがシュールです。




