第72話:『残飯進化論。 ―ゴミ箱から始まるニューワールド―』
最強ロボットと残飯が融合し、ゴミ箱の中で文明が誕生。
九条家のキッチンは、今や「宇宙で最も高度な技術がゴミとして捨てられる場所」となりました。
お母さんにとっては、新人類の貢ぎ物も「便利な掃除道具」でしかありません。
神を信じる小人たちも、まさか自分たちの秘宝が排水溝掃除に使われているとは夢にも思わないでしょう。
「……パパ。キッチンの隅から、なんだか『文明の夜明け』みたいな音が聞こえるんだけど」
リィナが朝食のシリアルを食べていると、先日「生ゴミ受け」に降格した最強ロボットの内部から、微かなオーケストラのような合唱が聞こえてきた。
ロボットの高性能ナノマシンが、お母さんが捨てた「世界樹のキャベツの芯」と「神域のトマトの皮」を勝手に解析・合成し、わずか一晩で独自の生態系を構築してしまったのだ。
『……観測。……お母様の料理残渣より、新人類「エコ・ホモ・サピエンス」が誕生。……現在、彼らはゴミ箱の中で火を発見し、独自の宗教(お母さんを太陽とする信仰)を確立しました』
「ちょっと! 私を勝手に神格化しないでよ! 掃除しにくいじゃない!」
お母さんがゴミ箱の蓋を開けると、そこにはミクロサイズの文明が広がっていた。
使い捨ての割り箸で組まれた神殿が建ち、ティーバッグの出涸らしを聖域として崇める小人たちが、お母さんの顔を見て一斉にひれ伏した。
「パパ、これどうするのよ。このままじゃゴミ出し日に『大量虐殺』が起きるわよ」
『リィナ。……彼らはもはや、この宇宙の物理法則では測れない進化を遂げている。……(印:次元の住み分け)×(印:ボトルシップ化)。……よし。ゴミ箱を「独立国家」として登録して、我が家の管轄外にしておいたよ』
パパが指を鳴らすと、ゴミ箱は「外界からは中が見えないが、中は無限に広がる楽園」へと変貌した。
しかし、新人類たちは感謝の印として、毎朝ゴミ箱の隙間から「超文明の産物(時空を歪めるネジや、食べると寿命が1000年延びる飴玉)」を、お供え物として勝手に出してくるようになった。
「……あーあ。またリビングに変なガラクタが増えていく」
「あら、この『寿命が延びる飴玉』、シンクのヌメリ取りにちょうどいいわね!」
お母さんは、銀河中の王が喉から手が出るほど欲しがる秘宝を、掃除用洗剤として惜しげもなく使い始めた。
第72話、ありがとうございました!
ゴミ箱の中で火を発見し、お母さんを信仰する小人たち(笑)。
「寿命1000年の飴」を掃除に使うお母さんの価値観、相変わらずブレませんね。




