第70話:『ベランダは銀河遺産。 ―観光ルート:リビング経由、異次元行き―』
ベランダのマツボックリが「宇宙遺産」に認定され、九条家は全銀河の観光スポットへ。
しかし、お母さんにとっては「布団を干す邪魔な交通渋滞」でしかありません。
神の如き破壊力を持つ布団叩きに怯えながら、異星人たちは今日も「命懸けの観光」を楽しむのでした。
「……ちょっと、パパ。朝から窓の外が騒がしいんだけど」
リィナが眠い目をこすりながらカーテンを開けると、そこには絶景……ではなく、数百機の「観光用UFO」がホバリングしていた。UFOの窓からは、三つ目の異星人や光り輝くエネルギー体たちが、身を乗り出して一眼レフカメラを構えている。
『皆様、左手に見えますのが、全宇宙で最も高い時価総額を誇る「九条家の干しマツボックリ」でございます。その輝き、まさに神の預金通帳……!』
スピーカーから流れるガイドの声が、リビングにまで筒抜けだ。
「……あーあ。パパ、ついに『宇宙遺産』に登録されちゃったわよ」
『リィナ。……審査員が勝手にベランダの「ハッシュ値」を測定して、勝手に登録していったんだ。……(印:観覧料の自動徴収)×(印:窓ガラスの偏光マジックミラー化)。……よし。これで、中からは見えるけど、外からは家事をしてるお母さんの姿は見えないようにしたよ』
しかし、お母さんはそんな配慮などお構いなしに、窓を全開にして布団叩きを振り回した。
「ちょっと! そこのオレンジ色のUFO! 邪魔よ! 布団が干せないじゃない! 遺産だかなんだか知らないけど、ここは私の居住スペースよッ!!」
お母さんが振り下ろした布団叩きから放たれた(衝撃波)×(属性:布団のダニ退治)×(印:営業妨害)により、観光艦隊の先頭車両が「ポヨーン」と異次元まで弾き飛ばされた。
「ひえぇぇ! 遺産の守護神が怒ったぞ! 逃げろ!!」
パニックになる観光客たちを横目に、リィナはスマホで「九条家・公式参拝アプリ」を立ち上げた。
「……パパ、これ。UFO一台につき『ドングリ1万粒』の駐車料金を設定したから。……(印:収益の自動分配)×(投げ銭:宇宙平和基金)。……これで、うちの家計も安泰ね」
その日の午後、九条家の庭には、駐車料金として納められた「山のようなドングリ」と、お母さんに叩き出された「観光客の忘れ物(レーザー銃や時空手帳)」が、ゴミとして山積みになっていた。
第70話、ありがとうございました!
「宇宙遺産」になっても、お母さんの布団叩き一つで観光ルートが変更される九条家のパワーバランス(笑)。
リィナがしっかり「駐車料金」を徴収して収益化しているあたり、現代っ子らしい逞しさがあります。




