第56話:『宇宙の捕食者。 ―つまみ食いはフライパン百叩きの刑―』
世界樹の匂いに釣られてやってきた宇宙の捕食者。
しかし、お母さんにとっては「料理を邪魔する迷惑な野良犬」程度の扱いです。
フライパン一つで銀河の危機を救い、怪獣にお粥生活を強いる最強の主婦。
九条家の食卓の平和は、お母さんの鉄拳によって守られていました。
「……なんか、空に巨大な『口』が開いてるんだけど」
リィナが庭の世界樹から収穫した「太陽プチトマト(直径5メートル)」を台所に運んでいると、次元の裂け目からズルリと、星々を飲み込むと言われる伝説の怪獣『ギャラクシー・イーター』が姿を現した。
その怪獣は、庭から漂う「世界樹の煮込み」の芳醇な香りに抗えず、数万光年の彼方からヨダレを垂らしてやってきたのだ。
「ギョロロロォォ……(美味そうな匂いだ……そのトマト、一口よこせ)!!」
怪獣の触手が九条家の屋根を掴もうとした瞬間、キッチンの換気扇から「カンッ!」という鋭い音が響いた。
「ちょっと! 今、味見の段階だって言ったでしょ!!」
エプロン姿のお母さんが、片手に巨大な中華鍋、もう片手に**(神鉄製)×(表面加工:テフロン)×(属性:絶対防塵)**のフライパンを携えて飛び出してきた。
「ママ、危ないわよ。あいつ、銀河一つを3秒で完食する捕食者なんだから」
「そんなの知らないわよ! 煮込み料理の一番大事な時間は、火を止めて味が染み込む『今』なの! それを台無しにするなんて、万死に値するわ!」
お母さんは空中にジャンプすると、怪獣の巨大な鼻先にフライパンを叩きつけた。
(主婦の怒り)×(印:お預け)×(投げ銭:味の素)。
「――【ゴッド・オブ・キッチン:強制断食】!!」
ゴォォォォン!!
鐘のような音が響き渡り、銀河の捕食者は「ギャフン!」という漫画のような悲鳴を上げて、数百光年先まで吹き飛ばされた。
さらに、お母さんの「掛け算」の効果で、怪獣の胃袋は「3日間、お粥しか受け付けない虚弱体質」へと書き換えられてしまった。
「……ふぅ。全く、最近の若い怪獣は行儀が悪くて困るわ」
お母さんは着地すると、何事もなかったかのように鍋の火加減を調整し始めた。
「……パパ、あいつ、もう二度とこの銀河に来ないわね」
『リィナ。……彼のトラウマ値が「測定不能」に達しているよ。……(印:次元の戸締まり)×(印:セコム)。……よし。これで、夕飯が終わるまで宇宙の誰もこの家に干渉できないようにしたよ』
その日の夕食、世界樹のトマト煮込みは「一口食べただけで寿命が1000年延びる」ほどの絶品だったが、リィナは「あ、これパパの会社の同僚(神様たち)に配ったら、また宗教戦争が起きるな」と思い、黙々と食べることに専念した。
第56話、ありがとうございました!
銀河の捕食者を「お粥体質」にするという、健康的なお仕置き(笑)。
お母さんにとって、宇宙の命運よりも「煮込みの時間」の方が重いという価値観が素敵です。




