第55話:『世界樹の生い茂る庭。 ―家庭菜園の収穫物が神話級―』
掃除機から「不法投棄」された神々が、意地で庭をジャングル化。
しかし、どんなに神々しい植物も、お母さんにとっては「ちょっと育ちすぎた野菜」でしかありませんでした。
世界樹を包丁で解体させられる魔王の姿は、もはや九条家の日常風景です。
「もう、この掃除機のゴミ、庭のプランターに撒いちゃうわね」
お母さんが無造作にダストボックスのレバーを引いた瞬間、極小文明を築いていた神々と魔王たちは、現実世界の「堆肥」として地面に叩きつけられた。
「今だ! 生き延びるには、この大地のエネルギーを吸い尽くすしかないッ!」
「(植物の加護)×(土壌の神格化)×(投げ銭:超速成長肥料)!」
掃除機から解放された神々が、パニック状態で全魔力を庭の土に叩き込んだ。
その直後、九条家の庭は「バキバキッ!」という轟音と共に、重力を無視して垂直に伸び始めた。
「……ちょっと、リィナ。窓の外が真っ暗なんだけど」
リィナがリビングのカーテンを開けると、そこには「空」がなかった。
あったのは、樹齢数万年を思わせる巨大な巨木の幹。お母さんが植えたはずのプチトマトは、一晩で直径5メートルを超える「紅蓮の太陽果」へと進化し、キュウリは天を突く「翠玉の塔」となって雲を突き抜けていた。
「……あーあ。ママの家庭菜園が、難易度SSSの『世界樹の迷宮』になっちゃったわね」
『リィナ。……これではAmazonの配達員が玄関に辿り着けない。……(印:空間拡張)×(印:生態系の固定)。……よし。庭全体を「独立した亜空間」として切り離したよ。これで家が押しつぶされる心配はない』
パパが冷静に空間を処理する横で、お母さんは巨大化したプチトマトを見上げて腰を抜かしていた。
「……なんてこと。これ一つで、町内会のカレー大会が100回は開催できるわ……! でも、収穫するのにヘリコプターが必要じゃないの!」
「リィナ様! 見てください、この立派な枝ぶり! これが我らの生きる証です!」
巨木のてっぺんで誇らしげに叫ぶ魔王サトウ。しかし、彼は気づいていなかった。
「……ねえ、ママ。あんなに大きくなったなら、今日の夕飯は『巨大トマトの丸ごと煮込み』でいいよね? 魔王たち、あれを包丁で切り刻むの手伝わせて」
「そうね! ちょうど人手(神手)が欲しかったのよ!」
神々が命懸けで育てた「世界樹」は、その日のうちに「九条家の巨大食材」として、お母さんの巨大な鍋の中へと放り込まれる運命となった。
第55話、ありがとうございました!
庭に世界樹が生えても「Amazonが届かない」ことを心配するパパの安定感(笑)。
そして、どんな奇跡も最終的には「晩ごはんのおかず」に変換される九条家の圧倒的な食欲。




