第54話:『吸引された八百万(やおよろず)。 ―ダストボックスの中の創世記―』
掃除機の中に吸い込まれた神々が、ゴミを資材に文明を構築。
リィナのスマホ一つで歴史が動く「ゴミ箱育成シミュレーション」が始まります。
しかし、住民たちにとっての「世界の終わり」は、お母さんがダストボックスをパカッと開けるその瞬間にありました。
「あーあ、みんな吸い込まれちゃった」
リィナは、お母さんがリビングに置き去りにした超高出力掃除機『ダイソン・ゴッド・V12』を覗き込んだ。
透明なダストボックスの中では、吸い込まれた神々、魔王、そしてニートたちが、高速回転するサイクロンの中で**(遠心力)×(摩擦熱)×(絶望)**によって、豆粒のようなサイズに圧縮されていた。
「リィナ様! 助けて……と言いたいところですが、ここ、意外と快適です!」
ダストボックスの中から、魔王サトウの極小テレパシーが届く。
見れば、彼らは舞い上がった「綿ゴミ」を建築資材にし、「パン屑」を巨大な食糧貯蔵庫として加工。さらには「静電気」をエネルギー源にして、ゴミ箱の中にハイテクな『塵の帝国』を築き上げていた。
「……パパ、これ見て。中の文明レベルが、現実世界を追い越しそうなんだけど」
『リィナ。……掃除機の中は時間の流れが加速しているんだ。……(印:観測)×(印:介入権限の付与)。……よし。リィナ、そのスマホで中の文明を「育成」してみるといい。彼らにとっては、君のタップ一つが「天啓」になるよ』
リィナは面白半分で、スマホの画面からダストボックスに命令を送り始めた。
「えーっと。じゃあ、ここのゴミの山に『重力反転』をかけて……。あと、ポテチのカスを『金塊』に書き換え」
ピコン、と画面をタップした瞬間。
掃除機の中では、綿ゴミの山が浮遊大陸へと進化し、黄金に輝くパン屑を巡って神々と魔王が「第一次・塵戦争」を開始した。
「すごい。たった5分で、彼らの歴史が2000年進んだわ」
しかし、楽しみも束の間。背後から「掃除機を片付けようとする」お母さんの足音が響く。
「……あら、まだゴミが溜まってるわね。これ、裏の畑に『堆肥』として捨ててきちゃおうかしら」
「「「神罰だけはご勘弁をぉぉぉ!!」」」
ダストボックスの中から、全宇宙の滅亡を危惧するような悲鳴が響き渡った。
第54話、ありがとうございました!
「綿ゴミの浮遊大陸」に「パン屑の金塊」……。ミクロな世界での壮大な歴史。
リィナにとっては暇つぶしのゲームでも、中の神々にとっては死活問題という温度差がたまりません(笑)。




