第49話:『仰げば尊し。 ―校歌斉唱(アメイジング・グレイス)で昇天―』
卒業式のフィナーレ。リィナの適当なハミングが、全人類の進化を数万年分スキップさせてしまいました。
全校生徒が天使になり、校舎が空へ消える。
これ以上ないほど「九条リィナらしい」ド派手な卒業式。
彼女にとっての学び舎は、文字通り「天に召された」のでした。
「……やっと、この制服ともおさらばね」
桜が舞う春の日。九条リィナは、もはや「異世界のハブ」と化した校門をくぐった。
背後には、正装したパパとお母さん。そして「自分たちも保護者だ」と言い張って透明化魔法でついてきた神々と魔王の軍団が、感極まって鼻をすする音が空気を震わせている。
卒業式は厳かに進んだ。……はずだった。
「……続きまして、校歌斉唱」
リィナは壇上で、卒業生代表としてマイクの前に立っていた。
正直、校歌の歌詞なんて覚えていない。リィナはあくびを噛み殺しながら、適当に「あのメロディ」をハミングすることにした。
(記憶にある校歌の断片)×(全次元の調和)×(投げ銭:感動の演出)。
「――♪……~~♪」
リィナが口ずさんだのは、校歌の旋律を借りた「世界の再構築」の旋律だった。
その瞬間、体育館の天井が「概念的」に消滅し、空から黄金の光が降り注いだ。
「な、なんだ!? 体が軽い! 視力が8.0になったぞ!」
「見て! 校長先生の頭に、天使の輪が出現してる!」
参列していた保護者や生徒たちの背中から、純白の翼が次々と生え始めた。リィナのハミングが「人間」という種族の制限を解除し、全出席者を強制的に「上位存在(天使級)」へと昇華させてしまったのだ。
「ちょっとリィナ! やりすぎよ! みんな浮いちゃってるじゃない!」
お母さんが叫ぶが、そのお母さんもまた、神々しい後光を放ちながら空中3メートルを浮遊している。
「あ、ごめん。……パパ、これ収拾つく?」
『リィナ。……手遅れだ。校舎ごと「高次元」へ浮上を始めたよ。……(印:卒業証書の授与)×(印:強制解散)。……よし。これで、全員「卒業」という名の強制ログアウトだ』
パパが指を鳴らした瞬間、光輝く翼を授かった生徒たちは、それぞれの自宅へ「光の速さ」で帰宅させられた。
後に残ったのは、成層圏まで浮き上がり、もはや「天空の城」と化した無人の校舎だけだった。
第49話、ありがとうございました!
校歌で全員を天使にするという、とんでもない卒業式(笑)。
校長先生に天使の輪が出たところで耐えられませんでした。
これでリィナは、名実ともに「学校」という枠組みから解き放たれました。




