第48話:『至高の卒業旅行。 ―銀河の果ては全滅指定区域―』
神様たちが用意した「卒業旅行」は、宇宙最強のダンジョンでした。
しかし、九条家にかかれば、どんな絶望の地も「一泊二日の温泉宿」へとデバッグされてしまいます。
数多の英雄が命を落とした聖地で、のんびり湯船に浸かり、コーヒー牛乳を堪能するリィナたち。
世界最強の家族に、不可能という文字はありません。
「リィナ様、進路決定おめでとうございます! お祝いに、我ら神々が最高の『癒やし』をご提供しましょう!」
女神と魔王が用意したのは、パンフレットではなく「空間の裂け目」だった。
行き先は、全宇宙の地図から抹消された禁忌の地――『極点温泉郷・アビス』。
「……ねえ、パパ。ここ、パンフレットに『生存率0.001%』って書いてあるんだけど」
「リィナ、たまには刺激も必要だよ。お母さんも『たまには羽を伸ばしたい』と言っているしね」
九条家一行がゲートをくぐると、そこは温泉どころか、巨大な火竜が空を舞い、地面からは毒を吐く植物がうごめく、全プレイヤーがレベルカンストでも即死する「超高難易度隠しダンジョン」だった。
「あら、素敵な露天風呂じゃない! 景色も雄大だわ」
お母さんは、目の前で吠える火竜を「ちょっと静かにしてなさい!」とハエ叩き(神具)で叩き落とし、平然とバスタオルを広げた。
「ひえぇぇ!? ボス、あっちの源泉、温度が『5億度』って出てるぞ! 浸かった瞬間に原子レベルで分解される!」
ゼノンがガタガタ震える中、リィナは溜息をつき、スマホの「設定」を開いた。
「……もう、熱いのは嫌いだって言ってるでしょ。(源泉:42℃固定)×(モンスター:強制リラクゼーション・モード)×(投げ銭:湯上がりコーヒー牛乳)」
パチン、と指を鳴らした瞬間。
5億度のマグマは、お肌に優しい美肌の湯へと変わり、凶暴な火竜たちは「背中流し係」としてタオルを持って整列し、毒の植物は「天然のアロマ」へと書き換えられた。
「ふぅ……。極楽ね、リィナ」
お母さんは、おとなしくなった火竜の頭を枕にしながら、ゆったりと湯船に浸かった。
「……ねえ、魔王。あそこで泡吹いて倒れてる『伝説の勇者パーティー』がいるんだけど。あれも演出?」
「い、いえ……彼らは恐らく、ここを攻略するために数十年かけて辿り着いた勇者かと……。我々の『家族旅行』の余波で、ダンジョンの難易度がマイナス100万になったショックで気絶したようですな」
リィナはコーヒー牛乳を飲みながら、宇宙の果てで「ただの温泉旅行」を満喫する家族を眺め、これでいいのかと一瞬だけ考えたが、お湯が気持ちよかったので考えるのをやめた。
第48話、ありがとうございました!
5億度の源泉を「42℃」に設定変更するリィナ、これぞ管理権限の私物化です(笑)。
火竜が「背中流し係」にジョブチェンジさせられる姿は、涙なしには見られません。




