第43話:『魔界の回覧板。 ―自治会費は魂(ソウル)でお支払い不可です―』
魔王の城が「隣の家」になった九条家。
どんなに強力な魔王も、お母さんの決めた「自治会ルール」には逆らえません。
絶望のオーブを500円玉に両替させられる魔王の悲哀と、掃除が完璧すぎて地面を消してしまう処刑卿。
異世界の英雄たちは、今や「模範的な市民」への道を歩まされていました。
「リィナ、ちょっとこれお隣さんに届けて。ついでに今月の自治会費、500円も集めてきてちょうだい」
お母さんから手渡されたのは、薄汚れたバインダーの回覧板と、集金用の小銭入れ。
リィナは溜息をつき、パジャマの上にパーカーを羽織って外に出た。
そこは、九条家の庭を抜けたすぐ隣。
かつては空き地だった場所に、いつの間にか「禍々しいトゲと怨念のオーラ」を纏った黒亜の城が建っていた。魔王サトウが「ボス(リィナ)の近くが一番安全でWi-Fiが速い」という理由で、魔界から城ごと引っ越してきた別荘である。
「……おーい、サトウ。回覧板。あと、町内会費500円」
リィナが呼び鈴(触ると呪われる髑髏)を雑に叩くと、重厚な扉が開き、膝をついたサトウが現れた。
「リ、リィナ様! 斯様な高貴な御方が、わざわざ末端の住人の元へ……! この回覧板の内容、全魔族に周知徹底し、血の誓いを持って守らせます!」
「いや、ただの『ゴミ出しの曜日の変更』だから。あと、燃えないゴミの日に『生贄の残骸』とか出さないでよね。カラス(天界の使い)が寄ってくるから」
サトウは震える手で回覧板を受け取ると、懐から漆黒に輝く「絶望のオーブ」を取り出した。
「こちら、今月の自治会費にございます。これ一つで、一国を数百年呪い殺せるほどの――」
「500円。日本円で。硬貨で出しなさい」
「ひえっ!? す、すぐに両替して参ります!」
魔王が慌てて城の奥へ消えていく間、リィナは庭掃除をしていた処刑卿アルヴィス(現在:自治会の清掃係)に声をかけた。
「アルヴィス、公園の草むしり、あんたの鎌でやったの?」
「はい。次元ごと切り裂きましたので、向こう1000年は雑草一本生えないかと」
「……やりすぎ。土まで消えてるじゃない」
結局、リィナは魔王から「ピカピカの500円玉」を回収し、ついでに魔界の特産品(毒消し草)を晩ごはんの薬味として大量に奪って帰宅した。
自治会費500円のために奔走する魔王……もはや威厳の欠片もありません(笑)。
「生贄の残骸を燃えないゴミに出すな」という、世知辛すぎる注意喚起。




