第42話:『ネトゲの神。 ―全ユーザー、強制的に神話入り―』
神様たちが良かれと思ってネトゲを「神仕様」に改造。
全ユーザーが最強になりすぎてゲーム性が崩壊するという、究極のインフレが発生します。
パパが会社ごと買収(データ吸収)して事態を収拾し、お母さんが家電への神の介入を許さない。
九条家、今日も全方位に無敵です。
「……ちょっと。私のキャラ、なんで勝手にレベルが『99999』になってるのよ」
リィナがリビングでノートPCを開くと、そこには昨日まで地道にスライムを叩いていたはずの自キャラが、背中に後光を背負い、全画面を埋め尽くすほどの黄金のオーラを放って鎮座していた。
「リィナ様! 昨夜、貴女様が寝静まった後、我らで『バフ』を掛けておきました!」
「我ら破壊神の加護があれば、運営のサーバーなど紙同然! 敵モンスターの出現確率を『ゼロ』にし、全ドロップアイテムを『伝説級』に書き換えましたぞ!」
破壊神と女神が、ドヤ顔でコントローラーを差し出してきた。
「……バカなの? 敵が出ないネトゲなんて、ただの『散歩シミュレーター』じゃない」
リィナが画面を確認すると、チャット欄は阿鼻叫喚の嵐だった。
『なんだこれ!? ログインした瞬間、全員レベルカンストしたんだが!?』
『運営! 街の噴水からポーションじゃなくて「不老不死の霊薬」が出てるぞ!』
『おい、俺の装備してる「ひのきの棒」が勝手に「銀河貫く聖槍」に進化したんだが……。重すぎて動けねえ!』
あまりの神罰(過剰サービス)に、全世界のサーバーがオーバーヒート。運営はパニックに陥り、ついには「神に祈る」しか手がなくなっていた。
「……パパ。これ、もう修正当たらないわね」
『リィナ。……今、そのネトゲの会社の株価が、異常な「幸福度」のせいで測定不能になっているよ。……(印:企業合併)×(印:全ユーザーへの強制ログアウト)×(パパの定時退社命令)。……よし。一旦、サーバーを私のPCに吸い上げた。これで世界は守られたよ』
「パパ、仕事早すぎ」
一方その頃、お母さんは神様たちが勝手にいじった電子レンジを見て怒鳴っていた。
「ちょっと! このレンジ、温めるボタン押しただけで『ビッグバン』の音がするんだけど! 設定戻しなさい!」
「「ひ、ひえぇぇ! 申し訳ございません!」」
九条家の日常は、もはや「世界平和」よりも「家電の修理」の方が優先されるレベルに達していた。
「ひのきの棒」が勝手に銀河を貫いてしまうという、神様の過剰な親切心(笑)。
ネトゲのインフレを「パパの買収」で解決するという、物理ではない大人の力も炸裂しました。




