第38話:『バズる聖域(ガッコウ)。 ―インフルエンサー、神罰を下される―』
リィナの改造校舎が、ついに現実世界の「資本主義」と激突。
1兆円の買収提示も、1億人の視聴者も、リィナにとっては「昼寝を邪魔するノイズ」でしかありませんでした。
パジャマ姿に変えられて逃げ惑う大人たちと、事務的に記憶を消去するパパ。
九条家の平穏(引きこもり生活)を乱す者は、誰であろうと容赦しません。
「……ちょっと、校門の前がうるさすぎるんだけど」
リィナが魔導マッサージ機能付きの机で微睡んでいると、窓の外から凄まじいシャッター音と歓声が聞こえてきた。
見下ろすと、そこには自撮り棒を掲げたインフルエンサーの群れと、「GAFA」のロゴが入った高級車、さらには「謎の黒塗りヘリ」までが校庭を埋め尽くしていた。
「見て! 蛇口から出るこのエメラルド色の液体、マジで肌がツルツルになる! #異世界校舎 #神の美容液」
「こちらシリコンバレーから緊急派遣された調査団です! この机の浮遊アルゴリズムを我が社に売却していただきたい!」
騒ぎを聞きつけたゼノンが、要塞側のモニター越しに叫ぶ。
「ボス! 学校のGPSがバグって、世界中の検索エンジンがここを『宇宙の中心』だと認識しちまった! 有名なIT企業のCEOが、校長室で『1兆円で学校ごと買い取りたい』って土下座してるぞ!」
リィナは盛大にため息をつき、スマホを取り出した。
「……たかが学校の備品でしょ。暑苦しいわね」
そこへ、一人の超有名動画配信者が、制止を振り切って教室に乱入してきた。
「おい、君がこの改造の主か!? これ、生配信してるから! ほら、視聴者1億人突破! 君の『チート能力』の種明かしをしてよ!」
リィナの瞳に、冷たい「計算」の光が宿った。
(印:肖像権の絶対保護)×(印:通信帯域の消滅)×(投げ銭:物理的ログアウト)。
「――【レガシー・プライバシー:出禁】」
パチン、と指を鳴らした瞬間。
校内にいたインフルエンサーたちのスマホがすべて「文チン(ただの石板)」に変わり、彼らの着ていた高級ブランド服は、リィナの好みで「ダサいひよこ柄のパジャマ」に上書きされた。
「ひえっ!? 配信が切れた! 服が! 俺の1億回再生がぁぁ!」
「帰りなさい。……パパ、あとはお願い。あいつらの記憶から、私の顔と場所のデータを『稟議』で落としといて」
『承知したよ、リィナ。……さて、皆さん。機密保持契約書(NDA)にサインを。拒否するなら、我が社の特製「永久残業異次元」へご招待します』
パパの声が校内放送で響き渡り、欲に目が眩んだ大人たちは、パジャマ姿で泣きながら逃げ出していった。
有名配信者を「ひよこ柄パジャマ」で強制送還するリィナ、流石です(笑)。
そしてパパの「NDA(機密保持契約)」という名の呪文……現実世界の武器を使いこなすパパが一番怖いかもしれません。




