第34話:『パパの覚醒。 ―中間管理職、魔王軍を組織化する―』
救世主として現れたパパ。しかし、彼は現実世界で数々の修羅場を潜り抜けてきた「ベテラン中間管理職」でした。
お母さんの爆発的なパワーを「管理」し、神々を「効率」という名の鎖で縛り上げる。
リィナの家族は、一人残らず「バグ」そのものでした。
「……あなた、いい加減にしなさい。リィナが困ってるじゃない」
空中モールの喧騒を切り裂くように、聞き慣れた「穏やかすぎる声」が響いた。
ゲートから現れたのは、ヨレヨレのスーツに身を包み、手にはコンビニの袋を提げた、どこにでもいる日本のサラリーマン――リィナの父親であった。
「パパ! 来てくれたんだね!」
リィナが地獄のタイムセール会場から駆け寄る。パパなら、このお母さんの「主婦独裁」を止めてくれるはずだ。
「リィナ、苦労をかけてるね。……母さん、10円セールはやりすぎだ。周辺諸国のGDPが3分で50%も下落してる。これはコンプライアンス的に問題だよ」
「あら、あなた。でも卵が――」
「卵の供給曲線については、後で会議室(応接間)で話そう。……さて」
パパは眼鏡をクイッと上げると、お母さんの怒気を柳に風と受け流し、周囲を見渡した。
「ええと、君たちがリィナの部下かな? ……サトウ君に、ゼノン君、それにテラさん。君たちの働きぶりは見たが……非効率だね。特に、その魔力の分配(リソース配分)。(印:稟議パス)×(印:進捗管理)×(パパの残業代ゼロ精神)」
パパが指をパチンと鳴らした瞬間。
要塞の空中に、巨大な「ガントチャート」と「KPI管理表」が出現した。
「神々を24時間働かせるなら、適切なシフト管理と、やりがい(精神論)の搾取が必要だ。魔龍君、君は『マスコット』を卒業して、今日から『物流センターの自動仕分け機』を兼任したまえ。……うん、これでコストが30%カットできる」
「パパ……? 何してるの?」
「リィナ、パパはね、会社で培った『不屈の社畜精神』をこの世界に最適化してみたんだ。……さあ、みんな。次の四半期までに、この世界の『幸福総生産』を200%にするぞ。……返事は『承知いたしました』だ。いいな?」
「「「しょ、承知いたしました……!!」」」
神も魔王も、お母さんの「説教」より恐ろしい、パパの「静かなるブラック労働改革」に飲み込まれていった。
お母さんが「破壊」なら、パパは「搾取(管理)」の天才でした(笑)。
「コンプライアンス」という名の呪文で神々を働かせるパパ、ある意味リィナより敵に回したくないタイプです。




