第31話:『実績の捏造。 ―聖王の内申書を書き換えろ―』
母親という名の「現実」を前に、リィナは自身の異世界での偉業を「内申書」へと変換する工作を開始します。
神々の推薦、王たちの感謝状。
しかし、宇宙の救世主としての功績も、母親の「福利厚生チェック」の前ではただの紙切れ同然でした。
「……いい、みんな? これは戦争よ」
お母さんが安売りメロンを吟味している隙に、リィナは震えるゼノン、アルヴィス、サトウを緊急招集した。彼女の額には、先ほどのデコピンの跡が赤く光っている。
「ボス、どうするんだ? あの人、俺の『存在確率』を眼力だけで削ってきたぞ」
「主よ……あの御方の背後に、戦神すら恐れぬ『不動明王』の如き幻影が見えました……」
「わかってるわよ。ママは私の『将来』を心配してるの。だから……私がここでちゃんと『立派な仕事』をしてるって証明しなきゃいけない。――(印:公文書偽造)×(印:内申点100倍)×(神の推薦状)」
リィナが震える指で空中に描いたのは、異世界の王族たちが発行した「聖女・九条リィナ様への感謝状」……を100枚ほど束ねた、超豪華な「キャリアポートフォリオ」だった。
「テラ、あんたも手伝って。管理レイヤーの記録を弄って、私の欠席日数を『異次元インターンシップ』に書き換えるのよ」
「ええっ、そんなの神様の僕でも倫理的にどうかと思うけど……。リィナ、あのお母さん怖いからやるよ!」
そこへ、レジ袋を提げた母親が戻ってきた。
「あら、リィナ。まだいたの? さっさと帰って進路相談の資料を――」
「ママ、これを見て。私、この世界でただ遊んでるわけじゃないの。ほら、これは『多次元宇宙平和維持活動』の証明書で、こっちは『全知全能神からの内定通知』」
リィナは必死に、捏造した「立派な実績」を突きつけた。
母親はメガネをかけ直し、ジロジロと書類を眺める。
「……ふーん。全知全能? よくわかんないけど、要するに『バイトのリーダー』になったってこと? 社会保険は入ってるの?」
「……そこ!?」
リィナの計算を遥かに凌駕する「現実的すぎる指摘」。最強の女子高生は、再び膝を突いた。
神の内定通知よりも「社会保険」を気にするお母さん、強すぎます(笑)。
リィナの「掛け算」は、どうやら「親の心配」という複雑な方程式だけは解けないようですね。




