第3話:『魔王軍、秒速で退場。 ―晩ごはんの邪魔は許さない―』
村を「楽園」に作り変えたリィナ。
しかし、その圧倒的な魔力の胎動を、周辺を支配する魔王軍が放っておくはずもありません。
食事の準備を始めたリィナのもとへ、軍勢を率いた幹部が襲来します。
「0.1秒の建国」を邪魔する者には、最高に理不尽な「掛け算」がお見舞いされることに……。
「……で、次は食料ね」
リィナは白亜の宮殿と化した自室のキッチンで、腕をまくっていた。
村は綺麗になったが、中身が空っぽだ。現代の知識で美味しいカレーでも作ろうかと考えていたその時、地響きと共に不吉な影が村を覆った。
「キサマか! この地に不遜な魔力を放ったバグめは!」
空を切り裂き現れたのは、巨大な翼を持つ魔王軍の幹部・暗黒騎士ガイアスだった。
彼の背後には数千のガーゴイルがひしめき、村を包囲している。
「主よ、お下がりください。ここは俺が――」
アルヴィスが鎌を構えるが、リィナはそれを手で制した。
「アルヴィス。今、スパイスの配合考えてるから静かにしてて」
リィナは窓から顔を出し、上空のガイアスを冷ややかな目で見上げた。
「ねえ。今、忙しいんだけど。用があるなら300年後くらいに来てくれない?」
「貴様……死にたいようだな! 我が暗黒魔力を喰らえ!」
ガイアスが巨大な魔力の塊を凝縮させる。それは一国を滅ぼすほどの熱量だった。
だが、リィナはため息をつきながら、空中に一文字の「印」をなぞった。
「面倒くさいなぁ……。(印:ベクトル反転)×(印:質量増加)×(投げ銭ボーナス:全部乗せ)」
【システム:累計投げ銭10,000G突破。新スキル『神罰の乗算』が解放されました】
「……これね。――【レガシー・リターン:1,000,000倍返し】」
リィナが指をパチンと弾いた。
刹那。
ガイアスが放とうとした暗黒魔力が、その場に固定されたかと思うと、100万倍の質量と速度を伴って、そのまま彼自身へと跳ね返った。
「なっ……!? ギャアアアアアアアアア!!!」
絶叫する暇もなかった。
魔王軍の幹部も、数千のガーゴイルも、自分たちが放とうとした力の余波に飲み込まれ、空の彼方へと消し飛んだ。
後に残ったのは、雲一つない、突き抜けるような青空だけだった。
「……よし。邪魔がいなくなったところで、カレー作るわよ。アルヴィス、野菜切るの、手伝って」
「……御意。……主の力、もはや『聖女』を通り越して『終焉』に近いのでは……」
アルヴィスは震える手で包丁を握り、リィナの背中を仰ぎ見た。
彼女の「0.1秒」の物語は、まだ始まったばかりだというのに。
本日の第3投稿、ありがとうございました!
魔王軍の幹部(笑)が、文字通り秒殺されていきました。
リィナの「掛け算」は、相手が強ければ強いほどその真価を発揮します。
果たして魔王軍の本隊、そして「運営」はこの異常事態にどう反応するのか……。
明日の投稿もお楽しみに!




