第17話:『魔王、就職希望。 ―闇の支配者、ニートになる―』
軍勢を一掃された魔王。しかし、彼は運営に見捨てられ、食い詰めた末にリィナへの「転職」を決意します。
プライドを捨て、Wi-Fiと食事を求めて膝を突くラスボス。
リィナの「掛け算」は、ついに種族の垣根すら越えて、最強の労働力を手に入れました。
「……また変なのが来たわね」
魔王軍を「一括削除」した翌朝。要塞のゲート前に、一人の男が正座していた。
漆黒の甲冑、禍々しい角。誰がどう見ても、この世界のラスボスである「魔王」その人である。
「……何、今度はタイマンでやりたいわけ?」
リィナが眠そうな目をこすりながら現れると、魔王は勢いよく地面に頭をこすりつけた。
「リィナ様! どうか……どうか、私をこの村の『デバッガー兼、掃除係』として雇ってください!」
「……は?」
リィナの横で、ゼノンが「はぁぁぁ!?」と声を裏返らせ、アルヴィスが静かに鎌を抜き放つ。
「貴様……主を謀るつもりか。その首、今すぐここで――」
「待て、待つのだ処刑卿! 私は本気だ!」
魔王は涙ながらに訴えた。
「運営の奴ら、負けた途端に私を『型落ちのバグ』扱いして、魔王城の電気を止めやがった! 部下も全員消されたし、もうあいつらの下で働くのはゴメンだ! 頼む、リィナ様の下で、Wi-Fiのある生活を送らせてくれ!」
リィナはじっと魔王を観察した。
(印:嘘発見器)×(印:誠実さ鑑定)×(空腹度:最大)
「……まあ、嘘はついてないみたいね。魔王なら力仕事もできそうだし」
「おおっ! では!」
「いいわよ。ただし、魔王の名前は捨てなさい。今日からあんたの名前は……そうね、『サトウ』。仕事は、空中要塞の『ゴミ捨て場の圧縮』。あんたの暗黒魔法なら、ゴミを分子レベルで潰せるでしょ?」
「サトウ……。いい名前だ、誇りを持ってゴミを潰させていただきます!」
かつての闇の支配者は、リィナから渡された「初心者用ほうき」を宝物のように抱え、感激に震えていた。
「ボス……いいのかよ。魔王をゴミ係にするなんて、世界中のファンタジー小説が泣くぞ」
「いいのよ。便利なら何でも。……さて、サトウ。仕事の前に、私の朝ごはんのジャガイモ、暗黒魔法で超高速に剥いといて」
「御意にございます、主様!」
こうして、リィナの空中要塞に、また一人「元最強」の変人が加わった。
魔王が「サトウ」として再就職……。暗黒魔法でジャガイモを剥くシーンは、シュールすぎて運営も言葉を失っていることでしょう(笑)。
これで要塞の運営体制は、処刑卿(家事・戦闘)、元勇者(警備)、元魔王(清掃)というカオスな布陣に。




