第11話:『移住希望者が殺到中。 ―聖域への入国審査―』
世界樹が放つ「安定」を求め、滅びゆく地上から人々が集まり始めます。
押し寄せる難民、賢者、そして魔物たち。
「引きこもりたい」というリィナの願いとは裏腹に、彼女の要塞は、人類最後の希望である「空中国家」へと急速に変貌していきます。
「……ちょっと、ゼノン。あの行列、何とかして」
世界樹が爆誕してから一夜。リィナは要塞のテラスから下を見下ろして顔をしかめた。
地上まで伸びた世界樹の巨大な根。それを「階段」代わりにして、数えきれないほどの人間たちが空を目指して登ってきていたのだ。
『無理言うなよボス! こっちは門番なんだぞ!』
ゼノンの通信は、怒鳴り声に近い。
『隣国の敗残兵から、伝説の賢者、さらには「魔王軍をリストラされた」っていうオークまで並んでやがる! みんな「世界樹の加護が欲しい」って必死なんだよ!』
リィナはため息をつき、渋々ゲートへと向かった。
そこには、アルヴィスが鎌を構えて「主の眠りを妨げる者は首をはねる」と殺気を放ち、その前で震え上がる数千の群衆がいた。
「あのね、ここ、そんなに広くないんだけど」
リィナが姿を現すと、群衆が一斉にひれ伏した。
「聖女様! 地上は運営のバグでメチャクチャです! どうか、この楽園に入れてください!」
「……バグ? ああ、あいつら腹いせに地上を荒らしてるのね」
リィナは空を見上げる。運営はリィナを消せない代わりに、世界の他の場所を「初期化」し始めたらしい。
「いいわよ、入れてあげる。……ただし、ただ乗りは禁止。(印:適正検査)×(印:強制労働契約)。この光の門をくぐれた人だけ、住民として認めるわ。あ、あと特技がない人はお断り。私のカレーのジャガイモ剥くとかでもいいけど」
リィナが指先で描いた「印」が、巨大なスキャナーとなってゲートに展開された。
合格した者は光に包まれて入国し、悪意を持つ者はバネのように地上へ弾き飛ばされる。
「アルヴィス、ゼノン。入った人たちに、さっさと家と畑を割り振って。……あ、あとスマホの充電器の工場も作らせなきゃ」
「……御意。……しかし主よ、これではまるで『新しい世界』の王ではありませんか」
「王なんて興味ないわよ。私はただ、快適に引きこもりたいだけ」
そう言いながらも、リィナは次々と「入国審査」を効率化する術式を組み上げていった。
第11話、ありがとうございました!
リィナの「入国審査」、相変わらず合理的で容赦ないですね(笑)。
ジャガイモ剥きから始まる異世界生活……。
しかし、これだけ人が集まれば、次は「法」や「経済」が必要になってくるはず。




