第一章:第二話 私の兄
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注意事項
・今作のジャンルはハイファンタジーです。思いもよらない展開が書かれる可能性がありますのでご了承ください。
・作者は素人です。大目に見てくださいませ。
「それは昔の話だろ!どうせ僕はこれからもずっと魔物を倒すためのバロウズも邪神を倒すためのプチノイドも持つことができない!.........僕ならできると思ってたんだ邪神を倒してこの世界を平和にするって!......でも大人になっていくにつれてだんだんわかってきてしまったんだ。僕には無理だ...。」
「ごめん...酷いこと言って。」
そう言うとパリスはその場から逃げるように私を置いて先に行ってしまった。
14年前の私の兄はこんな男ではなかったのに......。
ーー
「コラー!犬さんをいじめるなー!」
「なんだお前!俺たちの遊びの邪魔するんじゃねー!」
14年前の事だ。引っ越す前に通っていた学校で敷地内に犬が入ってきたことがあった。
その犬をガキ大将の上級生が虐めていた。
当時のパリスは相手が自分より年上だろうと自分の正義を貫いた。
犬をいじめるなど、当然パリスとっては制裁対象。怒髪天を衝らぬき真っ先に飛んでいった。
「ちっ!覚えてろー!」
「ハァハァ。大丈夫だった犬さん?」
「ワンワン!」
「うわ!ちょっとくすぐったいよー。」
「おにい!大丈夫だった?」
「うん!平気平気!」
パリスは正義を貫くのなら怪我でさえ疎まなかった。
そんなところが兄の良いところであり悪いところでもあった。
「あのさ...なんでおにいはそんなに色んなことをするの?おじさんたちの仕事を助けたりたくさん戦いの特訓をするの?」
傷を川で洗っているときに私は兄に聞いた。
私は当時はどうせ周りの人たちによく思われたいだとか、ただただ強くなりたいだけだと考えていた。
だが兄から帰ってきた言葉は他の誰にもいえないことだった。
「英雄になるための特訓だよ!おじさんが色んないいことをすると英雄になれるっていってた!」
「僕ね将来は英雄になって邪神を倒してみんなを幸せにするんだ!」
私はそれを聞いて軽めに腰が抜けそうになった。
今でもそうだが「英雄になる」
これを極端に例えるのなら、「王の城に一人で喧嘩売りに行って無傷で王様の首取ってくる!」
と言うのと同じぐらいイカれた発言である。
それは兄も分かっていたはずだ。いや、分かっていなかったとしてもすぐにその事実を知ることができるはずだ。
それでも兄はその後もずっとそれを口癖にしていた。
少なくともそれぐらい彼にとっては「英雄になる」ということは人生の目標だったのだ。
今は騎士になるということさえ怪しいが。
「はぁ......最悪。」
私は一人で家路を一歩一歩と歩いた。
ーー
「ファー!!そうかそうか!!パリスはぶっ飛ばされたか!!ははは!」
「おいジジイ!うるせーぞ!」
「おっと!ラトル!俺はハゲじゃないぞ!薄毛だ!!」
「ほぼ同じじゃろ。」
私の家ではこれが日常だ。戦って、疲れて、ご飯を食べて、喋って寝る。
私、エルム・メンタジュンはそんな日常が大好き。
今日はドラゴンのことがあるからいつもとは違って遅くまで起きていないといけないが、それを含めても同じだ。
「笑い事じゃないけどね。お兄ちゃん結構痛そうだったから。」
「でもにいには毎回大丈夫そうだぞ。あれ、いつか死ぬんじゃないかってうちはヒヤヒヤしてんだよ。」
「ダァイジョウブダァ!!ニコラァ!!なぜなら俺が育てたからな!お前たちを受け身がどんな姿勢からでもできるように特訓してやったんだぞ?ファー!!」
このサングラスと頭が特徴的な人はジョン・ガン。ガンおじさんって私たちは呼んでいる。
私たちには生まれた時から産み親がいなかったからこの人が育ててくれた。
とても優しい人で今までに例もない武器を使わない私の戦闘スタイルも否定せずに肯定してくれた。
でも後三週間ほどでそんな日常ももう終わってしまうな。と思っていた。
今からの出来事で私たちの未来は大きく変わり始めた。
この出来事がなかったら今の私たちはいない。
「ガチャ」
その音と共に玄関のドアが開かれ、お兄ちゃんとお姉ちゃんが帰って来た。
私は瞬間に感じ取った。兄の様子がおかしいことに。
家のみんながお帰りと言う中、なんとも言えぬ不安が私に降りかかった。
「お兄ちゃん.........。大丈夫だった?」
「ああ。大丈夫だって。」
やっぱりそうだ。いつものより段違いに素っ気ない返答だ。
それはガンおじさんにも分かったみたいだ。
「ん?どうした?顔が暗いぞ?パリス。」
「...僕はプチノイドを諦めます。騎士にもなりたくもありません。」
何か悪い事を言うんじゃないかってことはわかっていた。
でも、兄が言ったそれを理解した瞬間、喉の奥が熱くなってお腹には何も入っていなかったように空っぽになったように感じた。
私は人生で初めて、兄に裏切られたのだ。
「そそれは本当か?!」
一番最初に口が動いたのはおじさんだった。
「...はい。」
「なんでだ?!俺の愛情が足りなかったからか?!」
「別そう言う訳では無いですけど...確かに僕は昔から邪神を倒すことが夢です。ですがこんなバロウズも持てないプチノイドも持てない僕のような情けない人間が邪神に勝てるとは思えません。」
冗談と思おうとした。だけど兄の顔は淡々としていた。目には何も浮かんでいない。
冗談じゃない。そう思えば思うほどに私はその事実を否定した。
そんなはずない。だって昨日まであんなに私に夢を話してくれていたのに。
「そ...そんなこと言うなって。俺の団長だって最初は持てなかったんだぜ?今は持てなくても大丈「いいんです。ジョンおじさん。もっと僕よりいい人がこの街かどこかにいると思います。........ごめんなさい。」
「あ。おい...!」
私は兄が階段で2階に姿を消すまで、言葉がでなかった。
いや。必要ないと思ったのかもしれない。
その時の兄の背中にどんな言葉をかけても無駄だということが
当時の私には無意識下で分かっていたのかもしれない。
「そんな...。お兄ちゃん...本当に...。」
「仕方ないわ...。」
「レナ...?どうゆうことだ?」
「パリスは昔からプチノイドに選ばれるために色んなことをしてきた。だけどその努力が報われずプチノイドに選ばれなかった。昔から何度も何度も挑戦したけど持つことが出来なかった。しかもバロウズも持てない。そりゃあんな気持ちになるわよ。彼にはそれしか無かったんだから。」
私は確信した。もう一生、兄は夢を語ってくれない。と。
ーー
その日の夜はいつもよりも寒かった。砦の上にいるので尚更だ。焚き火を焚いているがそれでも寒い。
俺たちはこのパトリアを守る衛兵。だが酷すぎる。
ドラゴンを逃したからといって街の中心から離れた所にいる俺たちまで夜通しで番をしなければならなくなった。
「ふゎああ...眠いなぁ。ったくドラゴンのやろう来るなら早く来いよ...。こっちは寝不足なんだぞ...。」
もちろん。俺だけではない。隣にいる同僚も、そのまた向こうにいる奴らも同じ目に遭っているのだ。
くそ。空の星は綺麗だが許せん。いつか絶対にストライキを起こしてやる。
「ほんとにな。まったく...今日は俺の子供と夜に一緒に本を読もうって約束してたのに...。」
「そういえば今の邪神はなにしてんだ?英雄アン・マグナが死んだ魔聖戦争からだいぶ経つがなんの音沙汰無いよな。」
「多分プチノイドでも探してんじゃねぇか?噂程度だが確かパトリアにあったよな。」
「ここじゃねぇか!え待てここに新しい英雄がいるってことか?!」
「噂程度つったろ!プチノイドを持つ英雄はまだいねぇ。でも、おかげで邪神はプチノイド探しに苦戦しているだろうよ。多分まだ王宮にあるって思っているはずだからな。」
俺は水を飲んだ。寒さのせいか水がシャリシャリと音を立てたように感じた。
俺もいよいよ寒さでおかしくなり始めたのかもしれない。焚き火のパチパチという音も喧しくなってきた。
いや。もうそんな事どうでもいい。早く終わってくれ。帰りたい。
「いやもしかしたら既に場所なんてわかってんじゃねぇのか?プチノイドは邪神の体の一部だって話もあるしワンチャンあるぞ?」
「そうだったらまっさきにプチノイドがある所に行って血の海にするだろ。13年経っても何もないってことはわかってないんだよ。」
「そうか。じゃ心配ないな。思ったけど噂だとプチノイドはこの街にあるんだろ?誰が持ってんだ?」
「あの丘の上にある家の旦那だよ。話ではあの有名なハベレ・ポトム騎士団の団長の左腕だったらしいぜ。」
「そうなのか?!ただの朗らかなハゲたおっさんだと思ってた。じゃあ魔聖戦争にも参戦してたってことか。」
「そうらしい。でも今は孫とで6人暮らしだとよ。」
「はーん。俺も英雄までとは言わないけど邪神に立ち向かえる人間になりてぇな。」
「お前ポテンティア使えないのにか?」
「うるせぇな!人には人の夢と目標が......ん?」
「どうした?」
同僚がいきなり静かになって明後日の方向を見続けていた。
表情が見れば見るほど恐怖に染まっていく。
なんだなんだと思っていると同僚は口を開いた。
「お...おい!あ...あれ!もしかして...!きたんじゃないのか?!」
「...!」
今日は徹夜せずに済んだ。
ーー
ご覧いたただきありがとうございました!
不定期更新ですが月2目標です!次回もお楽しみください!




