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大掃除に関する閃き

 人気のない路地裏で、僕は一人の女と対面していた。


「これを手に入れるのには苦労したさね」


 茶色の髪を二つに束ねた女が、聞いてもいないのに語りだす。


 運動部のユニフォームが似合いそうな、健康的で快活な印象を与える外見の女だ。


「それはもう、聞くも涙、語るも涙の潜入劇が……」


 だが、それらは全て擬態。僕はうんざりする。


「御託は良い。早くデータを渡して」


 僕の言葉を聞いて、茶髪の女──ネーベル・キングスバレイは溜め息を吐いた。


「本当にせっかちな女さね。いつもいつも、何を焦っているのやら」


「詮索禁止。それが僕達、淫祠邪教のルールのはず」


 国際異能連盟に登録した異能者のほとんどは、四つの組合のいずれかに加入する。


 主に前衛(レイド)に向いた異能者が所属する、聖蹟連合。


 主に中衛(ガード)に向いた異能者が所属する、破綻枢軸。


 主に後衛(エイド)に向いた異能者が所属する、花蓮会議。


 そして、何処にも馴染めない碌でなしが集まった組合が、球状星団。


 その球状星団を率いる最高戦力が僕達──淫祠邪教だ。グレーゾーンに蔓延る、総勢9名の碌でなしの王。


 個人的には、アウトロー堕ちしないだけのラインを弁えている点が、最悪のクズ共だと思っている。勿論、僕も含めて。


 ルールは互いに詮索しない事。僕は他人の事情に首を突っ込む気はないし、自由に動けるのは都合が良いから所属している。


「あいよ、これが各所にアタイの蟲を潜り込ませて探った情報。精々、感謝する事さね」


 渡されたデータに軽く目を通す。蟲のシグネットは隠された情報を探るのに向いている。


 僕の持つ光のシグネットは視覚の延長でしか情報を探れないが、正確性が高い。組み合わせれば信頼度を上げられる。


 まあ、それでも知覚系のシグネットを極めた異能者には敵わないが。


「感謝はする。報酬も約束通りに払う。もし情報が虚偽だったら許さないけど」


 異能社会の鉄則は自力救済。先に不義理を働かれたのならば、報復は当然だ。


 穿った見方をすると、口実さえあれば他の異能者を攻撃しても良いという事でもある。


 自身の庇護下にある縄張りで無礼を働かれたと主張し、高位の異能者同士の抗争が始まるなんて事態も、さほど珍しくはない。


「アタイはそんなに信用ないかい?友情の為にリスクを侵して働いたのに、悲しい話さね」


「僕の監視に付けてた蟲」


 白々しい。僕は冷淡に告げる。


「僕の体に三、風呂場に四、窓の外に五。あと天井にも」


 ネーベルは芝居がかった仕草で、お手上げのジェスチャーをした。


「ちょっとした悪戯さね」


「もういい。それで、僕の事は何か分かった?」


「直ぐに光の矢で破壊されたから、何も収穫はなし。秘密主義の女のスリーサイズくらいは暴きたかったところさね」


「……今回は見逃す。次はない」


 警告はしておく。こちらにも後ろ暗い部分があるので、あまり強くは追及できない。


 無用な争いを仕掛けているような暇もないのだ。


 データを確認した僕は帰ろうとする。


「ああ、そうそう。そういえば、色々と裏社会を探ってたら、最近になって面白い単語が耳に入ったさね」


 ネーベルは何気ない世間話のように切り出した。


「──黙示録。悪魔を宿す道具。そんな言葉に心当たりはないかい、極光のナーヌス?」


「知らない。都市伝説の類?」


「なら良いさね。アタイとしては遺物の一種じゃないかと踏んでるんだけど……」


 拍子抜けするほど、あっさりと引き下がる。本当に、ただ言ってみただけなのか。


「なんでも、その黙示録とやらは契約した者の願いを叶えるそうさね」



 

「閃いた」


「どうかしましたかぁ?」


 紫髪をサイドテールにした女性──山藤(ヤマフジ)杜鵑花(サツキ)が、独特の間延びした口調で志鳳に訊ねる。


 手元には人間の飲み物とは思えない虹色の輝きを放つドリンクがあり、彼女が救いようのない刺激中毒者だという事実を雄弁に主張していた。


 杜鵑花がこのドリンクを初めて注文した時、珍しく店長の幕楽の笑顔が引き攣っていたのが印象深い。


「このパターンは覚えがあるぞ。そうだな。ハンモックで寝てみたい、と言い始めるに一票だ」


 ウェーブのかかった緑髪の女性──アイン・ディアーブルが、マドレーヌを食べ終えて自信ありげに言う。


 それに対して、杜鵑花が食い付いた。


「賭けますかぁ?一口何レプタにしますぅ?」


 レプタは異能者の社会で使われる通貨の単位だ。端数が出た場合には、ヒュステルという補助単位もある。


 杜鵑花はギャンブルとスリルが大好きな性分だった。


「おい、不健全だぞ。君は何にでもレプタを賭けないと気が済まないのか、賭博狂」


「別に小銭を賭けるくらい、目くじら立てなくても良いじゃないですかぁ。それにぃ」


 アインの注意を受け流して、杜鵑花がドリンクを飲む。喉奥が爛れるような感覚が癖になりますねぇ、と彼女は思った。


「誰かさんが競売でガラクタ買い集めてるのに比べたら、可愛いものだと思いますけどぉ?」

 

「私のコレクションがガラクタだと!?これだから浪漫を理解しない輩は困るな。そもそも浪費するだけの君には言われたくないぞ。喧嘩を売っているのか?」


「そっちこそぉ、喧嘩売ってるんですかぁ?私もトータルでは勝ってるんですけどぉ」


「あはは、二人とも程々にね」


 互いの足を蹴って喧嘩し始める二人は平常運転なので、志鳳は気にせず話を続けた。


「大掃除をしようと思う」


「掃除ですかぁ?断章取義(うち)の綺麗好きみたいな事を言いますねぇ」


 喫茶ウールーズを溜まり場にしている五名は、それぞれ四大組合の最高戦力でもある。


 梧桐志鳳・信桜幕楽・山藤杜鵑花の三名は、花蓮会議の最高戦力である断章取義。


 アイン・ディアーブルは、破綻枢軸の最高戦力である残体同盟。


 この場に居ないサラート・シャリーアは、聖蹟連合の最高戦力である神聖喜劇に所属している。


「そういう掃除じゃない。瘴気の掃除をしようと思う」


 その言葉にアインも合点が行った。


「ああ、瘴気の浄化作業の事か。確かにあれは一種の掃除と言えるな。君にしては常識的な提案で逆に驚いたぞ」


「私もよくやりますよぉ。瘴気が溜まると碌な事がないですからぁ」


 瘴気とは生物の体内の調和を乱す有害物質の名称だ。マナとは正反対の性質を持ち、生命体に悪影響を及ぼす。


 異能者は自前のマナで自然発生した瘴気から身を守れるが、マナを持たない未能者は最低でも体調不良になる。


 そして、瘴気の溜まった場所を放置すると、いずれは異能者のマナでも防げない濃度になって土地を汚染してしまう。


 その前に瘴気を無害化する方法として開発されたのが、浄化の術式。


 真逆の性質を持つマナを瘴気に混ぜ込んで有害性を薄めるだけの術式なので、異能者にとっては難しい作業ではない。


 浄化作業には連盟から補助金も出るので、小遣い稼ぎの手段として隠れた人気がある。


「昨日玉兎(ユートゥ)から言われた。遊んでる暇があったら部屋を掃除するでありんす、と」


 玉兎は志鳳を補佐する眷属である。


 眷属は迷宮に出現する人型の怪異を討伐した際、稀に残る召喚紋章から召喚される。


「そう言われると、部屋を掃除する気がなくなった」


「思春期みたいな精神性ですねぇ」


「そこで僕は考えた。部屋は掃除したくないから、世界を掃除して御茶を濁す」


「謎にスケールが飛躍したな……。そういうのは、駄目人間の逃避行動って言うんだぞ」


「やりたい事をやりたい時にやるのが、僕の信条」


 志鳳は胸を張って宣言した。


「玉兎さんに直接そう言ったらどうですかぁ?」


「叱られるのは嫌だ」


「そういうとこだぞ」



 

「と言うわけで、来た。瘴気の残留に定評のあるアクイレギア」


「桜国なんかも瘴気の発生は多いですけどぉ。国土面積と発展具合の割りに、高位の異能者が少ないのが残留の原因ですかねぇ」


「桜国と違って、四大組合の本部が置かれていないのも理由の一つだと思うぞ。他の国を拠点にしている異能者が来る理由が少ないんだろうな」


 志鳳・アイン・杜鵑花の三人は、喋りながら通行人を観察していた。


 未能者はマナを纏っていないので、異能者よりも瘴気の影響を受けやすい。


 言い換えると瘴気に染まりやすいため、未能者の通行人を観察すれば、瘴気を多く発生している場所が推測できる。


 そちら側から来た未能者だけ、明らかに体表の残留瘴気が濃くなっているからだ。


 マナと瘴気は水と油の関係であり、マナを自在に操る異能者にとって、瘴気の存在は強烈な違和感として察知できる。


「アクイレギアに来るのは久し振りですけどぉ……全体的に瘴気が濃くないですかぁ?」


 杜鵑花の独り言のような呟きに、アインが反応する。


「やはり君もそう思うか。正直、気のせいだと思ってたぞ。志鳳君はどうだ?」


 志鳳は一つ頷いてから、シグネットを使った。


『口伝──歴史の足跡ヒストリカル・トラック


 志鳳は様々な通行人の過去を追体験した。この現象の原因を過去に向かって辿っていく。


 一般的に、未来を知るシグネットと過去を知るシグネットだと、前者の方が有用だと思われがちだ。


 既に終わった過去を知って何になる、と。


 しかし、実際にそれらを扱う異能者が後者を侮る事は少ない。


 未来と違って過去は変動しない。揺らがない。確実な情報だけを教えてくれる。


 少し遡れば相手が罠を仕掛けていると事前に察せるし、更に遡れば初見殺し技の練習をしている光景まで筒抜け。


 戦闘中にそこまで遡って読めるのは、流石に一部の上澄みだけだが、戦闘外でも有用なシグネットなのだ。


『読めた。この近辺でクスリが流通してる。急いで止めないと危険』


 そして、閑話の術式で二人に思念を送る。


『クスリ……?いや、待ってくれ!おい、まさか!!』


 志鳳は素早く立ち上がる。


『瘴気の結晶。服用する錠剤──超人的な力を得られるドラッグとして、若者を中心に流通してる。とにかく片っ端から浄化……いや、間に合わない。最適解で動かないと』


『瘴気の結晶!?そんなものは何処でも違法──どころか完全な禁忌だぞ!?連盟の粛清部隊が知れば、形振り構わず消しに来る!!』


 瘴気の結晶。確かにそれを使えば未能者でも簡単に力を手に入れられる。マナとは正反対の性質だが、力の塊には違いない。


 だが、連盟が危惧しているのはそんな事ではない。


 瘴気の結晶を服用し続けた中毒者は、肉体を瘴気に侵食されてしまうのだ。


 マナを扱う異能者は祝福により肉体が最適化されていく。では、瘴気を得た者はどうなるか。


 結論から言えば、瘴気に侵食された人間は異能者を脅かすほどの力を得ながらも、祝福による肉体の最適化──負荷や反動の軽減が一切起こらない。


 生物の限界を超えた動きを可能としておきながら、それに耐えられる構造になっていないのだ。


 当然ながら、暴れれば暴れるほどに肉体は自壊していく。


 そして、瘴気は宿主の破壊衝動や殺傷衝動を喰らって、更に強く定着する。


 結果、肉体が致命的に壊れても歪な異形へと変貌させて、無理矢理に宿主を生かす。


 宿主は鋭敏に進化した異形の肉体の中で、半永久的に不可避の激痛に苛まれる。


 その凄惨な末路は、マナを扱う異能者にとって見るに堪えない。故に、禁忌なのだ。


『それを拡散してる人間がいる。失伝──|針の上で天使は何人踊れるか《シースレス・エンジェル》』


 志鳳の青い髪に光の糸が絡み付いた。


『二人は僕の言う順番で、中毒者を浄化して。それが終わったら……』

 

 天使が舞い降りる。


『こっちを手伝って。末期中毒者──戮辱者を片付ける。それが最適解』




 四大組合の最高戦力──アインと杜鵑花にとって、末期に至っていない瘴気中毒者の浄化作業は容易かった。


 常人を超えた肉体を得ているが、未だ不死身の異形にまでは変貌していない。どちらにとっても幸運な事に。


 力に溺れて攻撃してくる者もいたが、二人の前では何の障害にもならない。


 しかし、楽観できる状況ではない。一刻も早く志鳳の助力に行かなくては。


 そんな一心で浄化を終わらせた二人が志鳳の指定した広場に辿り着くと、そこには異形の怪物が居た。


 戮辱者と称される、末期段階の瘴気中毒者。人間の成れの果て。


 全身が膨張して骨が飛び出しており、まるで無数の腕が生えているように見えるそれが、志鳳と戦っている。


 迷宮の怪獣にも異形はいるが、元人間だと分かる戮辱者に抱く生理的嫌悪感には敵わないだろう。


 そう、元人間。


『あれは流石に手遅れじゃないですかぁ?』


 杜鵑花は戮辱者の暴走によって被害を受けた経験がある。だから、敢えてアインに向けて言った。


『……そうだな。できれば楽にしてやりたいが……』


 迷いを抱えて戦わないように。あれを人間だと思うと危険だ。


『仕事が速くて助かった。二人に時間稼ぎを頼みたい』


『時間稼ぎ、ですかぁ?』


『そう。今からこの戮辱者を聖別する』


『はぁ!?正気ですかぁ!?』


 杜鵑花は驚愕した。


 瘴気の呪縛によって、ほぼ不死身と化してしまった戮辱者の処理法は、二通りある。


 一つ目は更なる激痛を外部から与えて、一時的に行動を停止させ、その間に隔離する。


 連盟は失楽園という収容に特化した巨大な遺物を所有しており、そこに入れてしまえば一応は解決だ。


 実際に戮辱者と化した瘴気中毒者は、大半がこの方法で処理される。


 そして、二つ目が。


『無理にでも聖別の術式を使う必要がある、という事だな』


『そう。今回の主犯は何らかの方法……おそらく認識を狂わせるタイプの遺物で、事件を隠蔽してる。連盟の応援も失楽園送りも期待できない』


 志鳳の予想では、認識を狂わされる事により、この近辺に立ち入る事ができない。志鳳が二人を連れて侵入できたのは、志鳳自身が遺物だから影響を受けなかったのか。


 そして、この戮辱者は異様に強力だ。逃がさずダメージを与えながら、三人で運び出すなど不可能に近い。一度制圧に成功しても絶対に逃げられる。


『だから、聖別』


 聖別。


 それは、戮辱者の肉体と融合した瘴気そのものを無数に切り分ける術式。


 マナと瘴気の反発を利用して、対象の瘴気を一瞬だけ破片にまで裁断し、浄化の術式が通るほどに薄める力業。


 末期の戮辱者でも、聖別を受ければ人間に戻れる可能性がある。


『良いだろう。救うために戦う方がやる気が出るというものだぞ』


『甘いですねぇ。まぁ、付き合いますけどぉ』


 志鳳が聖別の術式の準備に入る。


 聖別は非常に高度な術式であり、本来ならば個人で使えるものではない。今の志鳳でも僅かな準備時間が必要だった。


「ウ……ガアアアア……!」


 これまで自身を止めていた実力者が隙を見せたにも関わらず、戮辱者に志鳳を狙う意思は感じない。痛みのままに暴れているだけだ。


 だが、志鳳に当たれば無事では済まないのも事実。


『させるか!失伝──悪戯な玩具箱(ジョーク・ボックス)!』


 アイン・ディアーブル。


 シグネットは道具の具現。大量の祭具が意思を持つように組み上がり、志鳳の前に強固な防壁を築く。


『動かないで貰えますかぁ?口伝──|存在の耐えられない軽さ《フリー・フォール》』


 山藤杜鵑花。


 シグネットは引力の操作。足止めにおいてこれほど厄介な能力はない。


 強大な重力に押さえ付けられたかと思えば、真上に浮かされて、次は真横に飛ばされる。


 瘴気は肉体を異形化させるが、シグネットを与える事はない。それは相反するマナの恩恵故に。だから、簡単に翻弄される。


『準備完了』


 そして、時が来た。


『聖別+浄化、同時発動』


 天使の輝きが、戮辱者の全身を浄化した。

 

「流石に、(てんし)でもきつ……!」




 ──その時、それは起きた。


 いつの間にか、認識を狂わせる遺物の効果が一帯から消えている。


 主犯である男は、自身の存在を知覚されない為だけに、その遺物を使っていた。


 そして、疲労で倒れそうになっている志鳳に向けて、何らかの攻撃を仕掛けようとした。


 一人だけ、それに気付いたアインが志鳳の盾になるように、彼の前に飛び出す。


 そして──。


 何処からか飛来した光の矢が、主犯の男の全身を撃ち抜いた。


「えっ、今の、志鳳君……?」


 アインは振り返ったが、志鳳は倒れているだけだった。


 こうして、全ての掃除が完了した。



 

『クハハッ!これは傑作だ!なあ、孤高の青?』


 悪魔の笑い声が僕の神経を逆撫でする。


「何?言いたい事があるなら言えば良い」


『いやはや、親友の窮地に慌てて飛び出すとは、君も可愛げがあると思ってね』


 苛立ちが募る。やっぱり黙れと言うべきだった。


「あのアインは僕の親友じゃない。この世界では、梧桐志鳳の親友」


『拗ねるなよ、孤高の青』


「誰が……!」


 僕は馬鹿馬鹿しくなって、頭を振った。


「にしても、瘴気はやっぱり危険。火種の中でも予想が難しい」


『然り!我輩達──黙示録の次に大きな崩壊の要因ではあるだろうな!』


 僕は考える。今のままでは、情報が足りない。知覚系のシグネット使い、それも四大組合の最高戦力クラスと手を結びたい。


 僕の時間遡行による歪みが生み出したイレギュラーな存在である梧桐志鳳と違って、僕は光のシグネットだけしか持っていない。


 このままでは、火種の予測に限界がある。


「残体同盟には未来を知るシグネット持ちがいたはず。それと……」


『なんだ、嫌そうな顔をしているな!』


 実は他にも当てがある。


 四大組合の最高戦力に匹敵する実力を持ちながら、そのポストを蹴った自由人達。


 あれと交渉する事を考えると無性に頭が痛くなる。


淫祠邪教(ぼくたち)よりも協調性のない連中なんて、悪夢」


 その上、実力だけは本物だから性質が悪い。


『つまり、面白くなってきた、という事でよろしいかな!』


 憂鬱だ。でも、やるしかない。


 不思議と心は軽かった。緑髪の親友を遠目に見れた事で、今度こそアインを助けられた事で、少しだけ軽くなった。


『ちなみに、だがね。君がわざわざ割り込まなくても、あの男は大した手札を持っていなかったと思うよ。遺物の反応からして……』


「滅びろ、悪魔」


 さあ、感傷に浸っている暇はない。


 僕の自己満足の為の救世を再開しよう。

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