【燦然たる開演《ハイライト・ショータイム》】
僕は掌サイズの箱のような祭具を軽く握り、兎耳の装飾を付けた銀髪の男──エノック・ザナドゥに投げ渡した。
「普段は中立の通貨基金が連盟に指揮権を委譲するなんて、本当に総力戦」
「人手が足りないのよ。それに、社会が存続してこその通貨だもの。……で、これが困ったちゃんのリストね」
「そう。光のシグネットを使った特殊加工。開封者の目に光の文字が吸い込まれて、内部データは破損する。黙示録が真説大陸に固まってる今、僕以外には覗き見できない」
大きな戦いを前にすれば、足を引っ張ったり保身に走る者が出てくる。そういう不穏な芽は事前に潰しておきたい。
「志鳳ちゃんでも?」
LITH端末で各所に暗号文を送信しながら、エノックが質問してくる。
「……梧桐志鳳は特異体質なだけで、純粋なシグネットの練度では僕に及ばない」
少なくとも、今はまだ。
そして、そんな未熟な異能者を最前線に送り出しているクズが僕ってわけだ。誰の為でもなく、僕自身の都合で。
……やっぱり、僕は救世主には向いてないな。悪い方にばかり思考が向かう。ああ、引き篭もって術式の研究だけしていたい。
僕はヘッドホンを耳に当て、聴き飽きた音楽を再生する。
『君1人が抱えられる敵の数など、心配するほど多くはない。世界から嫌われていると感じるのは、酷く傲慢な思い違いだ』
「仕上げは終わったかい?」
僕の前にミドルツインテールの茶髪女──蝗害のネーベル・キングスバレイが着地した。
艶やかな茶髪と背中に生えた蝶の翅がふわりと広がる。他生物の特徴を取り込む協術の応用は、生物系が得意とするところだ。
その雑な強さは反則的に思えるが、生物系に言わせれば現象系の方が意味不明で厄介らしい。隣の芝は青いという事だろう。
「ネーベルは作戦、成功すると思う?」
「さてね。アタイはノーコメント」
「……普段はうるさいくらい喋る癖に」
「分からない事を軽々しく発信しないのも、優れた評論家の振る舞いさね」
まあ、評論がライフワークの彼女が言葉を濁すのなら、勝算はそれなりにあるはずだ。
「後は……何処まで隠してるか。それ次第」
「黙示録が?」
僕は首を横に振る。
「──全員」
ネーベルが微笑むと、スコートの中から蜻蛉の大群が飛び立った。連絡役の蟲である。
「不測の事態に備えて、筆頭戦力は別々のグループに配置する。討伐が完了したら、直ちに他の支援に回って」
結局、僕は何かを成せたのか。過去に戻った意味はあったのか。
まもなく、答えが出る。
『クハハッ!さあセカンドチャンスだ、孤高の青よ!救世か、はたまた終焉か!』
脳内に甲高い声が響いた。
「うるさい、悪魔」
預言者でなくとも予測できる。作戦開始と同時に真説大陸の9箇所で……人類史上、稀に見る『大災害』が起こるだろう。
そして、今度こそ。
「僕が世界を救ってみせる……!」
表の六大陸の外に広がる裏の六大陸──真説大陸。
その1つであるアガルタ遺構は、指ほどの細さの穴から都市規模の巨大空間まで、大小様々な洞窟が蟻の巣の如く繋がっており、内部構造も頻繁に変化している。
その中でも戦闘に支障がない広さの地下通路を選んで進みながら、赤のミディアムヘアの女性──信桜幕楽がいつも通り目を細めて笑った。
『あはは、こんなところまで高濃度のマナが流れ込んでくるなんて、地上はどうなってるのかな……。わ、地震!?』
青のウルフカットの男性──梧桐志鳳は突然の揺れに転倒しかけた幕楽を支える。
振動のシグネットによる大地震。一般人のいない真説大陸という事もあって、超越者達も自重する気がないらしい。
『始まった。味方に殺されないように気を付けて。失伝──|針の上で天使は何人踊れるか《シースレス・エンジェル》』
細い光の糸が無数に発生し、志鳳の髪に絡み付くように展開する。
『このままだと洞窟が崩れる。杜鵑花』
『きゃひひ、分かってますよぉ。口伝──|存在の耐えられない軽さ《フリー・フォール》』
紫のサイドテールの女性──山藤杜鵑花が引力を発生させ、地割れ寸前の地面と壁を力業で補修した。
『洞窟の中だから音が響いてるだけ……じゃないわよね。巨人の足音、暴風、地震、雷鳴、時空間崩壊、津波、機械音、爆撃。流石は最終決戦だわ』
橙のハーフアップの女性──サラート・シャリーアが洞窟の壁にナイフを刺すと、揺れが一時的に止まる。
彼女は蓄積のシグネットで振動を吸収し、ハイウエストスカートの中に仕舞った。その時の手応えから、普段の超越者がどれだけ周囲に配慮して暴れているかがよく伝わってくる。
『どちらが世界を滅ぼそうとしてるかと訊かれたら、悩ましいところだな。おっと、洪水が流れ込んで来たぞ』
『皆、下がって!失伝──無秩序な熱狂!』
緑のロングウェーブの女性──アイン・ディアーブルの閑話に反応し、幕楽が巨大な炎の鎌を振るって水流を蒸発させた。
『後ろからは偽典の群れが来たわ!』
『ヤザタ。口伝──燦然たる開演』
志鳳の全身が淡く発光する。ヤザタ・スプンタの人格をシミュレートし、光の刀で不気味な彫刻の命を刈り取っていく。
『プレイスさん、まだですかぁ?』
『意識は捕捉しておる!直に、遺失支族の居場所へと辿り着くはずかえ!』
『そのようだな!失伝──悪戯な玩具箱!』
金のショートヘアの補綴戦姫──プレイスホルダーが指差した先から、六角形の小さな結晶体が飛来してきた。
『模型──分裂する蹴鞠!』
アインが具現した祭具に触れた瞬間、樹の枝のように広範囲が結晶化する。
『口伝──呪われた椅子』
サラートの投げたナイフに蓄積された振動により、結晶が砕け散った。
『失伝──溢れる程の目覚め!!』
自己強化を施したプレイスホルダーの義体が、その間隙を縫うように殴りかかる。が、辛うじて結晶の盾に防がれた。
『安くない連携だね。素晴らしい』
黒髪に青いインナーの入った遺失支族──グロリアは、白々しい笑顔を浮かべながらボディコンドレスの胸元で手を叩く。
『だけど、ごめんね。僕は力試しには興味がないんだ。だから、コスパ重視で終わらせよう。改編──終末世界No.13』
逃げ場のない洞窟が、瘴気に満ちた終末に塗り潰される。
『全てが規則正しく並んだ結晶の世界。──美しいだろう?』
そこは宝石にも似た異界だった。
ウールーズの6人が同じ班に振り分けられたのは偶然ではない。
今回の作戦では超越者が死亡する可能性も充分にある。そして、摂理の外側の存在である黙示録に殺された者は蘇生できない。
ならば、せめて親しい者達と一緒に。
これは最前線で命を張る超越者への配慮だ。しかし、精神状態が大きな影響を与える異能戦においては合理的な判断でもある。
『全て、僕の物になれ』
実際に、今の志鳳はベストコンディションだった。不完全ながら本来の失伝を取り戻し、信頼するウールーズのメンバーも揃っている。誰が相手だろうと負ける気はしない。
『失伝──|■■■■■■■■■■■■■■《■■■■・■■■》』
志鳳の左背から伸びる光の螺旋が、彼の意識と■■を結び付けた。片翼の天使が降臨する。
まずは、グロリア。目の前の黙示録を倒して他の加勢に行こう。
『僕が攻略した世界はたったの13だけど、幸いな事に生物の数が多くてね。烙印者にしてしまえば減る事もない。人件費も要らないし、こうやって……』
グロリアが手を広げた。
『人型……!ちょっと苦手かな……!』
『うっ、私の方は獣型ばかりね……!人型の方が倒しやすいのに……!』
瘴気に適応進化した不死の生物──烙印者の大群が、半透明な結晶が生えた宝石のような四肢を振り回している。幕楽とサラートは苦戦しているようだ。
『意識のない偽典は天敵かえ……!』
プレイスホルダーの方は瘴気を纏った彫刻に囲まれている。
『相性の良い相手を抑え込む事もできる。とても便利だと思わないかい?』
『……僕達について、よく調べてる』
志鳳は烙印者を戦棍で殴り砕きながら、過去知覚のシグネットでグロリアの……いや、遺失支族の戦略を読み取ろうとしていた。
向こうの指揮官は髄分と慎重で周到な性格に思える。これまで出会った黙示録とは印象が違う。まるで弱者の戦い方だ。
『当然だろう?君達が邪魔してくれたおかげで、こちらの計画は大幅な方向転換を迫られたんだからね』
『計画ぅ?貴方達は世界を滅ぼしたいだけの侵略者じゃないんですかぁ?』
杜鵑花は眉を顰める。引力を使ってグロリアを引き寄せようとしたが、根のように伸びた結晶が体を支えて微動だにしない。
『否定はしないよ。だけど、少し誤解があるね。黙示録はただの破壊者ではないんだ。……君達はこの世界の起源を知っているかい?』
『何の話ですかぁ?』
『僕達の目的の話さ。これは崇高な儀式なんだ』
グロリアは殻状の結晶で自身を包み、アインの投げた剣を弾いた。
『君達が位階を上げ続けて超越者に至ったように、僕達は666の世界を喰らう事で『全能者』に到達できる。そうして得られる唯一無二の権能が、宇宙の創造』
『はぁ!?』
『おいおい、話が大き過ぎるぞ……!』
結晶の鎧を着たグロリアを中心として、結晶が空間を埋め尽くしていく。
『古くなった宇宙を喰らい、新たな宇宙を創造する。それが黙示録の役割。──この世界も、そうやって誕生したんだよ』
志鳳の放った光線が無数の結晶に入射し、上下左右に分散して消えた。
『黙示録は宇宙の終焉そのもの。君達はシステムに抗う癌だ。ほら、人間達はよく言うだろう?命は儚いから尊いとか。だから、潔く終わりを受け入れ……』
『薄っぺらい言葉』
真実を聞かされた上で畏れも驚きもせず言葉を遮る志鳳の態度に、グロリアが顔を顰める。
『そういう背景は脚本家にでも語ってあげて。演出家が興味を持つのは君の意思。君自身は人間をどう思ってる?』
『……消耗品。それ以上でもそれ以下でもない』
ウールーズの6人を冷たい瞳が見回した。
『安心して良いよ。終末が来たら超越者以外は家畜として飼ってあげるから。実はこれまでもそうして人口を増やしてきたんだ。烙印者にする前なら繁殖させられるからね』
人間などレベル上げ用の雑魚敵でしかない。グロリアにとって理想の人間とは抵抗しない人間であり、理想の世界とは効率的に攻略できる世界である。
『多少、原住民を殺し過ぎても、その分は後から補充すれば問題ない。そうだろう?』
『なるほど。よく理解できた。……君が遺失支族の中でも下っ端に収まってる理由が』
『……は?』
そこで初めて、グロリアに感情らしきモノが宿った。
『異能者にもよくいるから。理屈と効率に囚われた、頭でっかちの三流未満』
グロリアは世界の攻略をゲームだと考えている。生まれた瞬間からステータスの桁が違う下等種族を狩るだけの遊び。
だが、それでも。時には獲物に本気で殺意を抱く事もある。
『……不敬だよ、安物。君達と僕では存在の格が違う。これだけ言っても分からないのかい?』
グロリアは人間を対等に見ていない。見下している。相手の視点に立つなど以ての外。だからこそ、当たり前の可能性に気付かなかった。
すなわち、同等の戦力と戦略を揃えた敵が現れる可能性。
『本当に格が違うか、今から確認する』
志鳳が無色のマナを広範囲に放出する。狙いはこの終末世界に充満している瘴気。
マナと瘴気の反発は莫大なエネルギーを生み、星のように発光する。
『目眩まし……?そんなモノは……』
当然、グロリアには通じない。しかし、普通の生物を強制的に進化させただけの烙印者には、効果覿面だった。
『ちっ、使えない……!』
『馬鹿ね!人間の養殖なんて馬鹿な事をしてるからよ!そんな短期間で視覚に頼らず戦えるような達人は生まれないわ!』
暗器をジャグリングしてエネルギーを蓄積しながら、サラートはせせら笑う。
『幕楽君!炎、頼んだぞ!』
『あはは、任せて!最高火力で炙るから!』
対人戦は苦手な幕楽だが、その火力は本物だ。噴火の如き爆炎がアインの横を通り抜ける。
『無駄だよ。僕のディザイアは止められない。結晶を切り崩しても、そこから新たな結晶が生えるだけだ』
『ふふ、世界を13も滅ぼしておいて、そんな常識的視点しか持てないのか。底が知れたぞ、遺失支族!』
アインのマナが回転し始めた。
『模型──連結絡繰天蓋コグスパイア』
無数の歯車が噛み合った巨大な機構が具現し、結晶を砂糖菓子のように削り取る。
『ぐっ……マナがガンガン吸われるな……!それに本家よりも規模が……!流石に原理の違う能力はコストが重いぞ……!』
『……っ!それはミセリコルディアのディザイア……!何故、人間如きが……!?』
『私が天才だからだ!!』
『くっ!』
グロリアは余ったソドをアインの足止めに回し、結晶を補強した。
『口伝──呪われた椅子!』
その瞬間を見計らったように、別方向から破砕音が轟く。
エネルギーを溜め込んだ暗器による波状攻撃。サラートの空けた穴に志鳳とプレイスホルダーが飛び込んだ。戦棍と銃剣が振りかぶられる。
『『届け!!』』
水晶の殻が割れた。グロリアは手元から押し出すようにディザイアを発動する。器仗で受け止めた2人が弾き返された。
『残念、届かなかったね……!』
『いいえ、届きましたよぉ。失伝──引き寄せる深淵』
杜鵑花が出した泡のようなマナの塊が、遮るモノのなくなったグロリア達を1箇所に吸引する。
『あ、ああ……!!』
完全な無防備。劣勢からの逆転の術など、グロリアは持ち合わせていなかった。
『まだ、だ……!』
追い詰められたグロリアが選んだのは、戦場からの逃走だった。巨大な結晶の柱を発生させ、洞窟の壁を掘り抜いて地上に脱出する。正しく、死に物狂いの延命策だ。
『相手は人間……!エネルギー……ソドさえ回復すれば残機の差で押し切れるはず……!』
具体的な方法は考えていない。ただ、理屈を並べて自身の醜態を正当化する。
最後まで、グロリアは戦いというモノを実感できなかった。それは本来、全てが終わった後で考えるべき事だ。
『──わたくしの間合い、ですわ』
気を抜いて良い時間など、戦場にはないのだから。
『失伝──時計仕掛けの抱擁』
黒のレオタードと露出部を覆うレース生地。暗い灰色の前髪で両目を隠した女性が、籠手を装着した拳を振り抜く。
ただし、減速させられたグロリアがその動きを認識する事はなかった。
『ぁ……』
遺言を残す暇すらない。
『どうか、安らかに』
洗礼のラミナ・クルシフィックス。
シグネットは時間。ライフワークは教育。神聖喜劇のボスにして、近接戦最強の異能者。
『ラミナ……』
地上に出た志鳳達はラミナの姿を見て状況を察する。彼らは作戦開始前に幾つかのパターンを想定し、どう対応するかを決めていた。
その中の1つ。味方と遭遇した場合、志鳳が直近の過去を読み、敵に回っていないかを確認する。味方ならば合流。
敵ならば。
『っ……!プレイスホルダぁぁぁぁぁぁ!!』
ウールーズの6人の意識が加速した。ラミナの速度域に対応するには、これしかない。
『模型──失楽園の扉……っ!』
錬術で構築した十字架が飛来する。アインが果実の紋様の刻まれた漆黒の扉で防いだ。
『同志!不味い!真説大陸に散っていた連中が、何故かこちらに集まって来ておるかえ!』
『問題ない』
志鳳は顎を引いて油断なく構える。
『──ラミナは、僕が倒す』
僕達は無駄に広い廊下を駆けていた。
『失伝──黒い星の光冠』
光の糸が僕の髪に絡み付く。思考が加速する。全身が熱を帯びる。
『ネーベル、左から弾丸。アレフ、避雷針』
『了解さね。行きな』
蝗害のネーベル・キングスバレイの操る巨大なカマキリが、銀の弾を斬り捨てた。
『フレンドリーファイアが飛び交う戦場。少し懐かしいような気がします。失伝──理想的な条件』
両目の間に垂れた淡い茶髪の女性──始原のアレフ・マットゥは、修道服の胸元で祈るように手を組む。同時に地面から銅の柱が生え、雷を受け止めた。
『ああっ、また偽典が増えたさね!』
『警備が厳しくなってるのは、当たりの道を引いてる証拠』
僕達は別働隊だ。
はっきり言って、遺失支族の全員を正面から倒すのは現実的ではない。しかし、黙示録には共通する弱点がある。
それが、本体。黙示録は元々、願いを叶える道具だ。契約した人間の体を乗っ取ってもそれは代わらない。
遺失支族が完全に絶命しても自己再生できるのは、存在の核となる本体が別にあるからだろう。
『本体を破壊してしまえば、どれだけ強くても関係ない』
『まあ、卑怯上等のアタイら淫祠邪教にはピッタリなやり方さね。正々堂々なんて虫酸が走るよ』
とは言っても、こっちはこっちで楽じゃないんだけど。
探索に向いた少数メンバーで、あらゆる方向から飛んでくる戦闘の余波を利用しながら、どうにか敵拠点の1つに潜り込んだところである。道中は生きた心地がしなかった。
『……!2人共、前!ありったけ!』
『口伝──開けっ放しの蟲籠!!』
バッタの大群と水の壁が前方に現れ、一瞬でピシリと固まる。
『これは、冷却のシグネット……?いや……』
『タッチの差で倒される前に間に合った。グロリアのしぶとさに感謝。反射。単車』
灰色の長髪に簪を挿した人物──モナルキーアが、何処か吹っ切れたような表情で立っていた。
『おかげで、結晶のディザイアを取り込めた。私はまだまだ強くなれる。嗄れる。晴れる』
額に埋まるように癒着した鏡を撫で、もう片方の手で禍々しい雰囲気を放つ槍を握る。
『私のディザイアは集約。異物の機能を自分の一部として取り込める。ただし、僅かでも抵抗されると成功しない。……梧桐志鳳ならグロリアを瀕死にできると信じてた』
モナルキーアは槍の柄で床を叩いた。バキバキと拠点の壁がひび割れていく。
『私は私のやり方で世界を攻略する。梧桐志鳳にそう伝えて。与えて。抱えて』
グロリアの拠点は崩壊した。
もしも、この時。
僕が遺失支族討伐作戦の結果を知っていたら、何か変わっただろうか。
『私は臆病者だから、他人任せで世界が救われるなんて都合の良い未来は、どうしても思い描けないのよねぇ』
未来のシグネットを持つタヴ・モンドが健在だったなら、何と言っただろうか。
『私達は全員が当事者。皆、嫌でも戦うしかない時が来るわぁ』
梧桐志鳳、信桜幕楽、アイン・ディアーブル、山藤杜鵑花、サラート・シャリーア、プレイスホルダー。
『この世界は詰んでいる。何度繰り返したところで、絶望的にピースが足りないのだ』
──上記6名、消失。




