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【黙示録】に関する隙間

「ようこそ、ビジネスパートナー諸君。本日のアジェンダはお察しの通り、エンジェルとガーディアンの動向に関してだ」


 黒に赤いインナーの髪を伸ばした黙示録──ルベン通信の最高経営責任者、ステファノスが代表して口火を切った。


「そろそろ、フィードバックがマストな頃合いだと思ってね。リスクヘッジはビジネスの基本だろう?」


「変な話、わざわざ手を打つ必要もなかろう」


 水色の髪を七三分けにした黙示録──シメオン金融のサピエンティアが、机に肘を突いてぼやく。


「天使なんぞ放置して、通貨基金でも潰さんか?ここだけの話、エノック・ザナドゥには何度も出し抜かれておる」


「それは美味しくない考えどすえ。うちが送った鮮度の高い襲撃報告を忘れはったんどすか?」


 白い短髪の黙示録──ダン食品のエンテンデールは、澄ました顔で諌める。


「ふっ、運命の歯車を動かす時が来たようね」


 頭頂部だけが紫色に染まった桃髪の黙示録──ナフタリ機械のミセリコルディアが、両手を顔の前に翳して、無駄に意味深な笑みを浮かべた。


「もっと積極的にさ!どかーん!ずばーん!って、こっちから仕掛けたいよな!」


 淡い茶髪を無造作に伸ばした黙示録──ガド建設のドゥレッザは、ぶんぶんと腕を振って主張する。


「何事も、なるはやでお届けするのが一番です。摂理の崩壊も同じでしょう」


 毛先を巻いた銀髪の黙示録──アシェル運輸のクラシーヴィが、左手で雑誌を捲り、右手でLITH端末を弄りながら言った。


「チッ。そもそも、てめーが抜け駆けして仕掛けたのも問題だろーが、クラシーヴィ。地中に埋めて化石燃料にしてやろーか、コラ」


 透き通るような輝きを放つ明るい青髪を伸ばした黙示録──イッサカル資源のパビェーダが、舌打ちをしながらガンを飛ばす。


「まあまあ、どちらにせよ、接触は避けられなかったはずだよ。向こうを警戒させられたなら、安い買い物だと考えようじゃないか」


 黒に青いインナーの髪を伸ばした黙示録──ゼブルン雑貨のグロリアは、目だけが笑っていない笑顔で窘めた。


「受肉の弊害とかが、バレてなきゃ良いけどね~。ボク達が直接動き過ぎると、副作用が心配だからな~。摂理の崩壊までは、用法・用量を守らないと~」


 橙髪の気弱そうな黙示録──エフライム製薬のアスナヴァーニイが、独り言のように呟く。


 そして、マナセ広告のモナルキーアは、連絡もなく無断欠席だった。




「しかし、素人質問で申し訳ないが、大前提として天使とは何者なんだい?」


 グロリアが確認するように切り出す。


「何も分からん!独立型の遺物っぽいけど、偶然にしては出来過ぎなんだよな!いきなり、ばばーん!と出てきたし!」


「自然発生する歪みだけで、あれだけイレギュラーな存在は生まれないよ~。理論上は黙示録(ボクたち)が関わってないと、おかしいんだよね~」


 ドゥレッザの雑な回答に、アスナヴァーニイが補足を入れた。


「私の接触した青髪の超越者から、濃厚な同族の気配がしました。彼女の仕業ではないのですか?」


「あの弁当買うてくれはった方どすね」


「敵に弁当売ってんじゃねーよ、馬鹿」


 クラシーヴィに続いたエンテンデールの言葉に、パビェーダが突っ込む。


「ふっ、彼女に関しては問題ないわ。人の身で黙示録を抑え続ける事はできない。それが運命(さだめ)よ」


 ミセリコルディアは謎のポーズを決めた。


「そう簡単な話なら良いが、未だに正常に活動できている事実がちと気になるな。天使が出現した時期から考えて、時間が経ち過ぎておろう」


 サピエンティアが軽く顎を撫でる。


「然しもの超越者と言えども、黙示録の侵食が遅すぎる」


「それよりも、ボクは摂理の守護者が気になるな~」


 アスナヴァーニイが口を挟んだ。


「摂理は世界の意識の総体だから~。意識を司る守護者がいる限り、多少の破壊は修復できるんだよ~」


「んじゃ、直せないくらいに、ばきーん!と一気に壊せば解決だろ!」


 ドゥレッザは力こぶを見せ付ける。


「で、それをするには天使が邪魔、と。なるほど、安くない状況だね」


 グロリアが頷いた。


「現状と方針について、コンセンサスは得られたかな?」


 ステファノスは全員の顔を確認する。


「ああ、助かるよ、先輩」


 黙示録は年齢の概念を持たない。


 黙示録に年功序列があるとしたら、摂理の崩壊を齎し、占領を成功させた世界の数がそれに当たる。 


 モナルキーア。世界攻略回数、0。


「そういえば、ボクの研究、良かったでしょ~?瘴気を偽典に定着させる薬品って、結構工夫が要るんだよ~」


 アスナヴァーニイ。世界攻略回数、4。


「それは分かるけど、もう少し安価にならないかな?」


 グロリア。世界攻略回数、13。


「仕方ねーだろ。超越者が大量にいやがるこの世界を落とすには、コストをケチってらんねーんだよ」


 パビェーダ。世界攻略回数、17。


「手早く片付かないのは、ストレスが溜まりますね」


 クラシーヴィ。世界攻略回数、53。


「どーん!と構えようや!戦争は攻める方が有利って言うだろ?」


 ドゥレッザ。世界攻略回数、89。


「ふっ、それ逆じゃなかった……?」


 ミセリコルディア。世界攻略回数、131。


「消費期限が切れるまで、黙って待つゆうのも芸があらしませんな」


 エンテンデール。世界攻略回数、257。


「極端な話、それでも良いと思うておるがな。取り立ては焦ったら負けよ」


 サピエンティア。世界攻略回数、444。


「ふむふむ、皆のディスカッションをヒアリングして、私にジャストアイデアが浮かんだのだが」


 そして、遺失支族の暫定代表。


「隠密行動特化の偽典をクリエイトして、エンジェルの暗殺にトライしてみるのはどうだろう?」


 ステファノス。


「エンジョイして行こう。黙示録は頂点捕食者。イニシアチブは常に我々にある」


 世界攻略回数。


「ところで、ぶっちゃけた話、一々喋り方が癇に障るから変えてくれんか?」


「……このワールドでは、これがデフォルトになってしまったんだ」


「ふっ、元になった契約者(にくたい)の癖に引き摺られる気持ちは分かるわ」


 ──665。

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