【聖地巡礼】に関する閃き
異能者は血縁関係を重視しない。
何故なら、親子であっても位階に差があれば、あらゆる面で別次元の生命体であるからだ。
存在の格が違い過ぎる者同士が、血縁という理由だけで一緒にいても、不幸にしかならない。
位階の高い者の事情に巻き込まれた場合、位階の低い者は驚くほどあっさり死ぬ。
だからこそ、成人前に厄除の儀という儀式を執り行って、親の因果から解放し、自立と独立を促す。
また、個人主義と自由主義の権化である異能者は、互いの自由を縛り合うような結婚契約を許容できず、夫婦という枠組みもない。
では、異能者にとって身内と呼べる存在がいないのかと言うと……実は、いる。
それは、共鳴を結んだ相手だ。
共鳴とは、マナを双方向に循環させて、異能者の魂を繋げる術式である。
桜国の任侠が行う親子盃や兄弟盃に近い儀式、と言えば分かりやすいだろうか。
一度共鳴を結ぶと、繋がりを辿る事で、離れていても相手の状態を感じ取れる。共鳴を強めれば、一時的に互いのマナを高め合う効果も得られる。
互いに向ける親愛度が高いほど、繋がりは強固になる。共鳴の強さが絆の強さと言っても過言ではない。
ただし、共鳴は心から好意を向け合う異能者同士でしか繋げないので、未能者のように嘘偽りの友好関係というのは成立しない。
故に、異能者は上辺だけで中身の伴わない関係を嫌う。
「スフィアは共鳴とか結んだ事なさそう」
「その通りですけど、王に言われると凄く馬鹿にされてる気がしますね。貴女こそ、誰かと共鳴を結んだ事あるんですか?」
僕とスフィアは、友達の少ない者同士で低レベルな争いを繰り広げていた。
発端は、共鳴を結ぼうとした事だ。
超越者と親衛隊は、ほぼ例外なく共鳴を結んでいる。
いざという時に、互いの無事くらいは把握できないと困るし、そもそも親衛隊は超越者のカリスマに惹かれた信奉者。共鳴を結びたがるのは当然の話だ。
「なんで二人とも、共鳴の術式を使う時だけそんなに手際が悪くなっちゃうの……?まさか、シビュラが手伝っちゃわないといけないなんて……」
「私達には、共鳴を結ぶほど親しい相手がいなかったからですよ」
スフィアが遠い目をする。
「お前と一緒にしないで。僕はちゃんと友達いたから。……一人」
僕はしっかりと訂正しておいた。
「……あっ、そうだ!スフィアちゃん、そろそろ目的地が見えてきちゃった!?」
シビュラがわたわたと話題を変える。
だが、確かにそちらが本題だ。僕達の視線を受けて、スフィアが表情を引き締めた。
「ええ、あそこですね。私の危機察知が示した敵の居場所」
「えっ!?でもあの建物って……!」
シビュラが目を見開く、僕も無表情のまま内心で驚愕していた。
「はい。アシェル運輸。未能者と異能者、二つの社会の物流を牛耳る世界屈指の──巨大企業の本社ですね」
スフィアは目を細めた。
「つまり、受肉した黙示録の面々は、堂々と人間社会に溶け込んでいるって事ですか。それもおそらく、世界有数の企業経営者として。つまらない冗談ですね」
「そんなやり方されちゃったら、いくらイケイケな超越者でも手を出せないよ!人間社会に牙を剥いたと判断されちゃったら、他の超越者に袋叩きにされちゃうし!」
そうだ。超越者は無条件に横車を押せるわけではない。
超越者は強い。しかし、同格の超越者達に囲まれてしまえば、当然ながら分が悪い。
「想像以上に狡猾。受肉して最初にやる事が、この世界での地盤固めとは」
場合によっては、超越者にすら協力を要請できるほどの立場に根を張っている。なるほど、厄介だ。
「超越者に直接攻撃されたら、流石の黙示録でも面倒でしょうからね。まあ、私でもそうしますよ」
「それに、未能社会と異能社会を支える大企業のトップなんて倒しちゃったら、世界が大混乱しちゃうよ!」
「その間に、他の黙示録が暴れ放題。よくできたシナリオ。……せめて、向こうが直接出向いて来れば、やりようもあるのに」
僕は思わず歯を食い縛る。その時。
「申し訳ありません。失礼ですが、弊社に何か御用でしょうか?」
僕達が振り向くと、毛先を少し巻いた銀色の長髪の女性が立っていた。
「ごめん。見てただけ。えっと……」
「ああ、これは、申し遅れました」
女性が優雅に一礼する。
「私、アシェル運輸の最高経営責任者──クラシーヴィと申します」
『王!この人、黙示録です!』
スフィアからの閑話に意識を切り替える。
『失伝──黒い星の光冠』
僕の髪に無数の光の糸が絡み付いた。
「お前、黙示録?」
「黙示録?はて、何の事やら。しかし、敢えて名乗るとするならば……」
銀髪の黙示録──クラシーヴィは、動揺すら見せずに微笑む。
「我々、十名の経営者仲間は、遺失支族と呼ばれております。以後、お見知り置きを、お客様」
「閃いた」
「……。ぁ、えっ!?今、暫く意識が飛んでたわよね!?」
「……。んっ……!?きゃひひ、凄い勢いで色んな思考が流れ込んで来ましたねぇ……!流石の私も頭がおかしくなりそうなぁ、とんでもない刺激なんですけどぉ……!?」
「……。っ!最大強度で共鳴を繋いでみないか、と言い出したのは君だぞ!というか、志鳳君のこれは何なんだ!?超越者四人が気絶するほどの思考の濁流なんて、知覚系にしても異常だぞ!!」
「……。ぁ、あはは、ちょっとしばらく立てそうにないかな……」
喫茶ウールーズの常連女性陣は、全員が志鳳の部屋の床にへたり込んでいた。
きっかけは、志鳳が所有している仮拠点──セーフハウスの一つで、流行りの映画を鑑賞していた時の何気ない会話。
刺激中毒の杜鵑花が、五人全員の間を繋ぐ共鳴を最大強度にして映画を観れば、互いの精神状態が伝わって、より強い刺激を得られるのではないかと言い出したのだ。
ノリの良い四人は賛同したのだが、その試みの最中で問題が発生した。
すなわち、梧桐志鳳の閃き。
彼の知覚と思考を最大限に酷使して正答を導き出すそれは、共鳴で繋がった者達の思考を蹂躙し、白目を剥いて昏倒させた。
幸い、超越者特有のタフさで直ぐに意識を取り戻したが、女性陣は極度の倦怠感によって足腰が立たない状態になっている。
「だから、止めておけと忠告したかえ。愚かな小娘共」
志鳳のLITH端末に居座るプレイスホルダーが、呆れながら嘆息した。
「なによ!新入りの癖に生意気よね!」
「予想できたんならぁ、もっとちゃんと止めてくれませんかぁ?」
「終わった後で得意げに宣うのは、無能の典型例だぞ」
「余の失伝で、もう一度白目剥かせてやろうかえ……!?」
唯一無事な志鳳が、女性陣を抱えてソファに寝かせていく。
この一件を見ると危険な術式にも思えるが、共鳴は距離によって減衰するので、至近距離かつ最大強度という馬鹿な使い方をしなければ問題はない。
五人は間違いなく馬鹿だった。
「ぁ……。あはは、それで志鳳くん。今度は何を思い付いたのかな……?」
志鳳に抱えられながら、両腕を彼の首に回した幕楽が、乱れた息遣いを整えながら訊いた。
「この状況で言うのは、ちょっと罪悪感があるけど。聖地巡礼をしたい」
志鳳が画面を指差す。
映画の舞台となっている立派な教会。それは、真説大陸に実在する景色だ。
真説大陸は無法地帯だが、その中でも比較的マシな治安の地域は存在する。この映画はそういう場所で撮影されたのだろう。
「しかし、私達は見ての通り動けないぞ?」
アインが肩で息をしながら嘆く。まるで、知恵熱でも出ているような気分だった。
「困った」
「何に困ってるのか、教えてくれる?」
控え目な女性の声が聴こえて、志鳳は顔を上げる。
硬めの質感の金髪をツーサイドアップにした女性が、まるで最初からそこにいたような佇まいで立っていた。
眠そうな目には覇気がなく、態度も相まって小動物のような雰囲気がある。
「チトラーチ。ここ、僕の部屋」
「勿論、知ってるよ。馬鹿にしないでくれる?聖蹟連合の仲間だから、会いに来たんだよ」
金髪の女性──チトラーチ・シャンドルールは、聖蹟連合に籍を置く超越者だ。
「僕はもう聖蹟連合じゃない。今は花蓮会議に所属してる」
「そうだっけ。でも、部屋に入るくらいは許してくれる?」
だが、聖蹟連合の最高戦力──神聖喜劇には加入していない。
つまりは、最低限の協調性すらない問題児であった。
「おい、君。女性が軽率に男性の部屋に上がるものじゃないぞ」
自分達の事を棚に上げて苦言を呈するアインに、チトラーチが首を傾げる。
『そうなんだ。じゃあ、これで認めてくれる?口伝──辻褄合わせの経歴』
「っ!皆、何か変わっ……!ぁ、声が」
突然の術式行使。志鳳は被害状況を確かめようとしたが、その前に自身の声が普段よりも高くなっている事に気付く。
「……皆、僕どうなってる?」
「私の目が正常なら、女性になっているぞ」
「なにあれ!?志鳳さんが、長身ダウナー僕っ娘お姉さんになったわ!でも、これはこれで……ありよね!」
「変わったシグネットですねぇ」
志鳳は女性になっていた。
「これで女性の部屋になったよ。……流石に第0位階には通りが悪いね。長くは無理そうだから、早く事情を話してくれる?」
月虹のチトラーチ・シャンドルール。
シグネットは情報。対象の情報を書き換える事で、人間相手であれば性別などの個人情報まで変更できる、第1位階。
「そういえば、断章取義に移籍したなら、所属に合わせて真名も変えたんでしょう。今の名前を教えてくれる?」
「梧桐志鳳」
「シホウ。これからも、よろしくしてくれる?」
「これまでも、よろしくした覚えがない」
「最高戦力に入らない超越者は問題児って、本当なんですねぇ……」
「と言うわけで、来た。教会の綺麗さに定評のある真説大陸のムー遺構」
「風が強いね。私の身体、支えてくれる?」
「自分で立って、チトラーチ」
ムー遺構には常に強風が吹き荒れている。
また、大きく隆起した地形が多く、ほとんどの都市はその上に設置されている。
適切な風の流れに乗り、高所まで飛ぶ技術を身に付けなければ、まともに生活もできない。
「元に戻らない。性別が変わると身体の動かし方の勝手が違う」
志鳳が自分の小さく滑らかな手を見ながら言う。
前衛にとって、肉体のバランスを崩されるのは致命的だ。
志鳳は複合シグネットにより後衛の適性もあるが、体術を使った近接戦に特化した異能者も多い。
そういう者にとって、チトラーチは厄介な相手だ。まあ、引力のシグネットで重心を目茶苦茶に崩してくる杜鵑花には及ばないが。
「シホウ。風の乗り方が分からない。教会のある場所まで、背負って連れていってくれる?」
『横着。君の運動神経なら簡単なはず。まあ、良いけど。口伝──金剛琢』
背負ったチトラーチが落ちないように、光の鎖で縛り付ける。
チトラーチは情報の固有術式を使い、身長を運びやすいサイズに縮めていた。自力で頑張るつもりは微塵もなさそうだ。
そんな彼女をおぶって、志鳳が風の中に身を投げ、ふわりと飛んだ。
気流に逆らわずにゆったりと上昇し、最大高度に達する。
『同志!』
LITH端末の中のプレイスホルダーが、閑話で叫んだ。
『いつの間にか、囲まれてるかえ!この意識のパターンは、おそらく遺物使い──異端者!失伝──溢れる程の目覚め!』
志鳳の意識が極度の集中状態に入って間もなく、彼の肩を黒い光線が射貫く。
咄嗟に錬術で足場を錬成し、空中で身を躱したおかげで、軽傷で済んだ。活術で負傷を治癒しながら、固有術式を発動する。
『失伝──|針の上で天使は何人踊れるか《シースレス・エンジェル》』
光のシグネットによる、拡張思考回路の形成。志鳳の思考が加速する。
『異端者。しかも、複数か。失伝──この世は舞台』
異端者。
自身に適合した遺物を主力として用いる人間の事だ。
ちなみに、遺物は異能者でなくとも適合すれば使えるので、未能者も異端者になり得る。
『さっきの攻撃、多分防御は無理だった。遺物はやっぱり危険。再演──厄災を示す地図』
梧桐志鳳は、彼自身が独立型の遺物である。
故に、同じ遺物の影響を受けにくいが、範囲や対象を絞って運用すれば、志鳳に対しても遺物は効果を発揮する。
アクイレギアで瘴気の結晶を広めた主犯の男や、残体同盟のヴァヴ・パープが、遺物によって志鳳の認識を狂わせたように。
『包囲の穴はあっちか。再演──凝り固まった流血』
光の壁が志鳳とチトラーチを押し出し、高速で弾き飛ばす。
『シホウ、あれは貴方の敵なのか教えてくれる?』
『そう。……放置すると、摂理を壊す火種になりかねない』
『摂理。それなら、世界の敵だよ。つまり、私の敵でもあると言ってくれる?』
チトラーチは身長を元の大きさに戻しながら、全身からマナを迸らせる。
『手分けしようよ。向こうは私に任せてくれる?』
チトラーチの方は問題なさそうだ。
協術で肉体を実体のないマナと同調させて、敵の攻撃を擦り抜ける。
呪術で気配を隠蔽し、錬術で錬成したマナの短剣を、発術で射出する。
律術で敵の攻撃にマナで干渉し、暴発させる。
そして、活術でマナを活性化し、強化した肉体で蹴り飛ばす。
シグネット自体に攻撃力がなくとも、共有術式を完璧に使いこなせば、最高峰の前衛として戦える。その見本のような戦い方だ。
問題は、こちら。
『この異端者集団、元は対抗神話の実験体だったのか。普通の異端者にしては、あまりにも強過ぎると思ってた』
志鳳は過去を読んで納得する。
対抗神話。
祝福から遺物まで、あらゆる異能に関する事柄を研究する独立機関。
その実態は、善悪や保身すら考慮しない偏執的な研究者達が傍迷惑な実験を繰り返す、気狂いの巣窟だ。
彼らは他者は勿論、自分の体を実験台にする事も厭わない。
対抗神話の本拠地は、戮辱者や救いようのない極悪人が放り込まれる失楽園に次ぐ、立ち入り禁止の隔離区画となっている。
しかし、その研究成果が有用過ぎる為、外部に被害が出るまでは、連盟も迂闊に手を出せない。
『特に、あの黒い光線を出した男。遺物を肉体に埋め込んでる。対抗神話はやっぱり正気じゃない』
『名前は違ったが、余の時代にも前身となる組織があったかえ。……黙示録を潰し終えたら、次は世界の為に、あの機関を潰そう』
『賛成。僕も昔、実験体にされかけた』
『同情するかえ。少々、汝の体は研究対象として極上過ぎる』
規格外の貫通力を誇る黒い光線を、紙一重で避ける。
遺物に適合する為に必要なのは、強烈な願い、もしくは欲求。
そこだけ切り取ると、内面を反映するシグネットに似ているが、その性質はもっと不安定だ。
異端者として遺物を使い続けると、段々と自己の欲求を抑えられなくなる。
自分の渇望を満たす為に、何処までも暴走していく。今のように、超越者に喧嘩を売るような危険行動にも、理性の歯止めが利かなくなる。
超越者ほどの強い精神の持ち主でなければ、直ぐに呑まれて破滅するのだ。ある意味では、黙示録に近い性質である。
『して、どうする?黒い光線の異端者の意識は、高速で移動しておるかえ。移動型の異端者との連携。しかも、今の体では思うように動けないかえ。汝の手札でこの状況は……』
『大丈夫』
志鳳は言い切った。
『この体でしかできない事がある』
思い出す。
アクイレギア。戮辱者との戦闘の終了後。アインを守るように飛んで来た光の矢。
その時から、ずっと彼は、梧桐志鳳の無意識は、その人物の過去を追跡していた。
そして、この女性の──梧桐詩凰の肉体を得た事で、全てを思い出した。
『再演──独り善がりな栄光』
自分自身に最適化された一代限りの奥の手。故に、失伝。
本来ならば、他者に伝授する事もできない。
しかし、同一人物、同じ記憶、同じ性別、そして──共通の大切な、親友。
これだけの条件が揃っていれば。
「感謝する。もう一人の僕」
──それはもはや、不完全な模倣の域を超越する。
志鳳の背後に、後光にも似た光の輪が出現する。
四方八方に光の矢が拡散する。
「これにて、終演」
その光の雨は、異端者達を何処までも追尾して、射貫いた。
『クハハッ!自分自身からの感謝。感動したかね、孤高の青?』
「……天使が僕の存在に辿り着くのが、想定よりも早かった。それは、嬉しい誤算」
『そして、こちらは残念な誤算、と』
「五月蝿い」
僕は悪魔を力なく睨んだ。
『遺失支族!人間を滅ぼす身で人間社会に溶け込むとは、我輩の同族は皮肉のセンスがあるらしいな!』
「仕留めきれずに逃がした上に、名刺まで貰った。屈辱」
名刺なんて握り潰したかったが、スフィアに回収されてしまった。
どうやら、そこから敵の情報を調べるつもりらしい。衝動で行動しないで下さい、と怒られた。
やっぱりあの人と同一人物なんですね、ってどういう意味だ。
そこまで言うのなら、彼女の分析に期待して待とうと思う。
「ルベン通信、シメオン金融、ダン食品、ナフタリ機械、ガド建設、アシェル運輸、イッサカル資源、ゼブルン雑貨、エフライム製薬、マナセ広告。──何処も大手ですね」
スフィアが財界を探って手に入れた、遺失支族と思われる経営者のリストを眺める。
「シビュラも知っちゃってる、ツヨツヨ大企業ばっかりだよ!というか、普通に日頃から利用しちゃってるよ!」
シビュラが頭を抱えた。
「真説大陸にも活動範囲を広げてますね。私も何度か名前を見る機会がありました。慈善事業の名目ですが、実際は何をやっているのやら」
スフィアが悪党の顔で笑う。戦闘ではなく策謀の領域になったからか、以前よりも生き生きしてるな。
「ところで、王!黙示録と戦っちゃったみたいですけど、強かったですか?」
シビュラは謀略戦には無関心なようで、単純な話題を振ってくる。上位者の処理能力を考えると頭は良いはずだが、性格的に向いてないんだろう。
「ああ、そういえば、周囲に被害が出ないように、上空まで殴り飛ばしてから戦ったんだった」
僕はクラシーヴィとの戦闘の内容を思い出して、顔を顰める。
「そもそも、僕は正面戦闘が本領じゃない。淫祠邪教の、いや球状星団の強みは、卑劣な初見殺し。特に僕は超々々遠距離からの不意討ち狙撃が得意で……」
「珍しく早口になっちゃってる……。そんなに悔しかったんだね」
「結論からお願いします、王」
僕は嘆息して吐き捨てた。
「あれは反則。少なくとも、あれに個人で勝てる異能者はいない。勿論、第0位階のボス格も──古の女王でも」
僕達の救世は、一筋縄では行かないらしい。




