40 いざ、新春タケノコ狩り
最近は雪が降る日が減り、だんだんと暖かい日が増えてきた。
拠点の外に出てあたりを見まわせば、ルーシーが作って並べていたウサギ雪だるま三人集がくったりとくびをかしげている。
「もうそろそろ農作業を再開できるな。これで領主様に野菜を納められる。畑を耕して、それから……」
ゴードンはやはり軍人。
どうにも家にこもっているのは性に合わなかったため、体がなまってしまいそうだった。
監獄島にいたときは監視が基本の仕事。
絶海の孤島だったため、本土のように脱走しようとする囚人をとらえるなんて大仕事が発生するのはまれだった。
しかしここではゴードンも働き手として一緒に作業している。
ヨイから「エリオットとリタはいつか刑期を終えたとき平民として生きていくから、囚人と監視ではなく、一緒に行動して平民としての生き方を教えてあげてください」と言われているのだ。
エリオットもリタもひとあたりのいい善良な子で、真剣に働いてくれているから、このままいけば刑期を数年短縮してもらうのも可能だろう。
監獄島から報告によると、親の方はいまだに「私達は悪くない金を返せ」という態度でいるらしいのだから、『トンビがドラゴンを産んだ』と兵たちの間で揶揄されているらしい。
「おぉ、ゴードンさん。もう外におったか」
ものおもいにふけっていたら、リタが麻袋と農具を抱えて出てきた。
「今日は天気がよさそうだすけな、絶好の山菜収穫日和らよー。とくにクリティアお嬢様から依頼されているタケノコはな、ごはんやてんぷらにするとうんめぇから楽しみらわ」
「俺はタケノコというのをみたことがないからわからないが、そんなにうまいものなのか」
「タケノコは生えている時期や地域が限られているから、文化のないこっちじゃ口にしたことある人はいなくてとうぜんらわ」
この子は今年で十四歳のはず。
なのにここの島民の中でダントツに年寄り臭い。
そして貴族の屋敷で育ったという経歴にしては、料理や農業の知識に長けている。
リタの姿形はこどもなのに、故郷の母と話しているかのようなさっかくを覚えるゴードンであった。
ゴードン、エリオット、リタ、シンディの四人が探索組として山に入った。
地図を広げて、竹林ゾーンを目指す。
山道を登りながら、ぴーたんが何やら笑い出す。
『クックック、このゼルフェイン・オルステッド・アルベロブルがタケノコとかいう珍味を食らってやろうぞ!』
「あんたはそこの雑草でも食べてなさい」
『ぐふっ』
飼い主にチョップされてとまった。
「ぴーたん、どうせ怒られるんだからへんなこと言わなきゃいいのに」
『人の子にはわからないのかこのロマンが! 未知の食の探求を楽しめぬとは』
「おれにはなんとなくわかるよー、ぴーたん。土産でもらう異国の菓子はうめぇもんだ。自分で作れねーもんはとくに」
「ぼ、僕だって土産でもらう菓子くらいは食べるぞ。南方の干しフルーツは良かった」
『ぬおおおおおお、我は高貴なるカピバラなるぞ! 土産菓子のはなしなんぞしとらんわ!』
シンディはそんなやりとりをきいて笑っている。
途中に出てくるモンスターを退治しながら、一行は竹林ゾーンにたどりついた。
まだところどころうっすらと雪が残っているが、リタは足元を見てまわり、ある一点で立ち止まるとクワを振り下ろした。
「なんでそんななにもないところを掘るんだ、リタ」
「ここにあるんらよ。ほれ、とれた」
クワでえぐったところをほりだすと、三角柱のような形の茶色い物体が顔を覗かせた。
「おお、これぞタケノコ!」
リタが回収するより早く、ぴーたんがタケノコに食いついた。
ひとくちかじったしゅんかん、ぴーたんがタケノコをふきだした。
『ぶふぉおおおおおお!! マズイ!!!! マズすぎる!!!! 小娘よ、こんなまずい茶色いもののどこがうまいのだ! 我はだまされぬぞ!』
「ええ!? あんたの味覚がおかしいだけじゃないの? すごくおいしいものだからぜひ送ってほしいっていう依頼なんでしょ?」
シンディはけげんそうだ。
「あっはっは。そら、アク抜きしなきゃなんねーからなぁ。下処理は帰ってからじゃないとできねすけ、今は収穫しよ」
「俺も手伝おう。見分けるコツなどがあるのか?」
「このさきっちょとおなじようなちょっと緑色の部分が顔を出していたら、そこより下にクワをさす」
リタはあたりをみて、なれた手つきで山肌にクワを振り下ろす。
するとまたそこにもタケノコが出てきた。
「あらほんとにあった! 案外わかりやすくていいわね」
「よかった。これなら僕にもできそうだ」
エリオットも安心の息を吐く。
手分けして掘り起こしていく。
「みんながタケノコを掘ってくれるならおれは山菜を収穫しようかね」
リタはタケノコだけでなく、くさむらに分け入ってうずまきの草をいくつも収穫してきた。
「いやぁ、これでしばらくは煮物にこまらんな。畑に種を植えても育つまでに時間がかかるが、それまでのつなぎにはなる」
「こんなにいろんな草が生えているのに、よく食べられるものの見分けがつくな。それも女神様の啓示? 天啓? っていうやつか、リタ」
「あー、うんうん。そういう感じらよー、兄さん」
しばらく山の幸をしゅうかくしてまわり、帰る頃には持ってきた麻袋が全部ぱんぱんになった。
リタ「フキノトウやコゴミがうまいんらよぉ。煮物と天ぷらにしてくれるわね。孫たちは小さい頃、にがいからあんますきじゃねって手えつけんかったけどな」
シンディ「……リタがおばあちゃんだって再認識するわねぇ」





