37 リタはかんじきを作る。
今日も今日とて竹を加工した商品作り。
エリオット、エーデルフリート、シンディとゴードン……男性陣は材料の竹を取りに行っている。残ったメンバーで丈を加工している。
リタはいつもとは違うものをためそうと考えた。
細い曲がり竹を二本、細い縄でくくりつけだ円の輪っかを作る。
ルーシーが横からのぞき込んできた。
「何を作るつもりなのです、リタ?」
「“かんじき”らよー。どっせい! よいしょー!」
リタは縄の端を踏んづけながら、竹に強めにくくりつける。クモの巣のように輪っかの中で縄のあみをつくる。
「かんじきってなんです?」
かんじき。この世界にはないアイテムだ。
ルーシーも、もちろん見たことも聞いたこともない。
「かんじきはな、雪の上を滑らず歩けるようになるアイテムさ。日本の雪国で古い時代に使われていたものらよ。日本人でも現代では使う者が少ない」
「ヒトの靴だと雪道はツルツルしちゃいますものね」
「ルーシーみたいにふんばれるようになるな」
「それは楽しみですー!」
しばらくふんとうして、ついにかんじき第一号ができた。
「よっしゃ! おおい、フレイア、サラ! ちょっとこれを試してくれないかね」
リタが外に出て二人を呼ぶと、フレイアとサラは不思議そうにかんじきを見る。
「なんだ、リタ。そのクモの巣みたいな変な物は」
「試すって、これをかい?」
「そうさー。交代でこれをはいて感想を聞かせてくれ」
まずフレイアの両足のブーツにくくりつける。
「……ブーツにつけるものなのか、これは。なんというかすごく不格好だな」
「まあまあ、そう言わずに。ちょっと家のまわりを歩いてみてくれ」
背中を押すと、フレイアはけげんそうにしながらもかんじきで歩き出した。
ざくざくといい音をたてながら雪の上を歩きまわり、一周してもどってきた。
最初のいぶかしむ顔と一変して、楽しそうだ。
「これは面白いな! 足が雪に沈まないし、滑らない」
「そりゃあよかった。次はサラ。試してみてくれ」
サラのブーツにくくり、サラもあたりを一周して帰ってきた。
「いいねぇリタ! これは多めに作って探索班に渡したら喜んでくれそうだ。雪道を歩きやすい。作り方を教えとくれよ」
「ふふふ。そう言ってくれると思った。早速量産しよう!」
「ルーシーも作りますー!」
みんなでわいわい言いながら細竹を縛り、かんじき作りに集中する。
男性陣が戻って来たときに見せたら好評で、次回の探索から正式導入されることが決定した。





