28 みんなで道を作る①
雨が二日降り続き、ようやく晴れた。
拠点のあたりは大きな水たまりがいくつもできていて、小さなカエルが泳いでいくのが見える。
畑の野菜たちはたっぷりの水を得て元気に青々と葉を伸ばしている。
「この様子なら、朝の水やりはいらねぇな」
今日から道路作りが始まる。
と言っても、大陸側のユージーン領から大工を呼んで建設してもらうのではなく、リタたち島の住民自らの手で造り上げる。
住民自ら作れる形式の道路、それは土の道だ。
土のうに土を詰めて高さを合わせて平らにする。その上に土をかぶせて、押し固めローラーで均していく。
土のう袋のぶん高さが出るため、雨が降っても道より低い位置に流れていくため、道がぬかるむことがなくなる。
これは地球のケニアでも使われている工法だ。ケニアの田舎町に日本人の技術者が赴き、土の道の作り方を教えた。
首都から遠い僻地だから、アスファルトで舗装した道が壊れてもなかなか修理業者は来れない。土で作った道なら、修繕や延長するときも材料はそこら辺にある。
クシェル島は離島ゆえに、現地住民が自分たちで作り、直すことが何よりも重要なのだ。
リタは大きく伸びをして、スコップを背負う。
エリオット、サラ、エーデルフリートもそれぞれ土のう袋とスコップを持っている。
ゴードンとフレイアは監視役ではあるものの、自分たちも住民だからと言って建設に携わることにした。
「こういう力仕事を子どもだけに任せるのは、おれのプライドが許さん」
「ゴードンさん。私も、できることをします」
監獄島は監視だけしていればよかったが、ここではまるで違う。けれど二人とも、村の礎を作り上げるという仕事は、やりがいがあると感じていた。
手分けして土を袋に詰めて、隙間なく並べていく。
そこに土をかけて均す作業は、シンディのゴーレムで一気にいく。
人数が多いとは言えないため、朝から昼までに作れたのはほんの数メートルだった。
けれど、これを毎日少しずつ伸ばしていけば、二月ほどで海まで舗装できる。
エリオットが泥まみれになりながら、袖で額から滴る汗を拭う。
「はぁ、腕と足がパンパンだ。こんなに疲れる仕事なのに、土木の仕事は貴族よりずっと収入が低いんだよな。不思議だ」
領主の役目は采配を振ることであり、現場で汗水垂らすことではない。領主側に生まれて上に立つために教育を受けたエリオットには、畑仕事も道の建設も本来自分とは遠い仕事だった。
「エリオット。どっちが偉いすごいということはないわよ。馬がいて馭者がいて、荷台がないと馬車は動かないんだから。馬だけでも馭者だけでも荷台だけでもだめなの」
「そうだな」
シンディに言われて、エリオットは深く頷く。
エリオットは投獄される前は、自分より下の人間の言葉に耳を傾けない人間だった。今なら、自分がいかに愚かだったかわかる。
「みなさーん。休憩にしませんかー」
ルーシーが声をかける。ぴーたんがサンタのソリよろしく、小さな箱を引いてきた。
箱の中にはティーセットが人数分用意されている。
「やったー休憩ー! ありがとうルーシー。俺、ちょうど喉が乾いていたんだ」
『我にも感謝せよ。このゼルフェイン・フォン・マルティネス様が人の子らのものをわざわざ運んで…………ギャーーーーー!』
ドヤァと威張るぴーたんの背中に、ムーが爪を立てた。
もしかしてぴーたんは爪とぎと思われているのでは、とみんな内心思うがツッコまない。
サラが土を掘る横で、ムーも土を掘りはじめた。
「ニャァ」
「おや、ムーも手伝ってくれるのかい? 猫の手も借りたいという言葉もあるものね。ハッハッハ」
ルーシーが竹カップにお茶を注いでひとりひとりに手渡していき、エーデルフリートの番がきた。
「お茶ーー。のどかわいた」
「あ! デル、だめよ! 呪い封じは汗で消えて……」
シンディが止めるも間に合わなかった。
『ギィアァアァアアオーーーウ!!!!』
マンドラゴラ化するエーデルフリート。
咄嗟に耳をふさぐみんな。ムーはリタが上着で隠して保護する。
ぴーたんは超音波をくらって気絶した。
「んもう!! だから封じを書くとき気をつけろってあれほど言ったじゃない、お馬鹿!!」
『ギャオオオウ!!』
ごめんてー。と言いたいらしい。目を覚ましたぴーたんがキレてエーデルフリートに突進したのは言うまでもない。





