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act.72 輝く遺構、静かなる連帯の休息

「モニカ……体調が優れないなら、やめておこう」

「いや、えと……大丈夫だから!」

「そ、そうか?」


 語気を強め、最後は叫ぶような声がモニカから出る。その声を聞く限りでは元気そうに思える。


「ヴィクトリアは大丈夫か?」


 怪我を負っている様子はなかったが、魔力の消費でいえば彼女が一番ではなかろうか。用意していたであろう魔石も、オルトロスにゴーレムごと破壊されていたはずだ。


「問題なかろう。わらわも先の物体を追うのが先決じゃと思うぞ」


 疲労くらいはしていると思ったが、イグナールの思い過ごしらしい。彼女はいつも通りの様子だ。結局、一番の痛手を負ったのはイグナール自身であった。ならば問題ない。


「よし、ルイーネ遺跡に行こう」


 モニカ、マキナ、ヴィクトリア、エルフリーデと共にルイーネ遺跡へと向かう。オルトロスの出現により入り口付近は破壊されているが、下の階層へと行くための階段は瓦礫などで塞がっておらず無事なようだ。


 一階層、二階層くらいまではイグナールとモニカも足を踏み入れた経験はある。地下だけあって薄暗い印象が残っているが、それくらいのものだろう。階段の手前で松明に火を灯し、下の階層へと降りていく。しかし、階段を下りていくにつれ、光源など必要なかったと思わされた。


「明かりが……」


 長年この遺跡を研究していたエルフリーデからしても、初めての光景だろう。地下だというのに、遺跡内部は煌々とした明かりに包まれていた。バージス付近の研究所に行っていなければ、イグナールもモニカも驚いていただろう。


 ルイーネ遺跡の内部は、一言で言えば広大だった。天井も高く、廊下はあの巨体のオルトロスが通るにしても十分なほどの幅がある。部屋と部屋の区切りだった壁らしきものは至る所に散見されるが、どれもその意味を成していない。長く魔物が巣くっていたのだ。この荒れ具合も納得できる。金属製の壁の向こうからは、何やらよくわからない紐のようなものが見え隠れしている。


「隅々まで調べたと思っていたけれど、全容はこんな風になっているなんて……」


 エルフリーデがキョロキョロと辺りを見渡し、強い関心を示す。


「すまないエルフリーデ。研究のために色々調べたいだろうが、今は先を急ごう」

「え、はい! ご、ごめんなさい……」


 強く咎めた覚えはないのだが、エルフリーデは叱られた子供のようにしょんぼりとしてしまった。それを見て、イグナールの心に鈍い罪悪感が走る。



 特に大きな発見もなく、魔物の気配も感じられない第一階層。遺跡内が照らされていることもあり、難なく第二階層への入り口を発見する。


「降りよう」


 短く言って先頭を歩くイグナール。第一階層を隅々まで確認したわけではないが、あの銀色の水は、おそらくもっと下の階層へ向かったはずだ。そもそも第六階層が開かれるまで、オルトロスなどという怪物は遺跡内に存在しなかった。そんな奴、もしくはそれに類するほど強力な魔物が存在していたならば、各地から優秀なギルド員を総動員して討伐隊を結成していたはずだ。


 ならば自然と導き出される答えは、オルトロスが第六階層以降からやってきたということ。そしてそのオルトロスに取り憑くように全身を覆っていた銀色の水……あの物体も第六階層からやってきたという、単純な話だ。銀色の水を追うにしても、紫電の属性について知るためにも、目指すのは第六階層。


 エルフリーデは明るく照らされた遺跡内部に強く興味を惹かれている。しかし、申し訳ないが今は先を急ぐことが先決である。


◇◇◇


「ふあぁぁ。しかし、だだっ広いのう」


 第三階層に降りてきた頃、大きな欠伸と共に愚痴を漏らすヴィクトリア。そういえば、彼女は魔石に魔力を込める作業のために寝不足であった。いつ何時、何が飛び出すかわからず、ずっと気を張っていたイグナールの肩の力が少し抜ける。すると、突然の疲労感に襲われ足元がふらついた。


「イグナール!」


 後ろを付いてきていたモニカがイグナールを支える。


「ありがとう、モニカ」

「いいのよ。それよりも少し休憩しましょう」

「けど――」

「妾も休憩には賛成じゃ。寝不足じゃしな」


 イグナールの言葉を遮るようにヴィクトリアは言う。


わたくしもとても疲れました。今にも膝をついてしまいそうです」


 無表情かつ、まったく感情を感じさせずにマキナが言う。二人とも、イグナールのことを気遣ってくれていることは明らかだった。


「あぁ……すまない。そうしよう」


 先を急ぐとエルフリーデをたしなめたばかりだというのに、自分の不調で歩みを止めるのは気が引けるが、イグナールは仲間の好意に甘えることにした。おそらく先程の戦闘のダメージは、モニカがしっかりと治してくれたはずだ。これは、張り詰めていた緊張の糸が切れただけなのだろう。


 少し休めば、十分に回復する。皆で適当な場所に腰掛け、しばしの休憩を取ることにした。


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