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act.29 静かな朝、始まる新たな冒険


 モニカとマキナは宿屋の食堂で過ごしていた。人はまばらで、四人席に二人だけ。モニカの前にはコップがあるが、マキナの前には何も置かれていない。


「おはよう、イグナール。いや、もうこんにちはだね」


 明るい笑顔で迎えるモニカ。寝坊を責める様子も、皮肉もない。ただの事実を口にしているにすぎなかった。これだけ待たせたのだから、多少の叱責は覚悟していたイグナールは拍子抜けしてしまう。


「怒らないのか?」


 これほどの大遅刻で何も言われないのは逆に不安になる。むしろ「遅い!」と怒られる方が気が楽だ。モニカの笑顔の裏には、イグナールが予測できないような罰が待っているのかもしれない、と少し疑ってしまう。


「何を怒るの?」


モニカの不思議そうな表情に、イグナールは少し戸惑いながら「遅れてすまない」と謝る。


 その時、マキナが席を立ち、モニカの隣の席に移動する。そして、イグナールに「こちらへ」と促す。マキナが先程まで座っていた席にイグナールは座る。


「もしかして、寝坊したことを怒ってると思った?」


 椅子に座った途端、モニカは本当に不思議そうに目を細める。


「ああ……かなり待たせたからな。本当にすまない」


 モニカの穏やかな様子に、イグナールは却って緊張する。しかし、彼女は威圧感もなく、ただ微笑んでいるだけだった。


「別にそれくらいで怒ったりしないわよ。イグナールがそれだけ魔力を消費したってことでしょう? 初めてなら仕方ないことだと思うし、私だって同じ経験があるから」


 そうだった。モニカは魔法使いとしてイグナールの大先輩だった。魔力を大量に使ったことによる疲労は、彼女も通った道なのだ。


「それに、昨日の戦いで服が破れちゃったから、マキナと買い物に行ってたの。だからずっと待たされてたわけじゃないわよ」


 モニカは服の肩口を摘まんでひらひらと見せつけるように笑う。どうやら新調した服に多少機嫌が良いらしい。


 彼女の視線は、何か言ってほしいように感じられる。イグナールは、以前の服との違いは新しいことくらいしかわからなかったが、とりあえず「綺麗だな」と褒めておいた。


そして話が膨らむ前に、本来なら朝済ませるつもりだった今後の相談に切り替えた。


 食堂のテーブルに広げられた地図には、イグナールたちが住む世界「ウェルト」の全体が描かれている。


 地図の中央を占めるのは広大なコンチネント大陸。その東側には山や森、河川、町が詳細に描かれているが、西側の四割ほどは空白だ。その中央には大きく「魔界」という文字が刻まれている。


 この地図は安価なもので、魔界に関わらない普通の人々にとっては十分だ。しかし、イグナールたちにとっては物足りない。


 モニカが研究所の場所を手書きで加え、イグナールたちにとって唯一無二の地図が完成する。細かい位置はマキナが把握しているため、正確さには問題ないだろう。


「やっぱり次の目的地はルイーネよね」


 未開の遺跡があると言われるルイーネは、バージスから真東に位置する。


 そこにはモニカが印をつけた場所があり、未開の遺跡は古代の研究所や施設である可能性が高い。つまり、イグナールの知りたい情報が眠っているかもしれない。


 また、ギルドの受付嬢カミラが紹介してくれた古代魔法の研究者もルイーネにいる。今回の件で、ルイーネへ行く理由はさらに強まった。


「その後は……この施設を目指そう」


 さらに東には、巨大な山脈ヴァスティーアがそびえているが、その先にもモニカが印をつけた施設がある。


 山越えにはなるが、ルイーネから一番近い施設だ。山道はある程度整備されているため、さほど辛い旅にはならないだろう。


「それじゃ、まずはルイーネに向かうことで決定ね。問題はお金だけど……」


 スライム討伐で得た報酬はあるが、長旅をするには心許ない。


「ルイーネにも討伐ギルドがあるだろうから、そこで依頼を受けて資金を調達するしかないな」


 バージスで滞在して資金を稼ぐ手もあるが、この町は物価が高い。イグナールとモニカのランクでは受けられる依頼も限られている。


 効率を考えるなら、早々にルイーネへ移動する方が良さそうだ。


「じゃあ、午後は準備にあてて、出発は明朝にしよう」

「はーい。今度は寝坊したら許さないからね?」

「ああ、気をつけるよ」


こうして、イグナールたちは宿屋を後にし、旅の準備を始めた。


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