act.24 秘密の地図と闇の槍
「ここの点がこの研究所の位置でいいのよね?」
「はい。その通りです」
モニカは確認すると、羽ペンとインクを取り出し、地図に書き加えていく。彼女は目線を両方の地図で往復させ、次々と研究所の位置を記入していく。
「え? これって……」
「どうした?」
一心不乱に作業を進めていたモニカが突然手を止め、驚いた表情でイグナールを見つめる。
「見て! 魔界の中にも点滅してるところがあるの」
彼女の指さす場所を確認すると、それは間違いなく「魔界」と記され、詳細が不明な部分に存在していた。つまり、魔界の中にも研究所か、それに類する拠点が存在しているということだ。
二人は同時にマキナを見る。
「私のメモリーには該当するデータはございません。おそらく、その情報にもアクセスできないかと思われます」
「詳しくは分からないが、魔界の中にも拠点があるのか……マキナ、念のため調べてみてくれ」
無理を承知で頼むと、マキナは無言で再び操作を始める。しかし――
ビー!
先程と同じ警告音が鳴り響き、赤く光る。やはりこの情報も閲覧できないようだ。しかし、魔界に拠点が存在することを確認できたのは大きな収穫だった。
「これは大きな手がかりだな」
世界に点在する研究所や拠点の位置が判明したことで、自身の力を知るための手掛かりが増えた。これだけでも十分な成果があったと信じたい。
「マキナ、他にここで得られる情報はもうないか?」
ここはマキナにとって自分の家も同然の場所。彼女の知識を最大限に活用するのが正しい。
「はい、恐らくこれ以上の情報は得られないかと思います。この拠点は、私たちオートマトンの保管や運用実験が主な目的の施設ですので」
「他のオートマトンはいないの? イグナールの魔力があれば、みんなを動かせるかもしれないけど……」
モニカが彼女に尋ねる。マキナの言う事が本当なら彼女以外のオートマトンが大勢いる――保管されている――はずだ。
「私が目覚めた保管庫には、他のオートマトンは一体も残されておりませんでした。彼女たちの行方は不明ですが、恐らく全て失われていると考えます」
「彼女たち」という言葉に、オートマトンは全員女性の姿なのかとイグナールは思う。戦いのために作られた人形――もしかすると、マキナと同じ顔を持つ人形が複数存在していたのかもしれない。それを想像すると、少し身震いするイグナールだった。
「他に探索すべき場所はあるか?」
情報が尽きたこの部屋を離れ、別の部屋の探索を提案すると――
「はい、武器庫の方に、私共オートマトンに用意された武器がありますのでそれを確認したく思います」
マキナ達の武器……先の戦闘で彼女はその身だけで戦っていた。人の域を軽々と超えた彼女の膂力は凄まじいものだった。
そんなマキナが武器を有して戦うなどオークに金棒である。
「よし、確認してみよう」
それに、これだけの技術を持った人々が魔王討伐のために作った武器だ。どれ程の物か単純な興味がある。イグナールは少しばかり心を弾ませながらマキナの後を付いていく。
◇◇◇
「これは……」
武器庫と聞いて、様々な武器が並んでいることを期待していたが、実際にあったのは奥にたった一本だけ残された槍だけだった。
なんだかここに来てから落胆しかしていないな……。
雷魔法の情報に関してはいいが、今回の武器庫に対しては勝手に期待を膨らませた自分が悪い。だが、わかってほしい! 男たるもの武器に心躍らないはずがないだろう⁉ なんてモニカにそんなことを語っても共感を得られるわけはないし、マキナに至っては「わかりかねます」の一言だろう。
イグナールはその気持ち一切を自分の心の中に留め、表情に出ないように努めた。
「識別名マキナ確認。ロック解除」
どこからともなく響いた女性の声と共に、槍が解放される。マキナはそれを手に取り、軽々と振り回して見せた。
「お待たせしました」
槍を手に戻ったマキナが深々と頭を下げる。
「もしよかったら、その槍を見せてくれないか?」
「はい、問題ありません」
イグナールは彼女が軽々と振っていたところを見て、槍を片手で受け取る。
だが槍はずしりと重く、すかさずもう片方の手を添える。
黒く闇を思わせる程のまさに異色。そしてこの槍は規格外に重い。
どれだけの怪力自慢でもこの槍を自由自在に振るえるのはあれだけの膂力を有す彼女だけだろう。
一見では真っ黒で何の変哲もない槍に見えたが、なんという質量であろうか。両手で必死に支えながら細部を見ていくが、穂先から石突までが同一の金属でできているように見える。
読んで頂きありがとうございます!
この作品を「良かった!」「続きが気になる!」と思ってくださった読者様は
ブックマーク登録や下にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると励みになります!




