act.15 強引突破
「ごめんね。待たせちゃって」
イグナールとマキナが話しをしているとモニカが追いついてきた。
「こちらこそ申し訳ございません。配慮が足りませんでした」
モニカに頭を下げるマキナ。立派な屋敷なら映える姿だが、いかんせんここは深い森の中である。汗一つ、疲れ一つ見せないマキナの姿とメイド服は現実味を薄くする。
それに引き換えモニカは折角風呂で汗を流してきたのに、もう汗で濡れている。どこかでひっかけたのか、白い太ももにはうっすらと赤い筋があった。
「ねぇマキナ、この道、じゃない道を真っ直ぐいけば研究所なのよね?」
「はい。その通りでございます」
よし、とモニカが声を上げるとスクッと姿勢を正した。
「じゃぁ、二人とも下がって!」
進路上のイグナールとマキナを横に退かせる。
「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」
モニカの詠唱で大人が三人は入れる程の巨大な水弾が形成される。
「おいおい、モニカまさか!」
「そのまさかよ。道がないなら作ればいいじゃないってね! 研究所は地下なんでしょう? じゃあ問題ないよね。――――アクアボール!」
彼女は掛け声に合わせて手を振った。その手が示す方向へ、真っ直ぐ巨大な水弾が猛スピードで進む。
立ちふさがる茂みや木々を粉砕し、地面を抉り、あっと言う間に道ができあがっていく。
破壊と創造は表裏一体とは言うが……まさにこのことだろうと水弾の通り道を見てイグナールは思った。
破壊と再生の女神となったモニカは腰に手を当て、フン! と鼻を鳴らし得意気な表情を浮かべる。
「すごいな……」
「思い切りが」と言いかけたイグナールであったが、モニカが得意気な表情から自慢げな表情に変わったのを見逃さなかった。
「まぁね! もっと早く気が付けばよかったわ。さぁ、出発しましょう!」
イグナールは出かかった言葉を飲み込んだ。
モニカは意気揚々と先頭を歩いていく。無表情かつ、無言のマキナがそれに続き、イグナールが続いた。
◇◇◇
「あぁ! もしかしてあれじゃない⁉」
しばらく歩いて行くと先頭のモニカが声を上げる。彼女の指差す先を見ると抉れた地面の途中に穴らしき空間と近くにガラクタが散乱している。
「マキナ。もしかしてあれは……」
「はい。研究所への入り口でございますね」
モニカの放った巨大なアクアボールは確かに進みやすい道を作ったが、研究所への入り口も破壊していた。
「イグナール! マキナ! 早く!」
しかし、その本人はたいして気にしていないようである。
イグナール一行は地下研究所の入り口をのぞき込む。入り口の先端は破壊されているが、金属製の梯子が掛かっていて問題なく降りられそうだ。底は明るく光っている。
「……イグナールお先にどうぞ」
あれだけ元気だったモニカはおとなしくなり、イグナールに道を譲る。
「なんだモニカ。もしかして怖いのか?」
「べ、別に怖くないけど! 何があるかわからないのに女の子を先に行かせるつもり?」
「俺は全然構わないが……見えるぞ?」
「な、なにがよ」
「パンツ」
「……最低!」
モニカが顏を朱に染めて丈の短いスカートを抑える。
見られたくないのに何故そこまで無防備なスカートを着用しているのか……いまいち理解出来ないイグナールだった。
「それでは私、モーニカ様、マスターで降りれば良いのではないでしょうか」
マキナの提案にそれよ! と賛成の意を示すモニカ。
「それでは私が先に様子を見て参りますのでしばらくお待ちください。長い間最低限のエネルギーで稼働しておりましたので換気機能の確認を致します」
そう言って穴の中へ吸い込まれるように降りるマキナ。しばらくしてから穴から風が吹き出しマキナの合図の声が聞こえた。
その声にモニカが恐る恐る梯子につかまり降りて行く。ある程度の距離を保ってイグナールも続いた。
下に降りたイグナールとモニカは研究所内を見渡し驚いた。
一面丁寧に磨かれた金属面のように光沢があり輝く壁。
太陽が届かない地下だと言うのに隅から隅まで照らし出された研究所。
全ての内装が彼らの想像とは大きく違っていた。
金属製の壁を触りながら感嘆を漏らすイグナ―ル。
古代技術で作られた研究所……そう聞いてイグナールは朽ち果てた遺跡のイメージを持っていた。
「地下だと言うからもっと薄暗くてジメジメしたのを想像してた……」
「ここは発見を免れ、低電力とはいえ稼働を続けておりましたので状態が良いのだと推測します。それではこちらへ」
丁寧にイグナールの言葉に答えを返し、案内するマキナ。
銀色に満たされた室内に黒いメイド服はやっぱり不釣り合いだ。そう思いながら素直にマキナの背中を追っていく。
モニカの様子を見るためイグナールが振り返ると、興味津々と言った様子で辺りをつぶさに観察する彼女が見えた。
イグナールが見てもただただ同じ壁が続くだけの廊下。降り立った際には驚いたが、この様子が続くとすぐに興味をなくしてしまった。
代わり映えせず、目印らしきモノも存在しない廊下を黙々と歩くマキナの後を追うことしばらく……マキナが立ち止まった。
「こちらでございます」
彼女が示す先は壁から一段程の窪みがある。
部屋への入り口、つまりは扉なのだろう。
上を見上げると研究室と刻印されている。
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