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act.13 経口摂取と結合


「この封書は?」


 イグナールが受付の女性に尋ねる。


「こちらは先日お話しした、知合いの研究者への紹介状と地図が封入されております」


 それでイグナールとモニカはギルド登録の際に話していた、古代魔法の研究者について思い出した。


「こんなに早く用意して頂いて、ありがとう」


 受付女性は二人に温和な笑顔を向けトレーを差し出す。ライセンスと報酬、雷魔法の手掛りになりうる封書を手にし、イグナールとモニカは受付を後にした。


「さて、報酬も貰ったことだし、ご飯でも食べながら今後の方針を考えましょう」


 魔王討伐を目指す多種多様な人々で溢れかえる討伐ギルド。男も女も、人間も亜人も混在する空間であっても、メイド服のマキナは目立つ。


 三人は奇異の目にさらされながらギルドを後にした。


◇◇◇


「なんだかすごい見られてた気がするな」

「まぁ、討伐ギルドにメイドを連れたパーティなんて目立つでしょ」


 手ごろな値段で今の財政に優しい大衆食堂で四人用の席に陣取った三人。

 モニカとマキナが並んで座り、モニカの対面にイグナールが座っている。


 イグナールとモニカは手早く注文を済ませる。注文を取りに来た女性店員がマキナを一瞥したが、モニカが以上で、と言うと店員は素直に下がった。


「マキナはやっぱり普通の飯は食えないのか?」

「はい、私は雷属性の魔力で駆動しておりますのでこういった形でエネルギー補給をすることは出来ません」


 予想はしていたがやっぱりか……そうなると、彼女のエネルギー補給のたびにアレをしないといけないのか。

 ゴブレットに注がれた水を飲みながらイグナールはそう考えた。


 よく冷えた水が火照った身体をゆっくりと冷やしてくれる。


 しばらくして食事が届き、イグナールとモニカは微動だにしないマキナを横目に食事始めた。

 やや周りの目が痛いように思えるが、恐らく気のせいだろう。


「マキナのその……魔力の補充ってああいうやり方しかないのか?」


 皿の上が寂しくなってきた頃、イグナールが言う。

 その言葉に一瞬食事の手を止めるモニカ。しかし、何事もなかったように黙々と食事を再開した。


「いえ、経口での強制吸引はあくまで緊急だったための対処でございます。私に魔力放出を行って頂ければ問題ございません」


 イグナールは内心ホッとした。胸でつっかえていた物が落ちて行くような思いだった。

 対面で黙々と食べ物を口に運んでいたモニカの表情も和らいだように思う。


「しかし、イグナール様がご所望であるならば経口とは別に、結合での摂取も可能となっております」


 その瞬間、水を飲んでいたモニカが盛大に噴き出した。


「モニカ……」


 彼女の口から散布された水はイグナールと彼の昼食を濡らした。


「どうしてそんなことが出来るようになってるのよ!」


 結合……イグナールにはいまいち想像がついていないが、モニカにはそれが何であるかが分かっているような言動だ。


「なぁモニカ結合ってなんだ? 俺にはさっぱりわか――」

「イグナールは知らなくていいの!」


 モニカは彼の言葉を食い気味に制し、ハンカチをイグナールの顔面に叩きつけた。その騒動に店の視線が集中するが、それすらも意に介さず話を続ける様子のマキナ。


「最も効率のいい方法であり、命懸けの戦いにおいて、精神的負荷を和らげ、安定を図るための機能でございます。命の危機に瀕したあまねく生物は子孫繁栄のため、本能に突き動かされるものだと記憶しております」


 表情を変えず淡々と説明するマキナの言葉、「子孫繁栄」にさすがのイグナールも思い当たる知識がある。


 顏を紅潮させ、黙々とハンカチでモニカに吹きかけられた水を拭く。


「そして最も重要なのは、貴重な無属性因子の検体採取であると記憶しております」

「そ、それってマキナはそれでいいわけ⁉」

「それが私の製造された目的の一つでありますので、不満といった感情は持ち合わせておりません」


 彼女は古代技術と魔法で生み出された人形である。あまりにも人と変わらない外見に騙されそうになるが……


 そう考え至る自分に、僅かな違和感を覚えるイグナール。しかしその違和感の正体は判然としない。


「あんまり納得が出来る話じゃないわね」


 モニカはマキナの考え、製作者によって与えられた意思について文句があるようではあるが、ここでどうなるものでもないので、歯噛みしながら押し黙った。


「ま、まぁ他に方法があるようで俺は安心したよ」


 彼女のエネルギー補給とやらが毎回あんな調子では俺が持たない……それに突然の出会いと成り行きでマキナの目的もはっきりとしない。


 彼女は自分が魔王討伐のための存在と言っていた。それを成すためならば俺が必要となってくる……俺を利用し――


 いや、今はそんなことを考えるのはやめておこう。


 お互い魔王討伐の目的を持っていて、マキナには俺の魔力が、俺には彼女の情報が欲しい。マキナの存在がどうあれ、俺がいないと生きていけないと言うならば、手を差し出すべきだろう。


 イグナールは一通り自分の中で、考えをまとめた。


 そして今後の方針について話し始める。



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