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act.12 次なる目的


「それは……なんなんだ?」

「私の活動に必要なコアでございます」

「コア?」


 聞いたことのない単語に困惑するイグナール。


「私が見る限り巨大な魔石なんだと思う。大きすぎるし、今の加工技術では考えられないから憶測ではあるけど。たぶんこれが彼女、マキナの心臓代わりをしているんだと思う。これだけでもマキナが人じゃないことはわかるでしょう?」


 マキナがさっき言ったように、古代技術で作られた人形だとしよう。だが、バージス一帯に古代の遺跡はなかったはずである。


 彼女の言う研究所はどこにあるのか、何故彼女は今頃目覚めたのか、何故俺を主人として呼ぶのか……


 少しずつ夢のような出来事を現実として受け止め始めたイグナールの中で、無数とも思える疑問が湧きあがってくる。


「聞きたいことは山ほどある……それよりも先に、聞いておきたいことがある。なぜあんなことをした?」

「エネルギー補給のためでございます。本来はもうしばらく観察し判断を下すはずでした。しかし何分エネルギーの枯渇が迫っていましたので、緊急判断としてマスター、イグナール様の雷属性の魔力を経口摂取させて頂きました」


 冷静にボタンを留め直し、エプロンを身に着けるマキナ。無表情を一切崩さずただそう答えた。


「マキナはイグナールの魔力、と言うよりも雷の力をコアと言うのに溜めて活動しているらしいの」


 モニカが補足してくれる。


「俺じゃなきゃダメなのか?」


 一拍置いて冷静にマキナは答える。


「はい。魔王軍への強襲を目的として作られた(わたくし)は戦闘能力に秀でる雷の魔法使い様と共に戦うこと目的とし製造、チューニングされております。故に、イグナール様の魔力でしか活動することが出来ません」


「……わけがわからん言葉もあるが、概ね理解できた。つまりマキナは魔王軍と戦うために造られた古代技術の結晶であり、雷の魔力を元に活動している。その魔力の枯渇に際し、たまたまそこにいた俺――雷属性の魔法使いで魔力補給をし、主人として認定した。と言うことだな」


 先にマキナが言った「貴方様の槍であり、盾でもあるのです」はこう言う意味だったのかとイグナールは納得した。


「それじゃ、マキナがいた時代には雷属性の魔法使いは珍しくなかったのか?」


 いくつもある疑問かららイグナールはその質問を取り上げた。


 今の時代では無属性を除くと炎、水、風、土の属性以外の魔法使いはいない。

 だが、彼女の話ぶりでは雷の魔法使いが存在していたとはっきり言っている。


 これは今後のイグナールの進退に大きく関わって来る情報だろう。


「申し訳ございません、そう言った情報は私のメモリーに存在致しません」

「……知らないってことか」


 落胆を露わにするイグナール。


「しかし、研究所でアーカイブを参照すれば何か手がかりを得られるかもしれません」

「本当か! そこに行けば何かわかるかもしれないってことか?」

「確約は出来ません。可能性の話でございます」

「ならモニカ……」


 イグナールは母親にねだる子供のようにモニカへと視線を投げる。


「いいわよ、この後に何か予定があるわけじゃないし行きましょうか。それにマキナの話を聞いたらきっと行きたいって言うと思ってたわ。私も興味がないわけじゃないしね」


 あっさりと賛同してくれたモニカ。事前に話を聞いていた彼女には、この展開は予測済みだったようだ。


「でも、その前に! 明日ギルドへ寄って報酬を貰わないとね。それからちゃんとしたご飯を食べて、お風呂にはいってからね! イグナールが気絶なんかしちゃうからこんなところで野宿するはめになっちゃったんだから!」


 うーん。マキナのこと以外にも何か忘れているような? そう考え無意識に頬をさするイグナールであった。


◇◇◇


 翌日バージスに戻ったイグナール達は、討伐ギルドへ報酬の受け取りに向かった。


「あら、イグナール様とモーニカ様……と新しいお仲間でしょうか?」


 先日ギルド登録と依頼の対応をしてくれた受付の女性だ。イグナールとモニカの後ろに付いているマキナを見ている。


「まぁいろいろとあって……」


 モニカが前に出て対応する。マキナに関しては濁しておくしかない。どうせ説明しても理解は得られないだろう。


 それからスライム討伐の先で、ヒューマン・スライムに遭遇したこと、その発生原因と、異常繁殖の原因はそれではないかと説明した。


「まさかそのような事になっていようとは……それは完全にこちら側のミスでございます。しかし、ご無事で何より。お詫びといってはなんですが、ヒューマン・スライムは本来ならAランク相当の魔物……依頼報酬をギルドの方で上乗せさせてください」

「それはありがたい」


 金欠気味のイグナール達にとって思っていもいない追加報酬であった。


「それでは、ライセンスをお預かりします」


 イグナールとモニカはギルドで登録したライセンスを取り出し、受付の彼女の持つトレーに預ける。


「それでは確認してまいりますので、少々お待ちください」


 モニカが言っていたようにライセンスは一種の記憶結晶であり、討伐した魔物の魔力微量ながら集める性質を持たせている。それを特殊なマジックアイテムで解析し、依頼内容と照らし合わせ、達成の真偽を確かめるのである。


「大変お待たせいたしました。確認が出来ましたのでこちらを」


 しばらくしてカミラがトレーを持って戻ってくる。そこには、預けたライセンスと報酬の金が入っているであろう袋。そして、封書が一枚確認できる。


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