たびだちのまき その2
やばい投稿時間を間違えました。深夜投稿とかニーズがあるのだろうか。
ある日のことです。モノタローは学校帰りに茶店で一人の女性と会っていました。麦わら帽子を目深にかぶり、よく顔がわかりませんが、見えている唇は、妖艶とも言える輝きを放っています。
「今日は、これがおすすめなんだけど」
言って女が傍からは見えないように置いたのは、団子でした。
「これは?」
「きび団子よ」
どういうものかわからず尋ねたモノタローに、女性がすぐに答えを返します。
しかしモノタローはそういう事がききたかったのではありません。きび団子だろうが、赤福だろうがどうでもいいことです。
モノタローが知りたいのは、ただの団子にしか見えないこの物体が、どうして薬のバイヤーである女性から出てきたのか、ということです。
女性は嫣然と微笑み、続けます。
「美味しいわよ」
ピクリ、とモノタローのこめかみが動きます。世界征服を考え始めたせいで、冗談に付き合う気分ではありませんでした。
「てめえ……犯すぞ」
「なあに? 欲求?」
凄むモノタローにも、女性はクスクス、と笑うだけです。
モノタローも嗤い返しました。
次の瞬間、ぱさり、と麦わら帽子が地面に落ち、女性が艶っぽい声を上げます。
でもちょっと十八禁な描写は省略することにしますね。
さて、妙にスッキリした顔のモノタローに、薬売りの女性がとろん、とした瞳を向けています。これぞラブです。ラブっちゃってます。
しかしモノタローはクールです。この態度が女をドツボにはめていくわけです。でもクール系男子ってかなりめんどくさそうですよね。
「そういえば、最近物騒な島があるらしいな」
唐突にモノタローはそう切り出しました。女も表情を改めて、頷きます。
「鬼ヶ島でしょ? その通りよ」
鬼ヶ島。もう聞くだけで物騒な島です。誰が何を考えてこんな縁起でもない名前をつけたのでしょうか。
「支配者は?」
「わからないわ。あそこは、混沌の島だから」
薬売りが首を横に振った事が意外だったのか、モノタローは顔ごと薬売りの方へと向き直りました。
「どういうことだ?」
「つまりね……」
魔王による悪の統治がなくなって十数年。支配者を失った闇の世界で生きる者たちは、自らこそが次代の魔王となるべく、時に争い、時に結託して、それぞれの勢力を拡大しようと動き始めました。
しかし、争い事には何よりもお金が必要です。いつの時代、いつの場所でも、お金が存在する限り、それは普遍の真理です。
そのため、闇の世界の有力者たちは一つの街を作りました。
そこには、あらゆる商品がーーもちろん人間も例外ではなく――売買され、あらゆる酒が水のように飲まれます。
色とりどりの煙を吐き出す麻薬は、すべてここを通って、そして世界へと広がります。
そして、考えられる限りのギャンブルが、提供されています。
絶海の孤島に作られた、王国という光の届かない闇の世界の中でも、一際色濃い真の闇。
そこでは、人の身をしながら人の心を捨てなければ生きられません。
それ故に、誰にともなく、こう呼ばれます。
そこは人ならぬ、鬼の世界。
鬼の棲む島。
すなわち、『鬼ヶ島』と。
「なんだ、誰が名付けたわけでもないじゃねーか」
薬売りの話を聞き終えて、モノタローはまずそう呟きました。はい、すいませんでした。
そしてそのまま、眼を閉じて考えにふけります。
それを薬売りは飽きもせずに見つめています。キマッちゃってるわけではありません。薬売りが薬に溺れるとか、あってはならないですから。もちろん一般の人は関わることもあってはいけません。
ちなみに場所はまだ茶店です。周囲の通行人は空気を読んで、店には近づきません。
新手の営業妨害ですね。
そうして、店の主人が悟りの境地に達しそうな頃、モノタローは眼を開きました。
「決めたぜ」
何をでしょう。
「その鬼ヶ島、俺がいただく」
大胆不敵な発言が飛び出しました。
読んでくれてありがとうございます。
このおはなしの半分は承認欲求でできています。
いいねとか超ほしいです。
なお残りの半分はネタ心でできています。