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石井さん家の妹さん  作者: 小倉十和
9/38

過去編~兄と妹~

次回は10/7(木)アップ予定!


一言で言えば、妹が苦手だった。


偏見もなく、善人の性格、どこか真っ直ぐで

弱者を絶対守る存在。バスケと勉強を両立していて

非のない存在と言っても過言ではなかった。


それだけならいい。


全てを見透かしそうな瞳。人生全てが成功者な妹とは

喋ることなんかなくてこんな完璧が近くにいることに

怖くなった。怖かったから余り喋らなかった。

比較的、姉と喋ることが多かった。


妹と対比な俺は、保育園から中学までずっと地元の同級生に虐められていた。

早く抜け出したい一心で地元から離れた高校に入学し、友達もでき

今まで生きてきた中で1番人生を謳歌していた。


久々に実家に帰ると、いつも通りの明るい妹がいて笑いながらお母さんと

喋っていることを想像していた。


だが、きっかけなんて、突然。


キッチンの小さい窪みに妹は縮こまって震えていた。

衝撃的だった。


髪の毛は伸ばしっぱで長すぎる前髪で表情は見えないが

間から見える瞳は死んでいて、ご飯は食べてないのか大分痩せていた。


母からは


「部屋からお父さんが無理やり出したんだけど、ずっとそこにいたがるの。」


と言ってお母さんも少し疲れていた。

そして学校にも行けなくなり外にも行けなくなった。


朝昼夜寝ることもせず、家族が喋りかけても喋らない日々。


だんだん食事にも手を伸ばさなくなりどんどん衰弱していった。




家族総出でなんとかしようと、いろいろ試すも結果変わらす無言のまま。


これはもう、病院に無理にでも連れて行くしかないのか。と家族が話してる中

俺は苦手な筈だった妹の傍に動いた。



「………………杏奈。」



「………………。」



「………………辛いか?苦しいか?」



「…………。」



「……。」



「……死にたいの。疲れたの。兄さん。」



「…………死ぬな。」



「……やり直したい。やり直したいよ。絶対次は助けない。」



「もし、やり直しを求めるならそれは過去ではなく今だろう。

 やり残したことがあるならば、それは過去に戻ってやり直すのではなく

 この瞬間から成し得なかった願いを、築いていかなければいけない。


 だから、生きろ。杏奈。


 学校もいかなくてもいい。今は通信もある。


 ただ、やったやつらのせいで死ぬな。


 生き抜け。」




「………………う”ん。」



と俺の服を掴んだ。

その日、一緒にリビングに行くも栄養不足も相まってブッ倒れ

深夜点滴を打ちに病院に行く羽目になったが

1週間後は少しずつご飯を食べたり、返事はするようになった。


その後、妹は学校にはいったもののいじめは収まらなかった。


でも、妹はいじめに必死に立ち向かった。


トラウマも傷を抱えながら。


卒業式に「……あぁ。やっと解放された……。」


と言っていた。


その瞳に光はないものの、真っ直ぐ前を向いていた。









PS:)「お兄ちゃああああん!」


  「これ!これ!これ見て!」


  「今度はこのコスしようと思うの!」


   ちらりと人の胸を見た。


  「…………ないだろ。」


  「あ”?今どこみた?言ってみ?ぶん殴るから」


  「すみません。」



  今日も妹は変わらずオタクしています。



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