泡沫の夢
今回の幕間は物語と全く絡まないので読み飛ばし可です。
(バルケイン、バルケインよ、目覚めるのだ)
何処からか聞こえてくる、もしくは頭の中に直接響くような、そんな感じ。
しかし、バルケインことバルは今眠い。壮絶に眠い。
「誰だこらぁ、今起こしたらはっ倒すぞ」
(私は神だ)
「あ、いいわ、そういうの興味無いんだわ、勇者になれとかだったらうちのアホとかにでも言っておけ、あと、俺が剣つくる前に勝手に連れてくなよ」
そう言って布団を深く被ろうとするが、布団がない。
薄目でちらと周りを見渡すと、白い光に包まれるばかりで何一つ状況が掴めない。
「あ、うーん、この物語、あ、いや、ごめんね、僕そういう感じのと言うか、この宇宙の神じゃなくてね?」
いきなりと頭上から声がし始める。
先程と同じ声のように感じる。
「なんか、いきなり頭に話しかけんのやめたな、つぅかここ何処だ?」
頭上に視線を向けるが、声の主のような物は確認出来ず、白い世界に少しだけ暗くなったシルエットがあるだけ。
暗い、グレー程度のシルエットは尚も話し続ける。
最初は神らしく話そうとしたらしい尊大な態度は直ぐに崩れ、気さくに、と言うより嫌に馴れ馴れしく接してくる。
「ここは、夢っていうか、その、夢から繋がる別の宇宙との境目的な?そんな雰囲気な感じなやつでね、まぁ概ね夢でいいとおもう」
「じゃあ寝る」
ゴロンと横になる、付き合いきれんと率直に思った。
「ままま、まってまって、ちょっとでいいから聞いて聞いて」
「俺ぁ寝る、話したければ勝手に話せ」
「んーーーー、まぁいいか
僕さ、シェアワードというかシェアワールドって結構好きでさぁ
ラヴクラフトとかのホラーとか、それこそダンジョン&ドラゴンズ的なファンタジーとかね
それってさ、ここ最近の色んな作品が描かれては世に出て来るこのご時世でやったらもっと楽しく出来ると思ったんだよ
異世界とかさ、色んな銀河とか、そういう感じの、異なる宇宙を内包する世界にしちゃえばさ、みんな共有しちゃえると思うの、まぁもう既に色々あるんだろうけど」
バルは思う。
(全くついていけねぇし、何一つ分からねぇ、つうかうるせぇ)
やかましいので頭を遠ざけ、足を向ける。
神だと言うからには大概に不敬なんだろうが、こんな適当に子供が考えたみたいな神のことなぞ知ったことか。
「まぁ、何が言いたいかって言うと、君の剣を色んな宇宙の神様にばら撒きたいのさ
君の剣よく切れるし、ちょっと見かけた僕じゃない神様が、転生した主人公とかに渡してくれたり、偶然世界のどこかに転がしてくれたりするかもしれないじゃない?
そういうの、僕神様だからなんでも許可しちゃおうかなって思うの、あ、別に申告とかはなくていいよ?」
バルはいい加減煩くなって、声の方向に蹴りを入れる。
なんか骨と肉っぽい感覚がする気がする。
案外と見えないだけで、馴染みのある生物なのかもしれない、人間とか。
(だが、煩い、ひたすらにうるさい)
「もう、君は僕が許可しないと夢から出られないんだぞー」
「あぁ?」
もう一度蹴りを入れる、今度は何度もゴスゴス連続で
「ごめんなさい、本当です、でもやめて、わかった、わかったから!」
神と名乗る某は苦し紛れに指をパチンと鳴らすと、目の前に自分の工房がでんと落ちてきた。
落ちた拍子に壊れないか心配するくらい瓜二つの自分の工房だ。
「それから、ハイ!」
と指を鳴らすと、天からゴロゴロと珍しい鉱石やら見たことない鉱石やら魔鉱やら燃料、宝石がわんさかと落ちて、世界一豪華な堆積地が出来上がる。
バルは空いた口が塞がらなくなる。
「これを好きなだけ使って、なんでも作っていいぜって言われたら、どうする?」
聞かれるまでもなく、うずうずとし始める体。
いいのか、いいのかよ、やべぇな、という顔が隠せていない。
「まぁ、この夢の世界からは持って帰れないし、ここで起きたこと全部、起きたら忘れちゃうんだけどね」
「そうかい、ちょい残念だがまあいい、ま、帰るまでの暇つぶしにゃあならぁな」
「そういえば、君は剣に銘は刻むの?」
「摩擦あがるからなぁ、あんまりやんねぇ、こと見える場所には絶対に刻まねぇ、やるとしたら柄だな」
「どんな感じ?」
「そんなこと聞いてどうすんだ?
まぁ、ちょいちょい変えてるが、VALKEINの頭3文字を重ねて書く感じにしてるな、大体
名前全部はだせぇし、めんどくせぇ、かといって頭文字だと結構被るんだよな」
「なるほどねぇ、ですって!」
「誰に話してんだこの野郎」
「まぁまぁ、じゃ、これからいろんな剣を造るの、楽しみにしてるよ
必要なものとか、なんでも言ってね」
「文献もか?」
「もちろん、まさか他領域の技術を概念から学ぶつもりかい?
なるほど勉強熱心だ、いいものが出来るわけだ」
「ま、それで得られる知識も、どうせ忘れちまうんだろうけどな」
「全く、よくやるよ、酔狂とかよく言われない?」
「もう慣れた」
「だろうね」
バルはバターナイフを持って、見たことの無い鉱石の鑑定を始める。
「ふっふっふ、期待してるよ」
そんな自称神の言葉はバルの耳に入らない。
既にバルは集中の沼にどっぷりと浸かり、意識は鍛冶師の深淵に旅立ち始めていた。




