酒の席のうんちく
アダマンタイトという金属がある。
固さにしてダイヤモンドに比肩し、熱に対する耐性、酸、魔法、当のダイヤモンドの防げない衝撃にすら耐えうる金属の王と言っていい代物。
しかし、その強さは、そのまま加工のしずらさを表している。
数日間かけて魔導師達が魔法で炉を熱し続け、鋳造するための鋳型にすらプロテクトを幾重にも重ねなければならない。
その研磨に掛かる期間たるや数日間とも数週間とも言われる。
それですら、削れるのはアダマンタイトを熱し続けた際に出来る黒い酸化層。いわゆる錆だ。
そうした経緯から誰もがアダマンタイトとは黒いものと認識してる。
アダマンタイトは剣に向かない、という考えが常識とされているのもそのためだ。
酸化層は摩擦が強く、とても鋭い切れ味など出せない。
そう考えられてきたのだ。
誰もが想像すらしなかった。こいつを剣にしようなんてな。
おい、これからがいいところだ、寝るんじゃあない。
問題点は純粋なアダマンタイトを抽出出来ていないところ。
他の物体もまるごと全部どろどろにしたんじゃ不純物がありすぎる。
ノロってぇか、温度差で先に溶けたものだけ流すのじゃ不十分。
そりゃぁ他の物に釣られて酸化もするし、金属ばかりでもないから黒くもなる。
大事なのは温度の加減、アダマンタイトだけは柔らかく曲げられる、という程度。
この温度を保つのが難しい。
そこら辺が職人の腕の見せ所ってとこなんだよな。
そこで出てくるのが金槌だな、これには仕方ないから最初はそれまでのくそみてぇな黒いアダマンタイト製のものを使わざるを得なかった。
いい音になるまで、叩く。
まんべんなく、密度を均一に。
火花と同時に不純物が飛び散る。
そして、同時に行うのが還元。酸素を抜く。
それに使うのが炭だ。クロム。
炭はより酸素と結合しやすい性質を持っているから、金属から酸素を奪うんだ。
そうして純粋なアダマンタイトに近付くとな、だんだん音がしなくなってくるんだ。
どんどん音が高くなり続けて、人間の耳では捉えられない音になってくる。
ここまで来たら耳に頼れねぇ。五感全てで叩く。
ギンギン、という音でない音で目が震えて涙が出たり頭に衝撃が来たりする。
その感触を感じるんだ。
金槌から返ってくる手の感触とかをな。
そうして……
おいおい、これから魔法を使ってだなぁ。
チッ
まぁいい。次までの宿題だな。